2011年4月号特集シンポジウム

◆特集シンポジウムNo.339/2011年4月号
障がい者雇用を促進する福祉と企業の連携を考える
日本フィランソロピー協会では、平成22年度厚生労働省障害者総合福祉推進事業として、全国の就労移行支援事業所、障害者就業・生活支援センター、 企業を対象としたアンケート調査及びヒアリング調査を行い、企業と福祉の連携による障害者の企業就労拡大の可能性を検証してきました。
2011年3月10日に砂防会館(東京都千代田区永田町)で開催したシンポジウムでは、アンケート調査の設計・分析でご尽力いただいた高森裕子氏(本事業検討委員・株式会社三菱総合研究所)から調査結果をご報告いただくとともに、有識者と実務者によるパネルディスカッションを開催。障害者雇用は、企業にとっても障害者にとってもメリットがあることなのか、といった根本的な問題意識から、今後の企業と福祉の連携のあり方について示唆に富むディスカッションとなりました。
今月号では、巻頭インタビューに代えて、その内容をご紹介します。
≪パネリスト≫
小川 浩(おがわ・ひろし)氏
大妻女子大学 人間関係学部人間福祉学科教授
NPO法人ジョブコーチ・ネットワーク理事長
<プロフィール>
大学院で障害児教育を学び、神奈川県総合リハビリテーションセンターの知的障害者更生施設の生活指導員として勤務。 その後、同センターの職業前訓練科を経て、1998年より社会福祉法人横浜やまびこの里・仲町台センターにてジョブコーチの仕事を始める。 2003年より大妻女子大学人間関係学部助教授。2006年より教授。2004年にジョブコーチの普及啓発と人材養成を目的としたNPO法人ジョブコーチ・ネットワークを設立。 全国でジョブコーチの人材養成研修会のほか、厚生労働大臣指定の第1 号・第2 号職場適応援助者養成研修を実施している。
佐々木 克美(ささき・かつみ)氏
株式会社ウィニング コーポレーション 人事管理部長
<プロフィール>
1999年4月株式会社ウィニングロジスティックス入社。2000年より障害者雇用開始。 障害者スタッフの掃除、入庫、ピッキング、棚入、梱包、伝票処理などの業務指導および生活指導を担当。2001年7月、株式会社ウイニングロジスティックス退社、株式会社ウイニングコーポレーション設立・入社。2009年5月重度障がい者雇用推進リーダー研修終了(全重協)、同年9月文部科学省委託事業研究運営協議会委員、11月第2号職場適応援助者(ジョブ・コーチ)取得。2010年4月南大沢学園市民講師。
田中 正博(たなか・まさひろ)氏
NPO法人全国地域生活支援ネットワーク代表理事
独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園参事(地域支援担当)
障がい者制度改革推進会議総合福祉部会委員
<プロフィール>
1982年10月より民間福祉団体このみの設立に参画。後にレスパイトサービスと呼ばれる緊急一時保護専門施設の確立を目指して活動を行う。 1996年東久留米市さいわい福祉センター内の事業として、ショートステイ、緊急一時保護介護人制度を組み合わせた事業を展開。 1998年4月、社会福祉法人藤沢育成会入社、サービスセンターぱる所長。2004年4月、国立のぞみの園に移籍。地域移行課長。 2008年4月、品川区立心身障害者福祉会館館長。同年6月愛成会副理事長。2010年4月、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会委員。
湯田 正樹(ゆだ・まさき)氏
株式会社キユーピーあい 代表取締役社長
<プロフィール>
キユーピー株式会社営業本部家庭用加工食品二部長、家庭用営業本部ヘルスケア営業部長などを経て、2003年6月株式会社キユーピーあい(キユーピー株式会社の特例子会社)設立にあたり代表取締役社長に就任、現在に至る。2号ジョブコーチ・障害者職業生活相談員。
若尾 勝己(わかお・まさき)氏
NPO法人東松山障害者就労支援センター理事・事務局長
<プロフィール>
1990年、埼玉県内の社会福祉法人に入職。2000年、入所施設から社会へ自立する人の支援をきっかけに「ジョブコーチ」というキーワードに出会う。2004年3月、同法人を退職。4月より現法人へ転職し現在に至る。NPO法人トータルサポートネット代表理事、NPO法人ジョブコーチネットワーク理事、東松山市地域自立支援協議会幹事会委員、比企障害者程度区分審査会委員、社会福祉法人昴評議委員。
