郡山ブランド野菜協議会「郡山ブランド野菜による食文化創造プロジェクト」成果報告会
郡山ブランド野菜協議会
「郡山ブランド野菜による食文化創造プロジェクト」
成果報告会
日時:平成28年(2016年)12月7日(水)14:00~15:00
会場:郡山市公会堂
 
 福島県下最大の人口を有する郡山市。商工業都市のイメージが強いが、米の生産量は全国でも上位で、果樹や野菜、花卉などの栽培や鯉の養殖も盛んだ。
 2003年、郡山農業青年会議所のメンバーによって、地域ならではのブランド野菜を育て、新たな特産地の形成を目指す「あおむしくらぶ」が設立された。農業のプロフェッショナルであるメンバーたちは、その目利きの力によって、数百種類もある野菜の中から「おいしさ」「栄養価」「個性」「郡山の土地との相性」を基準とし、選りすぐりの野菜を育て、そして「郡山ブランド野菜」として選定した野菜を市場に届けてきた。
 選ばれる野菜は1年に1品。2015年の時点で、夏野菜・冬野菜を合わせて12品が揃っている。
 ところが、2011年の東日本大震災に伴う原発事故は「郡山ブランド野菜」を風評被害にさらし、県産野菜は一時、出荷停止という厳しい状況にまで追い込まれた。
 しかし「あおむしくらぶ」では、安全・安心に関わる情報を徹底的に公開しながら、これまで以上においしくて、他にはない高い価値を生み出すことなどを目標に掲げ、同年「郡山ブランド野菜協議会」を設立した。
 農業都市・郡山のプライドに懸けて、郡山だからこその価値を創りだし、なにより地元に愛着を持ってもらいたい。そうした思いを膨らませながら、同協議会は今年2月、郡山ブランド野菜の一層の知名度向上と消費の拡大によって郡山に新しい食文化を創造することを目指して「郡山ブランド野菜による食文化創造プロジェクト」を立ち上げた。
 キリン絆プロジェクトの助成を受けた同協議会では、料理人や飲食店、教育機関、観光や流通関係者、消費者など、多くの人たちを巻き込んでネットワークづくりを進め、郡山市と福島県の農業と食文化のおいしさと元気を発信し続けてきた。
 2016年12月7日、郡山市郡山公会堂において、郡山ブランド野菜協議会の「郡山ブランド野菜による食文化創造プロジェクト」事業の成果報告会が開催された。
 報告会では、プロジェクトに取り組んできた約10か月間の活動内容や、新たに制定されたロゴマークや販促ツールの発表も行われた。
 報告会で終わりではない。これからがスタートだとメンバーたちは言う。
 新しいロゴマークのもと、皆の結束はいよいよ深く強く、郡山に新たな食文化創造を目指すネットワークづくりはいよいよ本格化していく。
 
