
閉会後は、現在復旧中の「鵜住居地区」「唐丹地区」の圃場(ほじょう)視察を行いました。大槌町では、農地復旧のために表土の入れ替えを進めています。現在の圃場は、ガレキの混じった土をすべて取り去り、新しい土を待つばかり。早ければ来年春より営農を再開できるそうです。どの方も手ごたえを口にしていました。
≪鵜住居地区≫

ここは今、ちょうど土を掘った状態ですね。深さ的には60~70cm位。初めは遠野から土を持ってきていたんですが、それも足りなくなってしまったので、最終的にはあちこちから土を持ってきていました。運び入れる土は主に、畑から持ってきているようですね。遠野は「大笹」という場所の土なんですが、かなり深い部分まで土の状態が良いんですよ。あまり砂利なども入っていませんし。しかしそれだけではまかなえず、最終的には宮城県からも土をもらっていたようです。
大槌町では特に塩害対策はせず、どこも土の入れ替えによって農地を復旧させています。ここに土が届くのは、おそらく来春あたりでしょう。ロータリーで一度代掻きして、土をまぶして。この辺りだと田植えはだいたい5月15日に行います。実は水路にも大きなダメージを受けていまして、インフラがまだ復旧していません。こちらは来年営農できるかどうかの瀬戸際ぐらいですね。農地の復旧と同時進行で、インフラの復旧も進めています。水源となる川がすぐ近くにありますので、そこから水を引くための整備を行います。
これまで作っていたのは、コシヒカリとあきたこまち。近頃ひとめぼれが増えてきましたが、やはりあきたこまちが主流ですね。こっちの方は、遠野と比べるとかなりあたたかく、雪もさほど残りません。距離はあまり離れていませんが、トンネルを抜けると別世界になりますからね。遠野は本当に雪深くて、冬の作業が大変です。
≪唐丹(とうに)町地区≫

この辺りも全部田んぼですね。唐丹町は再来年からの作付けになる予定です。この一帯全部が、ここから見える、あの海から直接波を被ったんですよ。27世帯あった中、残ったのは1軒だけでした。
現在は「換地委員会」が、農地の集積を行なっています。「あなたの畑はこうなりますよ」という図を起こし、それに関する了解を取りつつ取り決めをして。換地にあたっては、例えば「年を取ってもう農作業ができない」という方から提供いただいた農地などを集めつつ、営農を続ける方全員で一緒にやりましょう、という流れになっています。
私も1回だけ会議に出席しましたが、換地自体への反対意見はなかったですね。皆さん、非常に前向きで復興に望んでいらっしゃいます。一方、同時進行で農地自体の工事も進め、土を入れるばかりの状態まで持って来ました。大体1年ぐらいかかったでしょうか。現在は、せっかく支援いただいた機械をしまっておく場所がないので、保管庫を作るところです。皆さん仮設にお住まいですし、そこへトラクターを持って行くわけには行きませんからね。
JA管内の被災地で、復興組合が一番早くできたのがここなんです。この機会を上手に利用する方と、「いやーどうしようかな」とためらう方で、後々差がつくのではないかと個人的には思っています。換地を行うと、どうしても農地の所有面積が狭くなった人と、広くなった人とが出てきますが、そこは広くなった分を狭くなった人から購入する、という形をとることで、解決しています。
この一帯は、ヤマセが厳しいですが雪は少ないんです。地盤沈下の影響も多少はありましたが、満潮時でもギリギリ入ってこない程度で収まっています。釜石市では満潮になると水浸しで通行止めになるところもあると聞きますが、こちらはまだいい方でしょう。
もともとJAでは「大槌で冬野菜を作ろう」という計画を進めていました。震災があったため一時中断していましたが、今年から仕切り直し、試験栽培を再開したところです。来年は通算で3年目になるので、いよいよ実践試験に入ろうと思っているんです。第1弾は「冬獲りキャベツ」 。現在は大槌で作っていて、今年は澤山地区と、種沢地区の奥の方で作ります。第2弾に予定しているのは「寒締めホウレンソウ」。あとは、老齢者でも重くないニラとかアスパラといった軽量野菜の栽培も予定しています。
三陸自動車道の大槌ICができると、今日、贈呈式を行なった場所が降り口になるんです。それをきっかけにして、今度営農センターと産直施設ができることになりました。せっかく産直ができるのに、冬に出す物がないって言うのは寂しいですからね。ゆくゆくは大槌の特産品をたくさん出せるようにしていきたいですね。