≪コーディネータ≫
秦 政(はた・まこと)氏
NPO法人障がい者就業・雇用支援センター理事長
<プロフィール>
1989年、リクルートの障害者雇用を促進するための特例子会社リクルートプラシスを設立、2001年まで同社の経営にあたる。役員退任後、日本経団連並びに高齢・障害者雇用促進機構の障害者雇用アドバイザーを務める傍ら、厚生労働省の障害者雇用関連の各種研究委員を務める。全国各地での講演活動に加え、障害者雇用促進のための著書多数。
求められるワンストップサービス型の就労支援
/本日は障害者雇用の促進に向けた連携がテーマですが、障害者雇用を全体的にみれば理解も進み成果も上がっているようにも思います。しかし、昨年7月には障害者雇用促進法の改正にともない、障害者雇用納付金制度の対象が、常用雇用労働者201人を超え300人以下の企業にまで拡大されるなど世の中が変る中で、難しいフェーズに入っているようにも感じます。企業だけでも、福祉サイドだけでも成果は出せません。そこで「連携が必要だ」と言われるのですが、言うのは簡単で、連携という言葉だけが躍っても意味はありません。きょうは、送りだす側、受ける側、それぞれが果す機能を確認したうえで、この連携ということについて考えてみたいと思います。それではまず、送り出し側・就労支援事業を展開する若尾さんにご報告いただきます。
若尾/平成12年に(埼玉県)東松山市が地域の就労センターを立ち上げようと呼びかけてスタートしたものが、私どもの団体の前身で、はじめは全くの任若尾勝己氏意団体でした。スタッフも近隣の社会福祉法人からの出向者で構成されていました。平成15年に現在の場所に移って、身体・知的・精神の3障害の就労支援ができるよう事業を受託してきました。現在、障害者就業・生活支援センター、東松山市障害者就労支援センター、多機能型事業所(就労移行支援事業・就労継続支援B型事業所※ )就労支援センターZACの3つを併設しており、通常福祉サイドで連携する機関をこの1つの法人の中ですべてやっているというのが現状です。平成21年度11名、平成22年度は本日までで14名を企業に送り出しています。
/その実績への工夫とご努力のお話をぜひ伺いたいですね。
若尾/私たちの就労移行支援事業のコンセプトは「過去の反省から、離職率0%を目指す施設づくり」です。以前は施設の中で、袋詰めや簡単な組み立て作業などを受注して、それらを並行して行っていました。職員はどうしても効率良く作業ができるよう工夫してしまいます。利用者(障害者)の、その作業における生産性に注視してしまい、本来評価すべきことが見えなくなって、結局就労に進んだときにミスマッチを起こす結果を引き起こしてしまったのです。ですから、平成21年4月に新しい法体系の中で就労支援センターZACを始めたときから、このような単純な生産性ということでなはく、その人の持つ潜在的スキルの抽出と仕事のマッチングをすべく、訓練にワークサンプル幕張版※ を導入しました。その効果もあって、以前より確実に離職者が減っています。
23年度からは、地域での就労支援のニーズに応えるため、就労移行支援事業の定員を、18名から24名に増やすことを決めています。このような離職率低下のための取組みを、埼玉県に向けても提案していきたいと思っています。
/厚生労働省の調査や今回の調査で、全国の就労移行支援事業所の約50%は、企業への就労ができていないという現実がわかってきましたが、若尾さんの事業所はすごい成果をあげられています。その一方で、就労につなげられない事業所の課題はどんなところにあるのか。就労支援の専門家で、ジョブコーチの育成に携わっておられる小川さんから、地域の就労支援の現状についてお話しいただきます。