《開会の挨拶》
郡山ブランド野菜協議会 副会長 熊田 吉秀 様
 ただ今より、郡山ブランド野菜協議会「郡山ブランド野菜による食文化創造プロジェクト」成果報告会を始めます。
《主催者挨拶》
郡山ブランド野菜協議会 会長 濱津 洋一 様
 本年(2016年)2月の事業方針発表会からの事業実施の成果を、ここに報告させていただくことになりました。今回の事業は私たちにとってたいへん有意義な事業だったと考えております。
 強く感じていることは、今日の報告会が終わりではないということ。成果を踏まえ、今後私たちがどう行動し、復興支援事業を成し遂げていくかが大事です。
 学んだこと、ソフトとハードの両面で財産になったもの、関わってきた人たちや思い。これらを受け止め、活動に生かしていかなければと感じています。
 メンバーは全員が農業者です。これまで以上にブランドとして認めてもらえる野菜――私たちは作品と呼ぶこともあります――を作っていくことが大事。PRやパッケージやネーミングやロゴマークに負けない作品をつくって広めていくことが大切だと思っています。
 責任の重さを会員一同共有して、食文化、食べるということを意識しながら今後の活動を進めてまいります。地元・郡山を意識し、地元密着の販売と県外の販売をバランスよく進めていかなければなりません。
 私たちの活動が、地元の農業者、特に若手農業者や新規就農者の営農の選択肢の一つとなればと考えます。
《来賓ご挨拶》
福島県 県中農林事務所 所長 沢田 吉男 様
(代読:福島県 県中農林事務所 農業振興普及部 副部長 遠藤 保雄 様)
 所長から預かってまいりました祝辞を代読させていただきます。
 皆様には、日頃より野菜本来のおいしさや高いレベルで品質維持された郡山ブランド野菜生産の取り組みを通じ、地域農業の発展と地域経済の活性化に格別のご尽力をいただいております。
 震災と原子力災害により、一時、本県では全ての野菜の出荷が制限されました。厳しい中で除染等の放射線対策に懸命に取り組む傍ら、放射線検査と迅速な結果公表、風評対策に取り組んでまいりました。
 郡山ブランド野菜協議会の皆様は、安全性に関する徹底した情報発信など、明確な目標を掲げて活動し、地元消費者の評価を受け止めながら、12品目をブランド化されてきました。また、飲食店なども巻き込んでの食文化創造の試みや生産者の意識改革、協議会の取り組みを効果的に発信するツール開発などにも努めてこられました。
 農業の担い手育成、地域農業の発展のため、これからも積極的にチャレンジしていただけますよう、お願い申し上げます。
《成果報告》
郡山ブランド野菜協議会事務局 事務局長 佐藤 隆弘 様
 協議会のメンバーはベテランから20代の若手まで現在35名おります。2003年から活動を続けてまいりました。
 郡山の土地との相性が良く、味わいや栄養価、個性などを基準に選んだ野菜を、1年に1品ずつブランド野菜として選定してまいりました。2015年現在、12品目あります。
 これらの野菜をこれからどう地元に根ざしていくのか、価値をどう伝えていくのか。PRやプロモーション活動に思い悩んでいたとき、キリン絆プロジェクトのご支援をいただき、さまざまな方のご意見も伺いながら、新たな取り組みをスタートしました。
 メインテーマは、後世に残していきたいと自分たち自身が思える「郡山ブランド野菜」を作り続けること。地元に愛着や誇りを持ち、生産者やシェフ、観光、教育、行政など地元の異業種の方とも連携し協働できる食文化をつくり価値を高めたいということ。野菜を目当てに郡山まで来てもらえるような魅力づくり、新たな農業の担い手づくりもテーマです。
 具体的な目標は、市内・県内での認知度アップと食文化ネットワークの構築です。価値を正しく伝えるツールを完備する。キリン絆プロジェクトのご支援で、これに取り組んでまいりました。
 まず、はじめに、価値の整理と価値伝達ツールの作成。
 野菜を販売するときや価値を発信する際に、デザインの視点が欠けていたと思います。ビジュアルで郡山ブランド野菜だと分かってもらえるようパッケージの統一を図り、消費者に認識してもらえるようロゴマークを制定しました。
 多くの品種の中から選んでいることを誇りにしたい、地域・仲間と連携する、一人じゃない、手を繋ぐ、タッグを組む――。初めのモチーフをいじっていきながら、できあがったロゴは、野菜を囲んでタッグを組み、新たな伝統をつくり、次世代につないでいく家紋のようなイメージのものです。これを統一マークとして野菜に貼って販売します。
 また、私たちの活動やブランド野菜について紹介するブランドブックも作成しました。タブロイド判の仕様で、冊子として、イベント時にはポスターとして使えるほか、保水性があることから、読んだ後、野菜を包むこともできます。さらに、野菜ごとの特長、食べ方、旬の時期などを紹介する野菜紹介カードも作りました。
 
 次に、食文化創造「食材から〝食〟へ」ということで、飲食店との食文化創造ネットワークづくりを目指し、農と食の交流会というテーマで、試食相談会などを開催しました。飲食店やシェフの方に認知度を上げてもらうことが目的でした。試食相談会は冬と夏の2回行い、実際にメニューに取り入れていただいた飲食店もあります。
 また、新たな取り組みとして東京農業大学の部活動である「村の会部」と連携し、東京・青山のファーマーズ・マーケットで、野菜を販売する場として学生に参加してもらいました。7月以降毎週土曜に開催し、都内のレストランのシェフの方も常連になっていただきました。
 地元で開催している開成マルシェでは、福島大学の学生たちが来場者にアンケートを取って、ブランド野菜の認知度や地域の交流などについてレポートを作ってくれました。
 ほかにもコピーライターの糸井重里氏が主催する『ほぼ日刊イトイ新聞』とコラボし、以前企画販売していた「小さな田んぼキット」と野菜のセットを販売しました。
 
