伊達のあんぽ柿の復活と継承~新たな挑戦事業方針発表会
がんばっぺ!!あんぽ柿協議会
「伝統産業“伊達のあんぽ柿”の復活と継承~新たな挑戦」事業方針発表
「復興応援 キリン絆プロジェクト」農業支援 贈呈式
日時:平成27年(2015年)12月1日(火)13:30~
会場:JA伊達みらい みらいホール「ラブール」
 
 福島県北部で北東から南西にかけてひょうたん形に広がった福島盆地は、古くから桃や梨、ブドウやリンゴといった果実の栽培が盛んなこの地は「果樹王国」という美称で呼ばれている。
 春から秋にかけて、盆地の緑木の畑には華やぐような果樹の花とたわわな果実の香りが漂い、やがて巡る季節の最後には、盆地東部の伊達市梁川五十沢地区の蒼空に柿の実が鮮やかな朱赤の影を浮かべる。
 柿は11月中旬ごろから収穫され、一つずつ皮を剥き、ヘタにヒモを通し、風通しのいい小屋にズラリと吊される。この伊達地方伝統の特産品である「あんぽ柿」づくりだ。
 伊達の「あんぽ柿」づくりは18世紀半ばから始められたといい、大正年間の「硫黄燻蒸製法」の確立以降、すでに94年の歴史を誇る。
 900軒を超える生産農家が手間をかけてじっくりと仕上げた「あんぽ柿」は、とろりとした柔らかな果肉の中に濃密でやさしい自然の甘みが封じ込められている。
 しかし、東日本大震災発生に伴う原発事故の影響により、この伝統の「あんぽ柿」づくりは、2年間も生産の自粛を余儀なくされた。その長い歴史の中で初めてのことであった。
 それでも生産者たちは「伝統を絶やしてなるものか」と、自宅の敷地などよりも先に柿の木の洗浄に取りかかった。凍てつくような寒さの中、高圧洗浄機により約25万本もの柿の木の除染作業に当たったという。
 2013年、加工作業は2年ぶりに再開した。しかし、そのブランクの中、生産意欲の減退や、再開への熱意の温度差が生じるなど、震災以前から抱えていた高齢化という課題にあらためて直面。加えて風評によるブランド力の低下もあった。
 
 こうした中、伊達の「あんぽ柿」を完全復活させ、伝統の技と味を確実に維持・継承し、さらに新たな価値を築いていこうと、生産者らはプロジェクトチーム「がんばっぺ!! あんぽ柿協議会」を結成した。特産地本来の姿を今一度取り戻し、また「あんぽ柿」を核とした更なる地域産業の創造と発展を目指し、新たな販売や消費のスタイルを確立させて、伊達地方の大切な食文化である「あんぽ柿」の維持・向上・発展を目標とするものである。
 冬色の風と光にさらされて、フルーティーでジューシーな風味をぎゅっと蓄えた伊達の「あんぽ柿」。福島盆地の豊かな四季の恵みを締めくくるにふさわしい優しさと甘みと、生産者たちの新たな挑戦の熱意がその小さな実に凝縮されている。
1. 伝統産業『伊達のあんぽ柿』の復活と継承~新たな挑戦 事業方針発表
 
