郡山ブランド野菜による食文化創造プロジェクト事業方針発表会
郡山ブランド野菜協議会
「郡山ブランド野菜による食文化創造プロジェクト」事業方針発表会
「復興応援 キリン絆プロジェクト」農業支援贈呈式
日時:平成28年(2016年)2月29日(月)13:00~14:45
会場:郡山市郡山公会堂
 
 福島県下第一の人口を抱える商工業都市でもあり、県の経済首都とも呼ばれる郡山市だが、郊外へ踏み出せば、遙か山並みの裾にまで、緑が輝く畑地が広がる。
 2003年、その郡山市で、新たな特産品、地域ならではのブランドを育てようと、郡山農業青年会議所のメンバーが中心となって「あおむしくらぶ」が設立された。クラブでは数百種類の野菜の中から「おいしさ」「栄養価」「個性」「郡山の土地との相性」を吟味して、1年に1品ずつ「郡山ブランド野菜」として選定して市場に届けてきた。2015年の時点で、夏野菜・冬野菜を合わせて12品が揃っている。
 ブランドとなりうる珠玉の野菜を選び出す生産者の「目利きの力」と、栽培力の確かさ、そして丁寧さが特長で、販売開始以来、消費者の心を着実に捉えてきた。
 しかし、2011年の東日本大震災に伴う原発事故により「郡山ブランド野菜」は風評被害にさらされ、野菜作りを休止するなど厳しい環境におかれてしまった。
 それでも「あおむしくらぶ」のメンバーは「安心安全を徹底的に公開する」「これまで以上においしい野菜をつくる」「替えのきかない高い価値を生み出す」ことなどを確認し合い、同年「郡山ブランド野菜協議会」を設立。おいしさや栄養価などポジティブな情報を数値化して発信するなど前向きな活動を続けてきた。
 さらに、郡山だからこそ生み出すことができる価値を、多くの人たちに喜んで食べてもらい、地元に愛着を持ってもらおうとの思いから、料理人や飲食店をはじめ、調理師養成学校、観光や流通、消費者などと多岐にわたる連携を構築してきた。
 そして、地域の魅力、農業という産業、農作物の価値を一層高め、まちに新しい食文化を築き上げて、郡山を日本一の食の産地とすることを目指して、今回新たに「郡山ブランド野菜による食文化創造プロジェクト」を立ち上げた。
 
 2016年2月29日、郡山市郡山公会堂において、郡山ブランド野菜協議会の事業に対する「復興応援キリン絆プロジェクト」農業支援の贈呈式が行われた。協議会では、一層の情報発信、生産者と料理人のネットワーク構築、食文化創造を目指す事業に本助成を充てていく。
 郡山の大地の上で、地味と栄養をその身に蓄えて育った野菜。郡山の子どもたちはもちろん、大人たちにとっても「おいしくて元気になれる野菜」だ。そして、まちから生まれる「食」は、地域に多くの人を呼び込み、復興を目指す福島の大きな力となるだろう。
 