小川/大妻女子大学で教員をしながら、ジョブコーチの人材養成と就労支援の普及啓発を目的としたNPO法人ジョブコーチネットワークの代表をしています。きょうは、就労支援をテーマにしたシンポジウムですが、まず言葉の整理をしておきたいと思います。今、地域の中で就労支援をしている機関として国が設置している、障害者就業・生活支援センター(通称「なかぽつセンター」)があります。障害者の方の就業と生活面でのサポートを一体的に行う機関で、適性を小川 浩 氏見極め、企業やハローワークの橋渡しなどのコーディネート役を担っています。就労移行支援事業所は、福祉サービスのひとつで、2年間という期限の中で就労に送りだす役割を担っています。また、市区町村などの地方自治体が、独自に就労支援センターを設置することもあります。
 このように、今は地域の中にいくつもの就労支援機関ができ、地域が就労支援を担う時代になったと言えます。なかぽつセンター、就労移行支援事業所、そして市町村の就労センターが、願わくば若尾さんのところのように、一箇所に集まってジョブコーチとともに地域の就労支援を一括して担う、まさにワンストップサービスが提供できることが望ましいと思います。そこが就労支援ネットワークの中心となり、他の就労移行支援事業所や就労継続支援B型事業所などと連携し、地域の就労を支える柱になってもらえればと思います。  しかし、実績をあげられない就労移行支援事業所があることも事実です。約半数の事業所が企業に送り出せていない現実があります。就労移行支援事業所がうまくいかない要因はいくつかありますが、企業の立場に立って考えることができないこともそのひとつです。福祉の人はまだまだ障害者を中心に考えてしまいがちです。企業が障害者雇用を考える動機には、CSR、コンプライアンス、労働コスト、職場全体の共生の問題などいろいろあります。そのどれが、その企業のモチベーションになっているかを感じ取り、話を進める必要があります。しかし、それは経験を重ねないと難しいことなのでしょう。がんばっている事業所もありますので、企業の皆様にはもう少し時間をいただければと思います。
障害者雇用には良いことがたくさんある
/地域の中に就労を支える支援機関ができてはいるものの、そのネットワークの作り方に工夫が必要であること。また、経験の浅い就労移行支援事業所の力が、いまだ発展途中にあることなど、現状がよくわかりました。
 それでは次に、受け手としての企業の取り組みを、佐々木さんにお聞かせいただきます。ウィニングコーポレーションは、失礼ながら決して大きな企業ではない。しかしなぜ、障害者雇用をしておられるのか、そのあたりもぜひお聞かせいただきたいと思います。
佐々木/当社は特例子会社ではありませんし、社員・パート社員合わせて40名、設立して12年の小さな会社です。事業は、ロジスティクスサービス業で商品の発送などを取り扱っています。障害者雇用は今年の4月で12年目になり、現在は8名雇用しています。
当社の経営理念のひとつに「人に優しく福祉を実践するを第一とし、環境に優しく地球に貢献する」とありますが、障害者雇用のきっかけは、地元の特別支援学佐々木克美 氏校の先生が、熱心に紹介してくれたことです。はじめは断ったのですが、その先生の熱意に打たれて、1名採用しました。本当に、はじめは何もできませんでした。でも経営理念があるから辞めさせるわけにもいかず(笑)。しかし、いろいろと模索しながら続けているうちにわかりました。彼らは成長するんです。軽度の子は1年で、重度の子も3年で戦力になります。
 しかしながら、中小企業で人件費は大変な問題です。正直なところ、最低賃金821円(東京都)でスタートするのは厳しい現実はあります。これは障害者だけの問題ではありません。例えば最低賃金が上がれば、そのバランスとして、他の社員の給料の底上げも必要です。ですから障害者であっても給料以上を稼げるようになりましょうという考え方で進めています。8人の中で半分の人はすでに稼げる戦力になっています。当社の仕事、物流現場は甘い職場ではありません。夏は42度まで上がるし冬は寒い。こんな環境で申し訳ないと思います。しかし、彼らは続けてくれます。どんなに大変な環境でも、仕事が楽しいと言ってくれます。ここに企業が障害者を雇用するヒントがあるように思います。
