連載コラム/富裕層「あ・い・う・え・お」の法則
第25回
今年の夏も大変暑くなりそうな予感ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。さて、ここのところ私の本業である富裕層ビジネスにおいて、サービス再設計の問い合わせが急に多くなってきていることを感じています。例えば銀行が個人上位顧客向けに行ってきたサービスを全面的に見直したい、高級バッグメーカーがロイヤルカスタマー向けのサービスを見直すプロジェクトを考えたい、などなど。サービスというものも当初は斬新ながらいつの間にか提供する側もされる側も飽きがくる?というものなのでしょうか…。
さて、それはともかく、このような富裕層向けのサービスに関して従来から感じてきたことがあります。とかくそのようなサービスの象徴として、やれプライベートジェットの手配だの、やれ高級旅館が予約できるだの、ある意味わかりやすいものがありますが、結局のところ追随する似たようなサービスがどんどん出てきてオリジナリティのかけらもなくなる…、このようなサイクルが意外とよくあります。いや、オリジナリティのかけらもなくなるのではなくて、そもそもオリジナルではないから陳腐化の速度も速いんじゃないかと。簡単に言うとただの「定石」なんですね。ボストンコンサルティングの方がとある書籍でユニークさ(オリジナリティ)=「定石」+「インサイト」であると定義していますが、この「インサイト」の部分がないということになるのだと思います。インサイトを見出していくにも、ある種の方程式のようなものがあるにはあるようですが、とどのつまりはマーケットを定点観測していないとよくわからないことが多いはずなのです。サービスを設計することが目的になってしまうと、後はやりっ放し、告知しっぱなし、で、何年かたってから「これって違うんじゃない?」みたいな感じで気がつきだす。よくある話です。本来は「設計 したサービスを使っている顧客はどんなふうに感じているのだろう」という一点を見続けることを目的にしなければならないはずで、実はサービスそのものの設計よりも簡単なことなのです。ようするに「あ・い・う・え・お」レベルなのです。
勝てる考え方には必ずユニークな点があります。逆にユニークでなければ勝てない世の中になってきているのも事実でしょう。フィランソロピーにもこれは当てはまるはずです。勝てるフィランソロピー(長く続くフィランソロピー)には必ずユニークな点があります。本連載における私の役割は、そのユニークさを富裕層のフィランソロピーにつなげること。私は学者ではありませんから、うまくいくことは続ける、うまくいかないことは続けないというビジネスの鉄則を「あ・い・う・え・お」の法則とごく簡単に、誰にでも通じるように表現しているつもりです。大人も子どものフィランソロピーは「足し算レベル」から。いろんなことが難しく表現されがちな世の中では、これこそがユニークなことなのです。