1. 郡山ブランド野菜による食文化創造プロジェクト事業方針発表会
 
《主催者挨拶》
郡山ブランド野菜協議会 会長 濱津 洋一 様
 近年、農業を取り巻く環境は厳しさを増しております。何もしないでいればますます衰退してしまうのではないかという危機感でいっぱいです。
 郡山ブランド野菜の栽培が始まったのは12年前。郡山の気候や土壌など自然環境に合ったおいしい野菜づくりを目指して取り組んでまいりました。私たちの野菜づくりにご理解をいただき、ご指導とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
《来賓代表ご挨拶》
郡山市長 品川 萬里(しながわ まさと)
 郡山市には菜根という地名がございます。市の歴史において野菜づくりは地域を支える産業でした。地域ブランド野菜は各地で注目を集めています。郡山でも素晴らしい担い手によってますます盛んになっていく。こんなに素晴らしいことはありません。
 また、料理を通じたまちづくりにも挑戦していただけたらと思います。例えば宇都宮は餃子、仙台は牛たん、盛岡は冷麺。郡山は何になるのでしょう。郡山は音楽の都・楽都でもあります。野菜と料理と音楽でまちに可能性を広げて、市の産業と市民生活を育てて行くことができますよう願っております。
《事業方針発表 郡山ブランド野菜協議会の取り組みについて》
郡山ブランド野菜協議会 副会長 鈴木 光一 様
 一つの野菜、例えばニンジンでも品種は400ほどあります。どれがおいしいのかを考えることも、作り方も大事。郡山の気候に合っているかを考えることも大事です。
 まず思ったのは「郡山の皆さんに自慢してもらえる野菜をつくろう」ということ。京都や金沢のような伝統野菜からブランド化をするのではなく、この地に合ったもの、おいしさや栄養価や個性も考え、2003年から毎年1品ずつ選び、12年が経過して現在12品目がラインナップされています。
 しかし、東日本大震災では途方に暮れるようなこともありました。検査体制を整え、農産物は安全だという確証を得ても、風評被害の克服が大きなテーマでした。
 皆で話し合った結論は、誰もが食べてみたいと思える野菜をつくるしかない、続けてきた活動をより磨き上げてスケールを大きくしようとうことでした。
 栽培方法の勉強会や品種の選定会、土壌診断、出荷時の品質統一、他の野菜との違いや特徴を数値化・可視化する取り組みなどを進めてきました。放射能に関しては、各研究機関に調査を依頼し、ホームページ等にアップしています。
 12品目は、地元スーパーや直売所などを通じて販売しているほか、ホテルや飲食店などで使っていただいています。さらに「あぐり市」や「開成マルシェ」での販売や試食、首都圏のシェフの方々との交流会、首都圏から一般のお客様をお招きして畑を観光資源とするツアーなども行っています。
 2014年には全国の野菜や果物を評価する「野菜ソムリエサミット」の入賞6品のうち、私たちが出品した4品が揃って入賞。「フード・アクション・ニッポン・アワード2015」では「食文化・普及啓発部門」で優秀賞を受賞し、味を認めていただけたと思っています。
 食材としてだけでなく、食文化への波及、そして次世代への継承も大切と考えています。
《プロジェクトの概要について》
郡山ブランド野菜協議会 事務局長 佐藤 隆弘 様
 プロジェクトのテーマは大きく3つです。
 1つ目は「価値の整理と価値伝達ツールの作成」です。
 「郡山ブランド野菜」だと一目で分かってもらえるパッケージデザインやアイコンで統一性を図り、また、ブランドブックやポスターの作成やウェブコンテンツの拡充といったツール作戦も展開してまいります。
 2つ目は「販路の拡大と情報伝達」。
 そのひとつが「農と食の交流会」の実施です。市内のプロの料理人にお集まりいただき、野菜を味わっていただきながらコミュニケーションを図る商談会なども開催いたします。3月2日には日本調理技術専門学校におきまして、第1回目の「生産者とシェフの商談会 冬野菜バージョン」を開催いたします。
 そして野菜作りを学ぶ東京農業大学の学生、マーケティングを学ぶ福島大学の学生さんと交流を図る「農と食のインターンプロジェクト」を実施して、若い方々の意見や感想を採り入れて行きたいと考えます。
 また昨年(2015年)は、福島の土と稲苗を使い、プランターで水稲栽培ができる「ちいさな田んぼキット」というキットを販売し、好評でした。ことしはこのキットを「郡山ブランド野菜」で販売したいと考えています。
 3つ目は「生産者料理研究会」です。
 生産者も自分たちがつくった野菜の食べ方を勉強しないといけない。消費者の方から、「どうやって食べるの?どういう調理方法がおいしいの?」と尋ねられることもあります。お客様は「おいしい野菜のおいしい食べ方」を求めています。また、生産者がプロの調理師からおいしい調理方法を学ぶ中から、育て方のヒントももらえるはずです。
2. 復興応援 キリン絆プロジェクト 農業支援 贈呈式
 
