連載コラム/富裕層「あ・い・う・え・お」の法則
第28回
本連載を締め切りギリギリ(いつもすいません!)で執筆中ですが、昨日日本フィランソロピー協会の定例会に途中出席し、神奈川大学名誉教授の松岡紀雄先生の話をお聞きしました。題して「試練の時を迎えたCSR」。示唆に富む数々の話の中で最もインプレッシブだったのが「ボストンコンパクト」なる概念。大まかに言えば企業が本社所在地教育支援表明を明確にし、かつ様々なサポートをすることで人材枯渇を長期的視点で防ぐという概念です。企業は人なり。今当該企業で働いているほとんどの人が数十年後は働いていない、という単純な現実を考えてみても、人材教育連鎖を「あ・い・う・え・お」レベルで実行することは理にかなっています。
私が理事として名を連ねている一般社団法人横濱学院という沖縄県の塾も「オキナワ・コンパクト」を実践している法人という意味でここでぜひ紹介させてください。代表理事の成竹義隆氏は「沖縄県の学力を全国一にする会」というコンセプトで沖縄県で塾を経営しています。彼曰く「学校だの塾だのの区分けはどうでもいい。ただ学び続ける環境を提供することがもっとも重要だ」。彼は、全国最下位の沖縄県学力を改善すべく、この塾を小中高生のハローワークと位置づけ、教育上のフィランソロピーを実践しています。たとえば、虐待児童などの受け入れが多 い児童養護施設の学生は塾設立当初から無償受け入れをし、受験のほか、公務員試験や就職試験対策も手弁当で原則無償奉仕しているというから驚きです。
さらに昨年、少子化の影響や学力不振による影響で生徒減少となり、結果、高校統廃合検討対象となった高校に対し、校外学習支援を開始。町唯一の高校存続に向け、自治体、教育委員会、高校で共同企画された進学塾を計画したものの運営の困難さや予算の少なさから引き受け手が見つからないところを、多少の赤字は覚悟して主体者として運営を引き受けた、いわば出張塾です。
このようなフィランソロピーに異論をはさむ向きもあるかもしれません。曰く「ビジネスとフィランソロピーは両立しない…」。しかしながら、沖縄県出身者が一人でも多く沖縄県の役に立つ人材として育っていける環境を提供しようとすること、いわば「オキナワ・コンパクト」は、企業も個人も社会性を持たねばならない現代においては、やって当然、なのです。しかも、彼にとっては教育上のフィランソロピーの「あ・い・う・え・お」を実践しているにすぎないベストケースであると感じています。
ただし一方で、このような社会的企業を真剣に応援してくれる方々もどうしても必要となってきます。資金的な寄付という実弾もさることながら、個別能力の提供、時間やヒューマンネットワークの提供で「オキナワ・コンパクト」を支援するところから、今年の私のフィランソロピーを始めています。彼の将来のイメージは学校経営です。「オキナワ・コンパクト」に参加したい方々は紹介したいのでぜひ連絡をいただきたいです。彼は、小さいけれど大きな一歩を踏み出したのですから。