日時: 平成24年(2012年)5月8日(火)■13:30~14:00
会場: JA名取岩沼 本店3階 会議室
会場: <所在地> 宮城県名取市増田1-12-36

東日本大震災によって津波の甚大な被害を受けた東日本沿岸部。農業従事者も、農機具の流出や海水侵入による田畑の塩害など大きな打撃を受けています。そうした中、キリンビール株式会社と公益社団法人日本フィランソロピー協会より、被災した農業従事者に対して農業機械49台、3,761万円が贈呈されました。今回は、「東北『復耕』サポート」(農業機械導入支援事業)としての記念すべき第1回目の贈呈式。JA名取岩沼に加盟する農業団体の代表3名へ目録が手渡されました。
≪贈呈者代表あいさつ≫
栗原 邦夫(くりはら・くにお)
キリンビール株式会社 CSR推進部部長
本日は大変お忙しい中、このような機会を設けていただきありがとうございました。

私たちは「生産から食卓まで」という言葉を支援策のテーマに掲げ、キリンビールの「おいしさを笑顔に」というコピーとともに、地域の皆さまと一緒に取り組むことを考えております。
被災された皆さまの今までのご苦労やこれからの不安などを考えますと、言葉にはあらわせないものがあるかと思います。しかし今回皆さまより「震災以前より、いっそう精力的に生産へ取り組む」という力強い言葉をお聞きしまして、私たちも希望と勇気を与えていただきました。
営農再開に当たりまして、まずは健康を大事に励まれ、たくさん美味しいものを作っていただき、その作物が食卓に並び、食卓を囲む笑顔につながるようお祈り申し上げまして、ご挨拶の言葉に代えさせていただきます。
桑名 隆滋(くわな・りゅうじ)
公益社団法人日本フィランソロピー協会
このたびは、本プロジェクトにご申請いただき、ありがとうございました。申請書を拝読いたしまして、初めて日々の実情の一端に触れることができました。皆さま方が、個々人の力を超え一丸となって営農に取り組む姿勢に、僭越ながら審査させていただくメンバーみな、深く感じ入っていたようであります。前に進もうという気持ちが非常に伝わってくる、すばらしい申請書でした。
今後、復興には長い時間がかかるかもしれません。しかし我々もできる限り頑張りますので、今日を機会にいろいろとご指導のほどよろしくお願い申し上げます。
≪目録贈呈≫

目録を読み上げる、キリンビール株式会社 栗原邦夫部長

目録を受け取る、下増田地区震災復興推進協議会会長 大友清康様

関係者全員で記念撮影
≪贈呈を受けた方からのごあいさつ≫
伊藤 繁男 様
小塚原(こづかはら)北地域農業第1組合 代表

我々は昨年の大震災により、甚大な被害を被りましたが、この話をいただいてから農業早期再開への希望を感じ、喜びでいっぱいでございます、これからも我々はキリンビール株式会社様、日本フィランソロピー協会様のご期待に沿えるよう、全員力を合わせて働く所存でございます。本日は大変ありがとうございました。
大友 清康 様
下増田(しもますだ)地区震災復興推進協議会 会長

このたびは、キリンビール株式会社様、そして公益社団法人日本フィランソロピー協会様から多大なる農業機械のご支援をいただき、ありがとうございました。私ども下増田地区にも大変傷の深い地区があります。その地区で営農される農家の方と相談をしつつ、ご支援いただいたトラクターを有効に生かさせていただきたいと思います。そして皆さま方のご期待に応えるべく、おいしい、皆さまに喜んでいただける農作物を作っていきたいと思います。
菊地 一夫 様
岩沼地域農業復興組合代表 大友国夫様の代理として

このたびは、キリンビール様、そして日本フィランソロピー協会様、本当にありがとうございました。我々の地域では今回の支援の話を聞き、皆かなり楽しみにしておりました。最初に支援の話をいただいたときから「どうなるんだろう」と皆、期待に胸を膨らませておりましたが、それが今日現実となり、実際に受け取った皆の喜ぶ顔が目に浮ぶようです。機械はそれぞれ共同で使う形になるかと思いますが、大事に、長く使っていきたいと思います。
≪激励ごあいさつ≫
高橋 弘次 様