《主催者挨拶》
キリンビールマーケティング株式会社 福島支社長 椎屋 直孝
 協議会の皆様は、もう長きにわたって郡山の皆様の食卓を支えて来られました。ますます発展させたいという皆様の思いに、これから私どもも関わらせていただくことを、うれしく思っております。
 私は郡山に着任して5年になりますが、雪の中で育つ冬の野菜はとても甘みがあり、私が生まれ育った西日本の野菜とは違うなと感じました。料理が趣味ですので、郡山ブランド野菜協議会の皆様と接点を持つことができますことに感謝しておりますし、そのおいしさを伝えていくことは、私どもの仕事であると考えています。
 ビールなどアルコールは、食材と一緒に楽しむことでいっそうおいしく味わえるもの。仲間と笑顔と、郡山ブランド野菜とお酒がある食卓を、多くの方に楽しんでいただけたらと願っております。
《主催者挨拶》
公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 髙橋 陽子
 郡山のお母さんたちが、子どもたちにおいしい野菜を食べさせてあげて、ここ郡山で子育てをする幸せと誇りに胸を張れるようになってほしいと願わずにはいられません。
 食は、生きることの原点です。この地でブランド野菜を育てることは、子どもたちにふるさとの誇りを伝えていくとき、その核になる事業と感じています。郡山ブランド野菜協議会には、新規就農者もご参加されているとのこと。ブランド野菜づくりが地域の、そして日本の農業の励みとなり、大きな力となってほしいと願っております。
 
《目録贈呈》
 
受け手:郡山ブランド野菜協議会 会長 濱津 洋一 様
    郡山ブランド野菜協議会 副会長 鈴木 光一 様
 
贈り手:キリンビールマーケティング株式会社 福島支社長 椎屋 直孝
    公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 髙橋 陽子
 
