公益社団法人日本フィランソロピー協会
年頭ごあいさつ

あけましておめでとうございます。

当協会は、1991年4月に、フィランソロピーを健全な民主主義の基本であると位置づけ、フィランソロピー推進を始めました。

あれから23年を迎える今日、民主主義の本質が試されています。少数意見も尊重しつつ、未来を見据えながら多くの議論と葛藤を経るプロセスそのものが民主主義の真価であり、その結果、さらに次なる使命を覚悟する、というところに民主主義の真髄があると思っていますが、民主主義を唱えながら、安易な多数決による表層的民主主義に終始している現状と言わざるをえません。ただ、これは政治の世界だけではなく、日本全体的な傾向であるように思います。

一方、そうした中にあっても、東日本大震災の被災地はじめとして、未来への責任を自らに課し、各分野で奔走し始めている人も増えてきた実感もあります。こうした各地で生まれている個の力が周りを動かしていますが、これらをつなげていくことで新たな力を生み、それが他の力を呼び、未来への希望につながる予感がする昨今でもあります。

行政への依存からは何も生まれないことを体感しつつも、まだまだ、一人ひとりの個人が公益のために相応の負担をする、責任を果たす、ということが血肉となっていない現実もありますが、私たち一人ひとりが主体となって一歩を踏み出すことで、閉塞感から脱却し、希望の光を見出したいと思います。そのために、今年は、子どもたちの利他の思いと自己尊重の実感を引き出すことに力を入れつつ、それを支える学校関係者、企業人、シニアの人たちの力を引き出す仕掛けも工夫してまいりたいと思います。

昨秋、アメリカのフィランソロピー事情を視察してまいりましたが、人間愛を基点に社会の課題解決に資金など社会資源を提供することがフィランソロピーそのものであることを確認しました。また、社会課題は、各国とも深刻化、複雑化しており、様々な立場やセクターを超えて連携することや、各プレイヤーの力をコーディネートして、よりインパクトある解決のための触媒的フィランソロピーの重要性が謳われていましたが、日本でも不可欠であると実感しています。当協会では、こうした観点に配慮しながら、今年も、個人フィランソロピーへと導くための企業フィランソロピーの推進と、それらをつなぐためのコーディネーターの役割を担ってまいる所存です。

東日本大震災の教訓を未来につなげるために、参加と連携を促進してまいります。
本年もどうぞよろしくお願い申しあげます。