連載コラム/富裕層「あ・い・う・え・お」の法則
第20回
いわゆる「アラブの春」と巷間呼ばれているアラブ諸国の民主化運動が本格的になっていることは周知の通りです。ほんの1年前まで「そんなことは起きないだろう」と誰しもが非現実的に考えていたことが今目の前で起こっていることに驚嘆している方々も多いと思います。このような民主化運動のキーファクターが「ネット」と「ジェネレーション」にあることもまた広く知られているところです。
エジプトやリビアを基点に始まった「アラブの春」は、いまやシリアをはじめとする中東各国、ひいてはアジア圏にまで実際には飛び火していますが、民衆の情報源となったのが「ネット」、それも、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアであったことは現在が時代の転換点であることを示唆しています。そもそも情報という単語は日本語ではインフォメーションと訳されがちですが、特に重要情報は「インテリジェンス」と呼ばれ、内部秘匿性の高いものでした。ウィキリークスなどから外交文書が公になってしまうことを是とはしませんが、 現代は情報が隠しにくくなっている時代であることはもはや否定できない事実でしょう。また、情報源への情報を知った若いジェネレーションが、ソーシャルメディア上で意見交換を継続し、民主化運動の爆発的な拡大をもたらしたことも疑いのない事実です。しかも自発的に、です。
「なかなか難しいね」と考えられていたもののうち最も現実的になることが想定できなかったことが「ネット」と「ジェネレーション」の2つのキーワードでいともたやすく実現してしまったことを考えると、私はこの考え方を、若者へのフィランソロピーの普及に当てはめることができるのではないかと思います。私が専任講師をしている学校法人文化学院の20歳そこそこの生徒たちの意見にも、若者にフィランソロピーを普及させるにはどうしたらよいかという問いの中に、次のようなものがありました。「今の若者にフィランソロピーを訴求するには、mixi や facebook、twitter などのソーシャルネットワークの活用をど真ん中の戦略におかねばならないと思います」「フィランソロピーポイントアプリを iphone 上で展開し、フィランソロピーに熱心な企業や個人がポイントも寄付できるような枠組みを作る」「若者にウケる3文字のネーミングを通称にしたらどうか?(例えば、日本フィランソロピー協会=NFPなど)」。
仰々しい言い方になるかもしれませんが、フィランソロピーの民主化も「ネット」と「ジェネレーション」への戦略がカギになると思います。別に彼らは小難しいことを言っているわけではありません。「大人が考えた言葉っぽいフィランソロピーという言葉を若者に適合させるようにして、ソーシャルに流布すればいいだけじゃないですか」なるほど「あ・い・う・え・お」である。最後に本稿の参考意見をくれた学校法人文化学院の堀口君、小牧さん、宇賀持君、吉田さんに感謝したい。