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まちかどのフィランソロピスト賞 受賞者一覧

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1998年 第1回受賞者

今井 保太郎(いまい やすたろう)氏

昭和22年に繊維問屋「三英株式会社」を創立、受賞時は名誉会長。
趣味は小唄と英会話。
今井保太郎氏(89歳)は、日本橋の老舗呉服問屋の長男として生まれたが、府立一中在学中に関東大震災に遭い、一家は財産を失い生活が一転、中学をやむなく中退し、繊維問屋に丁稚奉公に入り、厳しい仕事の中で商売を覚えた。終戦後に独立、繊維問屋時代に得た信用で商売は成功。生活が安定した昭和30年から毎年、東京都に車椅子や滑り台を寄贈していた。

しかし、氏のフィランソロピストとしての生き方を決定づけたのは、後に思わぬ資金が転がり込んだためであった。昭和26年にたまたま購入していた一坪3700円の竹薮500坪が、高度成長期に高騰して一坪29万円ぞ売れた。丁稚奉公の苦しさを知る今井氏は、このような不労所得は「私すべきではない。社会に還元すべきだ」と考えたのは、ごく自然のことであった。そのときに「公益信託」の制度が、大正時代に法律化されていたにもかかわらず、その後、50年間誰一人として利用していなかったのを知り、公益信託第一号を目指し、昭和52年に記念すべき「公益信託今井記念海外協力基金」を設定した。以後、ことある毎に公益信託を作っていき、現在12の基金を設定しており、出捐金額は総額 3億8千万円に上る。

今井氏が第―号の公益信託を開発したこともあって、日本の公益信託の設定数は500件を超え、信託財産は470億円に上る。さらに、今井氏は公益信託を全ての信託銀行に振り分けて委託し、信託銀行の教育にも務めた。各銀行とも実際に公益信託を扱わないとその良さがわからないという理由である。

関東大震災という不運に遭いながらも、徒手空拳から財を成し、自らフィランソロピストとして私財を投じ、しかも、公益信託を広めるべく各信託銀行に積極的に働きかけた氏の活動は、第一回「まちかどのフィランソロピスト賞」受賞者として真にふさわしいものぞある。

設定基金一覧(設定年月、名称、目的、当初信託財産)
  • 1977年 5月 今井記念海外協力基金 国際協力・交流促進 2億
  • 1979年11月 アジア・コミュニティ・トラスト 国際協力・交流促進 1500万
  • 1984年 3月 今井記念消防遺児育英基金 奨学金支給 1000万
  • 1985年 8月 三井信託ジャパントラスト 国際協力・交流促進 100万
  • 1986年11月 門田甚一郎・郁記念看護活動助成基金 自然科学研究助成 2000万
  • 1987年 7月 今井保太郎記念エイズ研究助成基金 自然科学研究助成 6000万
  • 1988年 8月 今井記念警察遺児育成基金 奨学金支給 1000万
  • 1990年12月 今井きみ記念ストレス関連疾患研究助成基金 自然科学研究助成 2000万
  • 1991年10月 今井きみ記念骨髄移植研究基金 自然科学研究助成 1500万
  • 1992年11月 今井きみ記念神経筋難病研究基金 自然科学研究助成 1500万
  • 1993年12月 サルコイドーシス研究基金 自然科学研究助成 1000万
  • 1995年 6月 今井記念尾瀬・日光自然保護基金 自然環境の保全 1000万
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