連載コラム/富裕層「あ・い・う・え・お」の法則
第17回
ここのところ海外の企業からの日本における調査依頼が多くなってきている中で急速に感じ始めたことをご紹介したいと思います。イタリアの高級ファッションブランドやフランスの高級バッグブランドなど様々なラグジュアリーブランドが日本への設備投資をどのようにするか検討するような調査が多く、それはそれは真剣そのもの。出展地域や年齢性別の効果測定などのフィージビリティスタディのみならず、日本人がブランドに対して抱く総合的で直感的なイメージがどのようなものなのか、どのように変化しているのか、を彼らは常に注視しています。
その証拠に海外のラグジュアリーブランドの関係者と話をしていると日本ではほとんど聞かない言葉を頻繁に話すことに気がつきます。その言葉とは「ブランドパーセプション」という言葉。難しく言えば、ブランドの直感的な総合イメージとでも言えばいのでしょうが、要するに、そのブランドに最初に感じる「あ・い・う・え・お」は何?という感覚を彼らはとても大切にしているんですね。日本ではマーケティングやブランディングの専門用語と捉えられがちですが、とてもとても一般用語に近いものなのです。
即物的なモノの見方をすれば、言葉としては「高級品」とか「セレブ」とか「シャンゼリゼ」とか「モンテナポレオーネ」とか、、、、これはこれでわかりやすいブランドイメージというものはほとんどのブランドに存在するものです。ところが直感的なパーセプションになると意外とこんな言葉が出てきたりします。「母親」、「大地」、「地球」、「自信」、「宇宙」、「環境」、「友愛」、などなど。
それぞれが客観的かつ直感的な意見ですから、ここで否定肯定をするものではないのですが、むしろ後者の方のパーセプションに変化が出てきているか否か、と海外のラグジュアリーブランドは注目しているんですね。そしてここからが本題に近いのですが、フィランソロピーと呼ばれる活動にも同様のパーセプションというものが存在しているのではないかと思うんです。その言葉群を定点観測してフィランソロピーのマーケティング活動に取り入れていくことでいくつもの企画や商品が作れるんじゃないかと思うのです。誰にでもできるはずのフィランソロピーの「あ・い・う・え・お」をより自然に理解共有するためにも、また現時点の問題点を明確にするためにも、これは必要なことだと感じています。
この連載で何度も書いていることですが、基本ができていなければ応用ができるはずがない、というのが私の持論。最初の一歩を踏み出していただくためのきっかけとなる言葉群を探す旅はとても面白いものです。モノをどう売るか(どう寄付していただくか)という視点だけでなく、パーセプションを追求するような活動も必要ですね。