《主催者挨拶》
がんばっぺ!!あんぽ柿協議会 リーダー 宍戸 里司 様
 東日本大震災以後、あんぽ柿づくりは2年間自粛せざるを得ませんでした。2013年に、モデル地区を設定して、わずかながら再開しました。1年目には高圧洗浄機を使って25万本もの柿の木を除染しました。真冬に、それは気の遠くなるような作業で、ケガをして入院する人も出ました。
 再開した以上は安全なものを提供することを徹底しました。幼果検査、収穫前検査、最終的には非破壊検査機器での全量検査。3段階にわたり検査を行いました。
 ことしは再開から3年目です。県の目標では、ことしは震災前の75%、1,157トンの出荷を目指しています。
 猛暑だった今夏は果物の生育も出荷も1週間から10日も早い状況でした。柿も熟度の高い素晴らしい原料柿になりましたが、11月は少し暖か過ぎたため、月末になってやっとこの地方で言う、きりっと寒い「柿剥きの陽気」になり安心しました。
 あんぽ柿づくりには、生産者の高齢化や後継者不足といった課題はあります。風評被害に関しては、再開初年度は本当に不安でしたが、関係機関の皆様のお力添えもあり、震災前の価格で販売することができました。
 五十沢の「あんぽ柿」は94年の歴史があります。この伝統産業を復興させ、以前同様においしい「あんぽ柿」を食べていただけるよう、がんばってまいります。
《来賓代表挨拶》
福島県 県北農林事務所 伊達農業普及所 所長 吉田 清 様
 伊達地方の冬の特産品「あんぽ柿」の加工再開3年目の平成27年度(2015年度)は、伊達全地域への加工再開モデル地域の拡大、非破壊検査機での検査態勢の更なる充実などにより、震災前の生産量の75%を目標としています。
 今年度(2015年度)は気候の影響もあり、生産者の皆様にはご苦労をおかけしています。今回、地域ブランドである「あんぽ柿」を継承し、魅力ある地域産業の確立を目指す協議会様の新たな挑戦が「復興応援 キリン絆プロジェクト」農業支援事業に採択されたということ、まことにおめでとうございます。「あんぽ柿」の復興へ更なる弾みがつく大きな一歩になるものと期待しています。
 県としましても、検査態勢の充実と消費拡大、担い手育成などを積極的に支援してまいる所存です。
《事業方針説明》
がんばっぺ!!あんぽ柿協議会 サブリーダー 野村 広美 様
 「あんぽ柿」は原発事故により加工自粛となっておりましたが、行政、関連機関のご協力により加工再開モデル地域が拡大されました。今後、地域ブランド「あんぽ柿」として、震災以前のように復活し、産地の維持と拡大を図ってまいります。
がんばっぺ!!あんぽ柿協議会 事務局 鈴木 優志 様
 「あんぽ柿」は福島県が発祥の地です。江戸時代から製造・販売されており、94年前には五十沢地区で硫黄燻蒸技術が開発・確立され、今なお伝統の技術として受け継がれています。
 原料の柿は「蜂屋柿(はちやがき)」「平核無柿(ひらたねなしがき)」などの渋柿を使います。硫黄燻蒸や天日干しなどじっくり時間をかけて甘くておいし「あんぽ柿」になります。
 柿はビタミンC、カロテン、カリウム、食物繊維などを多く含みます。タンニンは血圧を下げ、アルコールの分解を助け二日酔いの予防になるとされ、「柿が赤くなると医者が青くなる」とも言われています。原料柿を干すことにより、これら栄養価や旨味はより濃密となり、健康や美容にも良い「あんぽ柿」となります。
 一方、産地としての課題も抱えています。日本の農業全体の課題として、生産者の高齢化と後継者不足があります。地域社会の維持と発展のためにUターンやIターンなどさまざまな形態での新規就農者の確保と育成と強化が急務と考えます。また、福島第一原発の事故による加工自粛と風評被害は、これらの課題を加速させる結果となり、加工自粛により生産者の意欲減退や生産者間の温度差も生まれました。
 販路面でいえば、売り場や既存顧客が離れていく可能性もあり、産地としてのブランド力低下を招いているなど課題は山積です。
 これらを解決するため、課題ごとに対策を講じます。生産体制の整備、6次産業化による商品開発、情報発信によるブランド育成などを行い、当協議会が掲げる「伊達のあんぽ柿の復活と継承」を目指すものです。
 仮に原発事故がなかったとしても、このままではいずれ産地ブランドが失われてしまう可能性もあったことは否定できません。本プロジェクトは「あんぽ柿」を地域の食産業・食文化として、福島県のブランドとして次代へ残すため、生産者と協議会、各関係機関とともに進め、新たな生産・販売のスタイルも確立させて、維持・向上・発展に挑戦してまいります。
2.「復興応援 キリン絆プロジェクト」農業支援 贈呈式
 