このたび、僭越ではございますが激励のごあいさつをさせていただきます。ただ今、3地区に対して、キリンビール様、そして日本フィランソロピー協会様から多大な寄贈をいただきましたこと、心から厚く感謝と御礼を申し上げます。
現在私どもは正・準あわせて、7,000を超える組合員を抱えております。JAを頼っております組合の皆さま一人ひとりに、しっかりとお応えしていかなければなりません。そして3月11日以前のような姿に、一刻も早く戻さなければならないと身の引き締まる思いでおります。
先ほどキリンビール様から「“復耕”とは耕すという文字を使う」との説明がございましたが、耕すという言葉の後には必ず、幸いという文字の「復幸(ふっこう)」が来るはずであります。沿岸地域が現在もなお、壊滅的な状況にあることはご存知のとおりでございます。ですが一日も早い作付けを進めていかなければならない。そして今私どもには、仮設住宅などに住む農家の皆さんとともに、早期の一歩を踏みださなければならないという責任があります。
今回贈呈を受けられた小塚原北地域の伊藤さん、そして岩沼地域農業復興組合の代表として、代理で出席されている菊地さんは農協の理事でもあります。今日の日を忘れず、キリンビール様、日本フィランソロピー協会様へ「このように(作物が)できましたと」いう報告を一日でも早くできるようにと思っております。
今回の支援に関し、被災した岩手、宮城、福島、茨城、千葉の中で、我が農協が一番初めにこのような機会に恵まれたことを、ありがたく受け止めております。と同時に、一秒でも二秒でも早く、復興に取り組まねばと肝に銘じております。今回いただいた支援を大いに活用し、農業の復興が“幸い”に繋がるよう、最大の努力をすることを誓わせていただきます。また本日いただいた皆さまからのご好意は、もちろん自治会にもご報告いたします。本当に今日はありがとうございました。
≪贈呈農業機械お披露目≫
会場: JA名取岩沼 閖上(ゆりあげ)支店
会場: <所在地> 宮城県名取市高柳字下合畑60
贈呈式終了後、JA名取岩沼閖上支店にて支援農業機械の見学会がありました。ガレージには「下増田地区震災復興推進協議会」「小塚原北地域農業第1組合」「岩沼地域農業復興組合」に贈呈された、合計49台の農業機械がずらりと並べられました。トラクターや管理機、自走式草刈機といったピカピカの農機具に触れながら、見学者はみな笑顔を浮かべ、たくさんの質問をしていました。

真新しい
管理機を前にして自然と笑顔に

トラクターを前に見学者全員で記念撮影
【注】 管理機とは、耕耘機(こううんき)と同じようなものですが、耕耘機が畑や田んぼを耕す「耕起作業」に使われるのに対して、管理機は、耕耘機で耕した圃場(ほじょう/「田んぼ」のこと)に畝(うね)を立てたり、溝を掘ったりする作業に使われます。耕耘機に付属機器を取り付けることで、管理機として機能する機械もあります。
≪贈呈された農業機械を前にして≫
菊地 一夫 様
岩沼地域農業復興組合代表代理
岩沼エリアで、主に水稲と畑ではブロッコリーや小松菜といった葉物を中心に生産していました。現在は、畑の除塩が終了し、畑作物は作付を再開しています。

私の場合は、仙台東部道路沿線にある3反(29.75アール)の畑地のうち、半分が海水に浸かりました。残った半分も地続きに海水がしみてきてしまって…。震災後、最初に白菜を作付しましたが、まったく結球しませんでした。たぶん塩害の影響でしょう。
田んぼの除塩は行政が行いましたが、私のところは地下水を汲み上げる潅水用ポンプで畑の除塩を行いました。トータル1か月ほどかけました。そうした苦労が実って、行政が実施した塩分濃度測定でも「この数値なら、この作物は問題なく作付できます」というお墨付きもいただきました。去年の白菜はダメでしたけど、今年は「元に戻りつつあるかな」という手応えがありますよ。
メインは露地栽培ですが、ハウスも600坪(19.83アール)分ほどあるんです。こちらは海水の影響がなかったので、かろうじて作付ができています。実は田んぼの作付も再開したんですが、こればかりは収穫するまでわかりませんから…。じっくりと見守りたいですね。
私たちのいる西部は、岩沼エリアでも被害が比較的小さいエリアです。沿岸部、中間部、西部とあるうち、一番被害の大きいのは沿岸部で、ようやく今、中間部の作付ができるようになったところです。中間部とはいえ6割ぐらいの農機具が流されていますから、今回の支援は本当に助かりますね。農地に回復のきざしが見えても、耕す機械がなければ何も作れないですし。
「今回の支援が復興の足がかりになる。今年が正念場だ」という気がしています。おかげさまで「うちの地域にトラクター来るらしい」ってみんなニコニコ噂していますよ。「どこのメーカー?」「どんな農機具?」って(笑)。ですから、キリンビールさんには非常に感謝しています。