 定着支援策については、まず本人に対しては、健常者と差別をしないこと、一緒に仕事をすることです。会社としては、第一に社長の覚悟が必要です。それが社員の覚悟にもつながります。また、私のような2号ジョブコーチや、障害者職業生活相談員を置くことも、有効な手段だと思います。当社には障害者職業生活相談員が9名います。そうすることで、会社の方針にあった指導ができるのです。しかし、企業内で全てできるわけではありません。生活支援までジョブコーチに期待されても難しいので、支援センターの力も借りています。また、女性パートの雇用を大事にしています。母性といいますか、やはり母親の気持ちで彼らを見守ってくれるので、安心して仕事ができるようです。
 課題としては、加齢による能力低下への対応があげられます。どう終わりを迎えるか、どう着地させるのかです。それが見えないと企業としては不安になりますよね。私どもは職場参加型就労として、1日1時間でもいいから仕事してもらおう、会社と切れてしまうのではなく、短時間でもつながってもらおう、それも難しくなったら福祉にというかたちを模索しています。
 障害者雇用をまだしていない企業の皆様にお伝えしたい。障害者雇用をすると、職場がなごみ、健常者のモチベーションも上がりますよ、良いことがたくさんありますよ、と。「社会貢献型企業を目指す企業は、障害者とともに成長できる」これが私どもの社長の言葉です。
/きょうは、障害者の企業就労促進に向けた連携が大きなテーマですが、その前に前提として、企業は障害者を雇用することに経営的に耐えられるのか、メリットがあるのか、また、一方で障害者が生き生きとした人生を送るために、就労は本当に必要なのかといった問いがあることも事実です。佐々木さんのお話は、それに対しての答えを示してくれているように感じました。
 湯田さんは特例子会社の事業主として、障害者雇用を進めてこられましたが、そのお立場から、福祉との連携の在り方についてお話ください。
お互いの顔がわかる関係で強まる地域のネットワーク
湯田/企業としては、あえて、どこと連携するという意識をしてお付き合いはしていないと思います。実際に私のところでも、雇用する際には、なかぽつ湯田正樹 氏センターや就労移行支援事業所の職員の方、特別支援学校の先生とお付き合いがありますが、それはハローワークの合同面接会に本人に付き添って来られる時にお会いしたり、トライアル雇用まで進んだときに具体的な仕事の進め方等で相談したりといったかたちで連携します。
 当社では現在27名の(4月からは30名)の障害のある社員が働いていますが、特徴としては、障害のある社員をサポートする「人財育成室」を社長の直轄に常設していることです。ここでは健常者4名(ジョブコーチ, 手話通訳2名兼務)のスタッフが、社員教育・復職支援担当、外部実習担当、就労・生活支援担当の3つの部署に分かれサポート業務に当たっています。その中の就労・生活支援担当が、就職後の家庭訪問や就労継続に向けたなかぽつセンターなどとの窓口などになっています。当社では、内定の際には必ず支援センターに登録してもらっているので、就職後の家庭訪問などの際には支援センターの方にも協力いただいています。
 また、その他の連携としては、直接当社の就職に結びつかない場合も含めて、委託訓練・職場実習・職場体験の場を提供しています。福祉側の窓口は、障害者就業・生活支援センター(なかぽつセンター)「TALANT」で、地域の就労移行支援事業所や他のなかぽつセンターからの実習希望者もとりまとめてくれます。当社の窓口は、さきほどの人財育成室の外部実習担当です。実習の受け入れは、社会貢献活動の一つとも言えますが、1カ月間の実習の最後には私が模擬面接をしています。その結果は、就労移行支援事業所などの職員の方とも共有しています。また、「TALANT」が主催する多摩ジョブネットワークという就労機関が集まる勉強会があります。私もそこに参加していますが、お互い顔の見えるメンバー間で相談し合うことができます。
 私としては、最初にも述べましたが、あえてどこと連携という意識はあまりしていません。その段階、段階で、関わりを持っていただいています。
/送りだし側、受ける側のお話を聴いてきました。田中さんはこのような就労も含め今後の障害者施策を検討する「障がい者制度改革推進会議」の委員もされています。制度設計をしている側からのお話をお聞かせください。
田中/きょうは就労がテーマですが、現在の仕組みの元になっている障害者自立支援法は廃止され、障害者総合福祉法(仮称)が制定されるということで、その具体的な内容を検討しているのが「障がい者制度改革推進会議」です。私はその部会に委員として参加しています。