《主催者挨拶》
キリンビールマーケティング株式会社 福島支社長 椎屋 直孝
 私どもが提供させていただいている商品には、農業や水産業の産品を使っています。特に福島県は果樹王国と呼ばれており、当社も県産の梨や桃を使った商品も全国に発信し、好評をいただき、産地の皆様のお力添えになっているのではと自負しております。
 私は20年ほど前に初めて「あんぽ柿」に出会いました。干し柿とは似て非なる食べ物で、和菓子のような口当たりとおいしさに驚きました。全国にはまだまだ知られていない美味があるのだとあらためて知らされた思いです。
 今回また、ご支援させていただきますことで、皆様の思いが全国へ伝わり、また新たな福島のブランドが旅立ちできますよう、そして農業がいっそう魅力ある産業となりますよう願っております。
《主催者挨拶》
公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 髙橋 陽子
 私は1年前、このプロジェクトの一環で、初めて「あんぽ柿」をいただきました。あれからさらにたくさんの議論を重ねてきょうを迎えられましたこと、感慨深く思います。真冬に高圧洗浄機を使って25万本もの木を除染されたと伺いました。使命感と不安が交錯する中で、伝統のあんぽ柿を復活させようと続けて来られた皆様のこれまでのご努力にあらためて敬意を表したく存じます。
 2年間のブランクを埋め、また新たなブランドとして、さらに魅力ある商品として広げていこうという志を、このプロジェクトをテコにして未来へと向かって高めていくことができますように期待しております。
 全国の皆様に、ぜひご家族で食べて、楽しんでいただき、もっと広く知られて行ってほしい商品です。そして、福島伊達のおいしい伝統をいつまでも伝えていくことができますように心から願っております。
 
《目録贈呈》
受け手:がんばっぺ!!あんぽ柿協議会 リーダー 宍戸 里司 様
 
贈り手:キリンビールマーケティング株式会社 福島支社長 椎屋 直孝
    公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 髙橋 陽子
 
