連載コラム/富裕層「あ・い・う・え・お」の法則
第26回
皆さんいかがお過ごしでしょうか。私はここ3ヶ月ほどシンガポールへの出張がだいぶ増えてきています。シンガポールの友人が Millionaire Asia というアジア富裕層のデータベースビジネスをしており、そちらとかなり連携が深まっています。この会社でその名の通り Millionaire Asia という、いかにもストレートな名前の雑誌も発行しているのですが、その中で「アジアでもフィランソロピー文化が拡大している」という面白い記事がありました。その内容もさることながら、注目した点は「チェック(小切手)による寄付が多い」ということ。これ、日本における寄付促進にも大きなヒントなんじゃないかと。
今ではネット上で寄付ができる仕組みもずいぶんと発達しましたし、もちろん自分でできる範囲の寄付を現金でする、というのが普通だと思うんですけど、なかなかどうしてこのチェックによる寄付というのは大きな可能性を秘めていると思うんですね。例えば私が小学生時代(なんと30年以上前になりました!)、実家の近くにセブンイレブンができてものめずらしさも手伝って毎日のように行っていたことをよく覚えているんですけど、その時には今となってはどのコンビニでも見かける寄付ボックスのようなものはなかったと記憶しています。いつの頃からでしょうか、おつりを確かに小額ではありますが入れるようになりました。これはもっとも「あ・い・う・え・お」の概念に近い行動だと思います。ところが、そこに1,000円入れる人はあまりいないと思うんですね。逆にチェックであれば(なんとなく)1,000円くらいからの寄付になるだろうな、と。現金で1,000円寄付するのに何故かためらいがあるような人でも、チェックで1,000円なら違和感感じないんじゃないかな、と思ったりしています。問題は小切手なるものが日本でもごく普通に使用されていく文化になるかどうかということですが、クレジットカードですらこれだけ普及したんですから特に障害はないと思うんですね。例えばシンガポールでは給与支払いも小切手支払いがごく当たり前で、とても日常生活になじみのあるものだったりします。これでフィランソロピストが増えていくきっかけになるのであれば、ごく単純な話のはずですよね。
物事の成功のステップにはアクセシブルか、あるいはそうでないか、ということがあります。特に寄付なりフィランソロピーなりという ような概念には常に「アクセシビリティ」が求められると思うのです。インターネットで手軽に寄付活動ができるようになったことも、コンビニに寄付ボックスが設置されているのも、寄付することへのアクセシビリティを飛躍的に高めたはずです。ならばもう1回!小切手をごく普通の価値交換手段のひとつとする活動でフィランソロピストの増加につながるようなムーブメント起こしたいものです。わりと「あ・い・う・え・お」レベルの話だと思うんですよね。