 
《受贈者代表挨拶》
郡山ブランド野菜協議会 会長 濱津 洋一 様
 責任の重さを強く感じております。私たちが掲げたテーマに、真面目に、真摯に取り組んでまいります。行政や飲食店様、大学生の皆様など、私たちの思いに共感してくださるすべての皆様とともに、成果にこだわりながら、このプロジェクトに取り組んでまいりますことを約束いたします。
《激励の挨拶》
福島県 県中農林事務所 事務所長 浅野 裕幸 様
 現在の福島県の農林水産業は厳しい状況に置かれています。県の産品の安全性はもちろん、郡山ブランド野菜の素晴らしさを、いかにして知っていただくかが大きなテーマです。
 また、子どもたちの野菜離れといった別の課題もございます。野菜をたくさん食べて健康に、との情報発信も大事。協議会の皆様は、野菜のおいしさや栄養、滋味、魅力を追求しながら、地元の消費者の方々に愛される食材をつくってこられました。志を同じくする仲間たちと野菜づくりや食文化の創造に真摯に取り組む姿勢は、次代の農業の担い手となる若手の大きな励みでもあります。
 福島の新しい食文化と農業の牽引役としてのご活躍をご祈念申し上げます。
《激励の挨拶》
学校法人永和学園 日本調理技術専門学校 広報企画部長 鹿野 正道 様
 実は私は、好き嫌いの多い子ども時代を過ごしてきました。でも、調理のプロになったとき好き嫌いを減らそうと思い、少しだけ食べることを実践しました。すると、ある日突然、「おいしい」という瞬間がやって来ました。いい食材、おいしい食材だと変化が感じられるのです。
 子どもたちにも「嫌いな野菜があっても少しだけ食べてね。食べることは楽しいこと。楽しいことって好きですよね?」と言っています。郡山の子どもたちは、郡山ブランド野菜協議会の皆さんがつくったおいしい野菜に出会える。少しずつでも食べてもらううちに、野菜嫌いの子どもたちはいなくなると信じています。
 福島の食文化が向上し、福島で食事をすることで食材のおいしさがますます知られ、広く流通していけるように、私たちも一緒に歩んでまいりたいと思っています。
《激励の挨拶》
衆議院議員 根本 匠 様(ビデオメッセージ)
 協議会の皆様とは十年来のお付き合いです。皆様と議論したりしながら、私もメンバーの一員のつもりで取り組みを応援してまいりました。「創造と可能性の地としての新しい東北」という政策テーマを掲げています。アイデアを出し合い、さまざまな取り組みを進めている方々の中で、ブランド野菜協議会の皆さんの取り組みはとても優れ、日本中から注目を集めています。
 そして食文化の創造というまた新たなステージに進まれます。消費者やシェフの皆様の声を聞きながら、また新たなブランド野菜も生まれてくる。皆様のご検討とご活躍を心から応援いたします。
《インタビュー点描》
郡山市長 品川 萬里(しながわ まさと)
 ブランド野菜協議会の皆さんは、行政にヘルプを求められることもなく、歴史の教科書に出てくる「独立自営農民」のようにご自身たちの力でやってこられた。今回のキリングループ様の助成も、そんな強さと確かさをお認めになったのだと思い、とてもうれしく思います。
 このたび、郡山市は東京五輪に際してオランダのホストタウンに選ばれました。これを機に、郡山のブランド野菜をぜひオランダの皆様にも紹介したい(笑)。市でも輸出推進係を新設しました。郡山の農作物を海外にもお届けしたいと考えております。
《インタビュー点描》
福島県 県中農林事務所 事務所長 浅野 裕幸 様
 これまでも栽培や経営の場面で協議会様とはご一緒させていただいておりました。今後、なお多くの方々と連携し、消費拡大や食文化の創造に向かって行く中で、我々もますます連携を深めてまいりたいと考えております。
 野菜を消費者にお届けするまでには、流通や加工という過程もあります。6次化商品の開発などへも支援をさせていただき、大いに盛り上げてまいりたいと思います。
《インタビュー点描》
キリンビールマーケティング株式会社 福島支社長 椎屋 直孝
 例えばニンジンひとつとっても、ブランド野菜協議のメンバーが育てると、こんなに味が違うのだということにあらためて気付かされます。このことをもっと広く多くの方に知っていただきたい。家庭でもたくさん食べていただきたいですし、また調理のプロの手を経てさまざまなおいしさのバリエーションが増えていくことで、もっとなじみが広がっていく。ブランドというと高いイメージですが、身近な野菜をブランド化していくことが今回のプロジェクト。わざわざ郡山へ食べに行く・・・そんな野菜になるといいですね。
《インタビュー点描》
学校法人永和学園 日本調理技術専門学校 広報企画部長 鹿野 正道 様
 「おいしい」という感覚はあいまいなものですが、生産者の皆さんは「甘み」とか「栄養価」という部分に特化してつくっていらっしゃいます。多くのプロ、一流と呼ばれるシェフの皆様も、郡山ブランド野菜のそういった個性をとても高く評価されています。
 上には上があって、おいしい野菜も全国にはたくさんあります。でも郡山ブランド協議会の皆さんが育てる野菜には、それらを追い越す力が十分あります。目指すところは「日本一」ですね。
《インタビュー点描》
郡山ブランド野菜協議会 事務局長 佐藤 隆弘 様
 震災以降、農家の皆さんが何か新しい企画を始めようとしても、それをまとめるのはなかなかたいへんです。たくさんのアイデアやプランを紙にまとめたり発信するとき、事務局長である私がお手伝いさせていただいています。
 福島の農業は、震災で大きなダメージを受けてしまいました。だからこそPRの技術はすごく求められていると思います。広く知っていただけるように努めてまいります。
《インタビュー点描》
郡山ブランド野菜協議会 副会長 鈴木 光一 様
 今回、復興応援 キリン絆プロジェクトの助成を受けられることは、12年間、皆でブランド野菜をつくってきたことが認められたと喜んでいます。
 食材としてのブランド野菜というだけじゃなく、ツアーや飲食店さんとの共同企画など、より多くの方と繋がって、食文化の創造や次代への継承というテーマにも深く関わることができたらと思います。また、何もないところから野菜をブランド化してきた我々のやり方が、例えば「郡山方式」みたいな形で全国に波及できたらとも願っています。
《インタビュー点描》
郡山ブランド野菜協議会 会長 濱津 洋一 様
 我々生産者は、どうしてもつくることがメインになります。そこに流通、加工、調理、PRなど、我々と思いを同じくしてくださる多くの方に参加していただいてくことが私の一番の望みです。
 そして、やっぱり楽しく進めていきたい。「食べる」「おいしい」は、世界中の方と繋がることができる価値です。目と目を合わせて「おいしいね」と言い合える、そんなふうに結ばれていけたら嬉しいですね。
2016.02.29「郡山ブランド野菜協議会/郡山ブランド野菜による食文化創造プロジェクト事業方針発表会」おわり

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