30周年記念シリーズ開催報告

Date of Release:2022.3.10
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記念フォーラム3

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30周年記念シンポジウムチラシ
・日時:2022年1月20日(木)15:00~17:00
 
・方式:オンライン
 
・プログラム:【開会ごあいさつ】
              高橋 陽子    公益社団法人日本フィランソロピー協会理事長
       【第1部】日本フィランソロピー協会の活動紹介
              誕生日寄付
 
       【第2部】パネルディスカッション「個人の寄付文化醸成に向けて」
<パネリスト>
  奥田 知志 さん
  米良 はるか さん
<モデレータ>
  山田 泰久 さん
<パネリスト>
NPO法人抱樸理事長/東八幡キリスト教会牧師
READYFOR株式会社 代表取締役CEO
<モデレータ>
一般財団法人非営利組織評価センター 業務執行理事
 
 
パネルディスカッション
パネルディスカッション「個人の寄付文化醸成に向けて」
奥田 知志 さん
米良 はるか さん
山田 泰久 さん
 
山田 健全な民主主義社会の形成には一人ひとりの社会参加が不可欠であり、寄付は、個々の意思を直接反映できる社会参加の方法のひとつでもあります。東日本大震災が発生した2011年が寄付元年とされてから10年が経った今、個人における寄付について改めて考えます。まずは、お二人の活動について教えてください。
 
日本初のクラウドファンディング ─ READYFOR株式会社
米良はるかさん
米良 はるか さん
米良 2011年、日本初のクラウドファンディング(CF)サービスとして READYFOR を立ち上げました。経済合理性を優先すると見過ごされてしまうような、けれども社会的意義のある挑戦を応援する新しいお金の流れをつくりたいという思いで、これまでに約2万件のプロジェクトへ、総額250億円の〝想いの乗ったお金〟を届けてきました。コロナ禍では、『中止イベント支援プログラム』、『みらい飯プログラム』など緊急的な資金困難に素早く対応できるプログラムを実施したほか、2つの基金を運営し、必要な資金を必要なところに素早く届け、社会的な活動を絶やすことのないようサポートしてきました。
 
また、ソーシャルセクターで活動する団体のCFを多く支援してきた過程で蓄積できた団体の活動内容や実績、信頼性評価などのデータを元に、休眠預金や遺贈寄付といった資金分配団体としての新たな役割も求められるようになりました。今後、寄付市場のマッチング事業にも寄与していきたいと考えています。
 
【中止イベント支援プログラム】
2020年2月にREADYFOR社が実施した、新型コロナウィルスの影響で中止・延期となったイベントを支援するクラウドファンディング(CF)プログラム。
【みらい飯プログラム】
2020年4月よりREADYFOR社と商工会議所が連携したプログラム。各地の商工会議所が実行者となりCFで資金を集め、地域の飲食店に分配する仕組み。全国50地域の飲食店4,000店以上に5億5,000万円を超える資金を分配した。
困窮者をひとりにしない支援 ─ 認定NPO法人抱撲
奥田知志さん
奥田 知志 さん
奥田 認定NPO法人抱撲(ほうぼく)は、北九州市を拠点に1988年から生活困窮者を支援しています。炊き出しを中心としたホームレス支援から始まった活動は、34年目を迎えた現在、27事業へと拡大し、1,775名の地域ボランティアとともに、子どもから大人まで包括的な支援に取り組んでいます。今、社会には、経済的困窮(ハウスレス)と社会的困窮(ホームレス)が存在しています。抱撲は「ひとりにしない支援」を掲げ、つながり続ける伴走型支援で社会的孤立を解消する。そして生きる意欲・働く動機へとつなぎ、経済的・社会的な自立を目指す活動をしています。
寄付も仲間も集めるクラウドファンディング
山田 2020年に抱撲が実施したCFには、「家や仕事を失う人をひとりにしない支援」への呼びかけに対し、3か月間で1万人以上が賛同し、目標額の1億円を超える寄付が集まりました。金額もそうですが、生活困窮者や社会から孤立した人々への生活再建について1万人以上が関心を寄せ、寄付という行動に移したというムーブメントは、個人の寄付文化の醸成という点で大きなインパクトを与えたのではないでしょうか。
【2020年に抱撲が実施したCF】
2020年4月から7月にかけて実施されたCF。集まった寄付は1億1,500万円を超え、全国10都市に空き家を活用した支援付きサブリース住宅を172戸確保。178人に提供できた。
山田泰久さん
山田 泰久 さん
奥田 緊急事態宣言によるステイホームの息苦しさ、経済活動がままならないことへの不安など、困難な状況がこれまで以上に身近に感じられたことで、主体的寄付につながったと分析しています。この主体的寄付は、われわれNPOにとってはとても心強い「仲間」のような存在で、使命感や活動の原動力にもなります。今回、抱撲にとって初めてのCFでしたが、支援の呼びかけから寄付の実行、応援コメントまでウェブ上で完結するデジタルプラットフォームは、主体的寄付を通じた「仲間づくり」という意味でも、大きな可能性を感じました。
米良 CFは、ある意味〝お祭り〟のようなところがあって、だからこそ1,000万円とか1億円とか、個人の寄付としてはインパクトのあるプロジェクトも成立する。しかし、大切なのは一度持った接点をどう継続するかではないでしょうか。デジタルプラットフォームは、寄付者の属性や思い、関心のある分野などがデータとして蓄積されますので、一般企業の「顧客エンゲージメント」のような考え方にも活用することができます。
 
寄付を受け取った側は、活動の実績を通じて、あるいは的確な情報を提供することで託された思いを実現していく。こうした丁寧な関係性によって、CFで出会った「寄付をする側」と「寄付を受ける側」が共に社会課題の解決に立ち向かう「仲間」になるのだと思います。
絆創膏型寄付から社会参加の意思としての寄付へ
山田 そういう意味では、READYFORの「継続寄付」という仕組みは、仲間づくりからさらに一歩踏み込んだ寄付のあり方ですね。
【継続寄付】
社会的活動団体が掲載料無料で、毎月の寄付金を集めることができる新しい機能。2021年1月より一部の団体で提供し、2022年2月から正式版として提供を開始した。
奥田 日本で「寄付」というと、災害や惨事が起きた時の助け合いの側面が強く、ある意味、傷口に貼る〝絆創膏〟のような存在だったと思います。しかし、社会に潜む問題を解決するには、継続的な活動と支援が必要です。NPO側からすると、定期的な収入は事業計画が立てやすいというメリットもあり、近い将来、金融機関からの融資の返済根拠として認めてもらえるかもしれない。そうなれば、日本のソーシャルセクターの活動は力を増し、健全な民主主義の形成につながるのではないでしょうか。
米良 今、社会課題への関心が高い若者が増えていて、SNSで自らの関心を発信することが自己表現のひとつになっているようです。10年前には考えられなかった社会参加への仕組みであり、若者を中心としたこの意識がこのまま育っていけば、寄付文化の定着につながるのではないかと思います。
山田 現場に出向いて社会の課題解決に挑む代わりに、寄付という形で参加する。この10年でCFというデジタルプラットフォームも整い、すべてがウェブ上で完結できるようになって、寄付にまつわる仕組みも、寄付のあり方も大きく変化しました。社会の課題は、自らが参加して解決するという意識づけとともに、日本における個人の寄付文化が根付く日もそう遠くないと期待します。
 
・このフォーラムは、第389回定例セミナー として開催しました。
「フィランソロピー始動30周年記念フォーラム3開催報告」おわり