連載コラム/富裕層「あ・い・う・え・お」の法則
第19回
現在当社では旅行やリフォーム、クルマや時計など当社の富裕層顧客に対して簡易アンケートを実施しています。旅行なら旅行のことのみ10〜15問程度、リフォームならリフォームのことのみ同数程度の設問を1枚のアンケート用紙にとりまとめ、気軽に簡易に答えていただくような設計にしています。深層心理まで奥深く、とはいかないまでも、様々な分野で富裕層消費行動の「あ・い・う・え・お」の情報を集約している、といえばいいでしょうか。その中にCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)という簡易アンケートもあり、特に私はこのアンケートの回答に非常に注目しています。
「買い物や旅行などをする際、商品の品質だけでなく、その企業の社会的責任を意識しますか?」「環境負荷ができるだけ小さいものを優先して購入するグリーン購入など、環境配慮型の商品やサービスを購入していますか?」「簡易包装の贈答品を受け取った時、どう思いますか?」などなど、おそらく日本で初めての富裕層に対するCSR意識度定量調査になっているものと思います。数ヶ月後データがそろってくると思いますのでなんらかの形で皆様にご報告できるかと思います。
さて、富裕層に対するCSRの簡易アンケートの中で特に私が回答に注目している設問が3つあります。1つ目が「買い物や食事や旅行などで企業や店を選ぶ際、商品の品質にあまり差がない場合、最終的に決め手になるのはどんなものでしょうか?」というもの。通常の富裕層マーケティングリサーチに当てはめると、おそらく「接客した担当者の人柄や満足度」という答えが多くなってくることが経験から予想されます。当該企業のCSRという答えはおそらくほとんどでないのではないか、と。2つ目が「売上の一部がNPOなどに寄付をされる、寄付付き商品を買いたいと思うか?」というもの。3つ目が「あなたが投資している企業が、社会貢献などに経営資源を振り向けています。あなたはどう評価しますか?」という設問です。
この3つに共通の背景があります。それはブランド育成とプロフィットの短期的な二律背反性です。「ブランドが育成されていなければプロフィットは生じない」「プロフィットが生じなければブランド育成はできない」。ある意味でどちらも正解のはずです。グローバルに見れば、ティファニーが日本文化を、ブルガリが世界の子供たちを支援する(=企業の社会的責任)というような活動に見られる「ブランドが先、利益は後」というコンセプトワークが世界の富裕層には受け入れられています。ブランディングの「あ・い・う・え・お」にCSR活動を位置づける日本企業は遅かれ早かれ登場するでしょう。企業が抱える二律背反性を飛び越えられるところはどこなのか、大いに注目してみています。