田中正博 氏 昨年12月、障害者自立支援法から新しい障害者総合福祉法が成立するまでをつなぐ、つなぎ法案ができましたが、その中で相談事業を強化することがあげられています。これは一人ひとりの思いを大事にしていこうという思いが込められています。これまでのように、困っていないと枠組みに入れないというものではなくて、困っていなくても、お一人様1回は相談に誘ってみようという感じです。障害者の方も制度の中で現状利用していることの追認をするのではなく、本当はどうしたいのか、そんなことをこっそり話してもらえることが大事だと思います。現状の障害者自立支援法は、デジタル的でレゴブロックのように組み立てられています。しかし、本来は利用者自身の意思が大事なわけです。もっと働きたいのか、それとも余暇を充実させたいのか、など本人の希望を聴き出し、その方のくらし全般を俯瞰して組み立てていくことが大事です。その上で、きょうテーマになっている就労支援機関につなげていく。そのような柔軟な調整機能を果たすことが、相談支援事業に求められています。
 また、さきほど佐々木さんから高齢化の問題も指摘されましたが、働く障害者の生活面のサポートは、企業からも求められることのひとつです。そのためにも、障害者の生活をバックアップする安心センターを創り、なかぽつセンターと一緒にサポートする体制を整えることはできないかといった検討も始めています。
/複雑な障害者福祉施策ですが、何のための、誰のための施策なのか、本質的なことを押さえるヒントをもらった感じがします。
田中/私たちも含め、いろいろな立場の方が制度や仕組みを活用して個別支援計画を立案するのですが、それらは絵に描いた餅になっていることが多いのではないでしょうか。その中で、きょう登壇されている方などは、自分で餅をついて、こねて、焼いて食べられるように仕上げることができる。そんな人たちが、障害者と企業の出会いの場を創っているのだと思います。
 企業側では、湯田さんや佐々木さんのような志のある方が、強く吸い込む受け皿を作っておられる。一方で、若尾さんのような支援機関が押し出している。両者の連携ということでいえば、それぞれの取り組みを通して、接点は持たれているように感じるのですが、まだがっちりと組み合っているというところまでは、いっていないようにも感じます。福祉側は抱え込まないで押し出していく姿勢が必要ですし、企業もまだ障害者雇用におけるのびしろを持っているように思います。それをかみ合わせる場を作っていく必要があります。お互いに共生社会を創っていくという視点で取り組んで、それがかみ合えば、きょうのノウハウも活かされると思います。
小川/ここ2、3年、就労については少し足踏みをしているように感じることもありますが、私はポジティブに考えています。5年前とは全然違いますし、10年前に、きょうのような就労支援側と企業が一緒に参加するセミナーの開催なんて考えられませんでした。確実に進んでいると思います。私は、成功事例が世の中を変えるのではないかと思っています。ですから、成功事例はぜひオープンにしていただきたいのです。良い事例はたくさんあります。そのような成功事例を共有秦 政 氏し、皆さんと一緒に広げていきたいと思っています。
湯田/企業も福祉もお互い歩み寄ることが必要です。企業でも、ジョブコーチを取得することが多くなってきましたが、これは企業の努力の表れだと思います。私はジョブコーチの1期生ですが、その時福祉の皆さんにお会いして、たくさんのことを学びました。企業人もそういった場にどんどん出て行き、福祉の考え方を吸収してもらいたいですね。そして、企業の考え方を福祉の方にも教えていただきたいと思います。ネットワーク、ネットワークと言われますが、要するに、人と人とのつながりですから。
/私自身も、22年前にリクルートの特例子会社を立ち上げ、経営に携わっていました。そのころを振り返ると、きょうのような環境はありませんでした。今は、意欲的な支援機関も企業も、そして専門家もたくさん存在します。確かに厳しい経済環境にありますが、企業と福祉がお互いにがっちりと組み合えば、そして一歩前に進むことができたら、まだまだ障害者の雇用拡大ののびしろはあると感じました。
 きょうは皆さんありがとうございました。