 
《受贈者 代表挨拶》
がんばっぺ!!あんぽ柿協議会 リーダー 宍戸 里司 様
 「あんぽ柿」づくりが94年も続いてきたのは、やはりおいしいからだと思います。自然のおいしい甘みと栄養価の高さが見直されてきました。
 伊達地方ばかりでなく、苦労して商品やブランドを立ち上げた産地はたくさんあります。原発事故では本当に苦しみましたが、事故以前よりも、もっとおいしくたくさん作ることができる産地となって、皆様に広く楽しんでいただけるよう努めてまいります。
 「あんぽ柿」には生とは違った栄養価も現れます。日本食文化の中のこうした「干す文化」を継承し、いままで以上にがんばって参ります。今後ともよろしくお願いいたします。
《激励の挨拶》
JA伊達みらい 代表理事組合長 安彦 慶一 様
 伝統の「あんぽ柿」づくりは、原発事故の影響により加工自粛を余儀なくされました。しかし、生産者や関係機関が一体となった樹体調査や洗浄・除染作業、幼果期・収穫前検査による安全確認を経て、一部地域でようやく生産が再開。そして今年度は加工再開モデル地域が伊達地区全域に拡大されました。
 出荷前に検査を行う非破壊検査機器は昨年度より7台増設。合計33台で全量検査を行い、安全な商品を出荷して参ります。
 JA伊達みらいでは、日本でも先進的技術を備えた「あんぽ柿加工選別包装施設」を新設し、より高品質な「あんぽ柿」の安定生産や加工商品の開発を行い、産地の維持と拡大を図ります。
 生産者、協議会、関係者が一体となり、この伝統ある産業が復活と継承へと進んでいくことができますよう願うものであります。
JA全農福島 副本部長 続橋 英一 様
 私は最近、あんぽ柿にヨーグルトをかける食べ方が気に入っています。自然な甘さが何ともいえません。全国には私のように、伊達の「あんぽ柿」の再開を待ち望んでいるファンがたくさんいます。除染や検査など数多い対策やご苦労で「あんぽ柿」の加工再開を支えていただいた皆様には厚くお礼を申し上げます。
 「あんぽ柿」な長い歴史と確かな技術、生産者様の努力と経験、そしておいしい味に支えられた福島県の特産品です。そして現在行われている安全対策も、機会あるごとに全国の皆様にお伝えして、このおいしさをもっと多くの方にお届けしたいと思います。
 きょうから12月。寒くなってまいりますと「あんぽ柿」にとってはいい季節となります。生産者の皆様には辛い季節ですが、どうか健康にご留意の上、おいしさと幸せを届けてくださいますようお願いを申し上げます。がんばっぺ!!
《試食会》
 会場後方に設えられたテーブルで、「あんぽ柿」の試食会が行われた。
 通常見かけるシワシワの干し柿と違い、果実の形を残しながら、甘みや各種の栄養成分を閉じこめたままぎゅっと縮小されたような姿。色合いも美しい。
 半生状態でジューシーさが残されたねっとりとしつつも心地よい舌触り。
 「おいしい」「和菓子のよう」「お料理にも使えそうな甘さだね」「なつかしいなぁ」といった声が聞こえてきた。
《インタビュー点描》
キリンビールマーケティング株式会社 福島支社長 椎屋 直孝
 天然のやさしい甘みはお子様にぜひ食べてほしい食品と思っていましたが、あらためていただいてみて思ったのは、大人の皆さんの酒肴としてもいいのかなと感じました。「あんぽ柿」はこれ自体が完成品。このまま食べてもおいしいですし、ワインやウィスキー、福島の地酒に合わせて楽しむのもいいですね(笑)。
《インタビュー点描》
がんばっぺ!!あんぽ柿協議会 事務局兼商品開発チームリーダー 清野 公弘 様
 私は商品のパッケージや6次化商品の開発に対応する役目です。また後継者対策や情報発信なども含め、事務局としてさまざまな業務を行います。生産者さんはベテランの方ばかりですが、新規参入されたい方やこれからの担い手を育てることなどにも対応して参ります。
 「あんぽ柿」は、このままで完成度が高いものなのでこれ以上の加工も難しいものですが、さまざまリサーチを進めていく中で、食べ方や料理の提案なども含めて進めていきたいと考えています。
 また「あんぽ柿」の知名度は既に高いと感じていますが、まだまだ、新たに消費者になっていただける方も多いと思います。ドライフルーツ的に。あるいは和菓子がお好きな方。以前は輸出もしておりましたが、あらためて体制を整え直して対応し、販路の新規開拓にも努めてまいります。
《インタビュー点描》
がんばっぺ!!あんぽ柿協議会 商品開発チーム サブリーダー 佐藤 綾子 様
 私と同年代ぐらいの方だと「あんぽ柿」をあまり好まない人もいます。そんな人たちにも親しんでもらえるような商品を開発していきたいなと思っています。
 現在ですと「あんぽチョコ」という商品を開発しています。「あんぽ柿」丸ごとではなくちょっと小さくしてホワイトチョコレートをコーティングしたものです。昨年(2014年)「あんぽ柿コンクール」というものを行いまして、一般の方から新しい食べ方を提案していただいたりもしました。子どもや年配の方ばかりでなく、若い世代の人たちにも「あんぽ柿」のおいしさを知っていただきたいですね。
2015.12.01「がんばっぺ!!あんぽ柿協議会/伝統産業“伊達のあんぽ柿”の復活と継承~新たな挑戦事業方針発表会」おわり

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