 そして最後に生産者の育成です。
 生産者として野菜の特長などはお伝えできます。でも消費者は実際の食べ方や料理方法などを知りたいとおっしゃいます。野菜を作るだけじゃなく、食材の生かし方を伝える力も生産者として必要な資質と感じています。食べ方も自ら発信できるように、料理人の方と協力し、生産者料理研究会を開催しました。
 2月の事業方針発表以降、たくさんのことをやらせていただきました。メンバーで話し合い、考え、実践してきた機会はありませんでした。キリン絆プロジェクトに参加させていただいてよかったと皆で語り合っています。
 郡山ブランド野菜は、おかげさまで人気が出てきて、売り切れることもあります。生産量を上げ、流通のスキームも見直して、体制をよりしっかりと固めていきたいと考えています。
《激励の挨拶》
キリンビールマーケティング株式会社 福島支社長 橋本 岩男
 成果報告を、とても共感できる内容と感じながら聞かせていただきました。
 ロゴマークを決めていく過程はたいへんだったと濱津会長からも伺っておりましたが、とてもしっくりしていて、伝統とカジュアルという思いがよく表現されているロゴだと感じました。
 協議会の皆様の取り組みのキーワードの一つは目利き力だと思います。選ぶ、吟味する。それをお客様に提案することで、期待以上の味だと感動でき、さらなるブランド力アップに繋がっているのだと感じました。
 また、体験型の企画、野菜のネーミングの公募などでお客様を巻き込んでいること、そして1年に1品だけという特別感、野菜ソムリエ大会での上位入賞などもブランドとしての知名度を上げていると思います。
 食材から食へという場面では、当社としてもご一緒できることがあると感じています。濱津会長とは雑談ではいつも「何か一緒にやろうよ」と話しているので、ぜひ具体化したいものと考えています。
《激励の挨拶》
公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 髙橋 陽子
 郡山の野菜を未来のブランドにしたいという皆様の思いと心意気、愛情が深くベースにあり、今日までがんばって来られたのだとあらためて敬意を表します。
 イノベーションという言葉を最近よく耳にいたしますが、作り続けてきた野菜に新しい価値を吹き込み、新たな仲間たちと、新たな販路を開いていく皆さんの活動こそ、まさにイノベーションです。
 ブランド野菜を作るだけにとどまらず、食文化を創っていくのだという思いに、どうかもっとたくさんの人を巻き込んでいってください。
 きょうの結実はまた新たなスタートです。皆さんもいろいろなところへ出掛け、新しい味と出合い、ますます多くの方を巻き込んで行ってください。
 レストランで出されるお料理の名前にも、野菜の名前が使われたらいいなと思いながらお話を伺いました。郡山ブランド野菜は郷土の、そして次の世代を担う子どもたちの誇りとして愛され、未来に繋がる野菜となって、作られ続けていくことを願っております。
 
《フォトセッション》
郡山ブランド野菜協議会
「郡山ブランド野菜による食文化創造プロジェクト」成果報告会
 
日時:平成28年(2016年)12月7日(水)14:00~15:00
会場:郡山市公会堂
 
《インタビュー点描》
郡山ブランド野菜協議会 会長 濱津 洋一 様
 野菜の生産よりも、デザインについて話し合うなど販売についてたくさん考えてきた10か月間でした。食材は、食に結びつかないと意味がありません。多くの人に知ってもらい、買っていただくため、ブランドという価値に見合ったものを作っていかなければならない。一歩ずつ、着実に歩んでいけたらと感じています。
 食べてもらえるシーンまで想像できるようになったことも大きいです。レストランなどで出していただけるようなアプローチも少しずつできています。
 生産者はうちの野菜はおいしいよという主観的な評価に偏りがちです。協議会の活動を通じて、客観的な評価やご意見を伺うことができている。いい経験をたくさんさせていただきました。
 新規就農の方からベテランの方まで、仲間がもっと増えて、一緒に活動できたら嬉しいです。メンバーも募集中です。助け合えるのも団体ならでは。後継者を育てる活動もがんばっていきたいと考えています。
《インタビュー点描》
郡山ブランド野菜協議会 副会長 熊田 吉秀 様
 事業方針発表から10か月。いろいろな人たちと出会えたということがとても大きな成果だったと思います。それを自分たちの農作物づくりの励みとして、もっと多くの人たちに知ってもらう力にしていきたいです。
 私は「ささげっ子」というインゲンをつくっています。甘みが強く、シャキシャキ感があっておいしい野菜です。私も、そして協議会としてもますます生産力を上げて、まずは地元の方においしさを広くお届けしたいと考えております。
《インタビュー点描》
郡山ブランド野菜協議会事務局 事務局長 佐藤 隆弘 様
 デザインを作って行く過程では、メンバーそれぞれに違うセンスや嗜好を調整していくことが苦労した点です。でも深く話し合えた分、いいものができたと自負しています。
 事務局の役目は、生産者とはまた少し違う視点から皆の活動を見つめ、プロデュースしていくこと。生産者は自分が作っている野菜が実はこんなにいいものだということに気付いていなかったりします。新しい切り口を見つけたり、アドバイスしたりしていくのが仕事です。
 きょうは、新しいロゴやパッケージができあがり、心機一転、皆でますますがんばっていこうという出発の日でもあります。
《インタビュー点描》
キリンビールマーケティング株式会社 福島支社長 橋本 岩男
 きょうまで計画通りに、目に見えて前に進んでいるなと感じられて、すごく嬉しいです。また、現状の課題までしっかりと認識され、分析までされている。具体的な解決策もこれから話し合われていくのだと思います。そこに、私たちキリンビールも何ができるかを考えていきたい。お酒の席は、お酒だけでは成り立っていません。食事がセットです。郡山ブランド野菜を使ったお料理と一緒にテーブルに載るような、漠としたイメージはお互いにできているので、次年度の課題として、具体的なプランを考えてまいりたいと思っています。
2016.12.07「郡山ブランド野菜協議会/郡山ブランド野菜による食文化創造プロジェクト成果報告会」おわり

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