宮城県5JA 贈呈式
日時:平成25年(2013年)10月15日(火)14:00~15:45
会場:キリンビール株式会社 仙台工場
稲の収穫も一段落し、あたりもほんのり紅葉してきた10月中旬。キリンビール仙台工場の会場で、復興応援キリン絆プロジェクト第2ステージの宮城県内5JAに対する贈呈式が行われた。
贈呈式では、受贈者による事業計画の発表が行われた。大消費地を見据えた事業、野菜の一大生産地の事業、特産物を有する地域の事業、豊かな山海の幸を活用した事業、施設園芸の強みを活かした事業。何れも、農業によって宮城県全体の復興をリードしていく強い意志が感じられる事業計画であった。
1. 開会
《主催者挨拶》
キリンビールマーケティング株式会社 執行役員 東北統括本部長 石田 明文
事業計画書から伝わってきた熱く強い想い
皆さんご存じのとおり、私どもは、日本の農業および水産業の復旧・復興のために何かお役にたてることはないかと、この「復興応援キリン絆プロジェクト」を立ち上げました。第1ステージでは主にハード面のサポートをさせていただきました。そして現在第2ステージで、農業・水産業の6次化の推進、あるいは産品のブランド化推進、また事業の担い手の育成といったソフト面のサポートをさせていただく予定です。
本日の贈呈式もその一環にあるわけですが、事業計画書を拝見し、どの計画書からも、皆さんの熱く強い想いをひしひしと感じました。このような事業をサポートさせていただくことを、本当にうれしく思いますし、誇りに感じます。
公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 髙橋 陽子
農業で地域振興を
プロジェクトの第1ステージでは、農業機械を皆さんに使っていただくための支援をさせていただきましたが、第2ステージは6次産業の推進、産品のブランディング、地域のブランディングを核にした事業をやってもらおうということでスタートいたしました。本当にこの沿岸部は被害が甚大で、「再開しよう」という意欲を持つこと自体が困難な状況であったと想像します。しかし皆さんが地域の農家を支え、応援し、引っ張ってきたことにより、今日が迎えられたといっても過言ではありません。本当に心から感謝を申し上げます。
農業分野では、震災以前からさまざまな改革が求められております。これを機に、復興するだけでなく、農業を「成長産業」として躍進させる大きな力になっていただきたいと願っております。
今回皆さまが作成した事業計画書には、どれも「地域をいかに興すか」という視点が入っていることに、心強さを感じております。ぜひこの事業がより大きく発展し、そして日本の農業復興、成長産業のモデルとなっていきますよう、皆さんの力をお貸しいただければと存じます。
私どもは企業やNPO、農業者といった、異なる分野の方々をつなぎ、コーディネートする組織です。それにより地域の課題解決や振興につながって行けばと考えております。
2. 目録贈呈
《内容説明》
キリン株式会社 CSV推進部 キリン絆プロジェクト リーダー 野田 哲也
今回の農業復興支援につきましては復興支援第1ステージとして、震災後から2012年まで、被害を受けた岩手・宮城・福島の農家の方々に対して、JAグループ様と連携し、稼働していない中古農業機械のリユースなどを行い、営農再開を支援しました。その結果、支援金額は5億2,100万円となり、農業機械386台を導入いたしました。
2013年度からは被災地のさらなる復興に向け、第2ステージとして、農産物のブランド育成支援、6次産業化に向けた販路拡大支援を行っており、今回は宮城県の、仙台、名取岩沼、みやぎ亘理、南三陸、いしのまき、の計5のJA様に対し、それぞれの復興プロジェクトにおける農産物や加工品のブランド育成、情報発信、直売施設の設置等の事業に関し、次の通り助成するものです。
仙台農業協同組合
45,000,000円
名取岩沼農業協同組合
20,000,000円
みやぎ亘理農業協同組合
35,000,000円
南三陸農業協同組合 階上生産組合
10,000,000円
南三陸農業協同組合 園芸部会(アンジェレの栽培)
15,000,000円
南三陸農業協同組合 園芸部会(春告げ野菜)
25,000,000円
いしのまき農業協同組合
32,000,000円
総額:
182,000,000円
受贈者:宮城県5JA(仙台・名取岩沼・みやぎ亘理・南三陸・いしのまき)代表理事組合長 様
贈呈者:キリンビールマーケティング株式会社 宮城支社長 小西 弘晃
公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 髙橋 陽子
《受贈者代表挨拶》
南三陸農業協同組合 代表理事組合長 高橋 正 様
絶望の後に届いた吉報

東日本大震災から2年半が経過いたしました。被災地では農家、JA、さらに行政が一体となって農地の復旧、農業の復興に取り組んでおり、農地につきましては、今年度(2013年度)末までに県内の7、8割程度が復旧できる見通しとなっています。一方、復旧の進度につきましては、地域間格差が拡大しており、特に東北宮城におきましては、未だ計画の20%程度の復旧にとどまっております。これは「原状復旧」ではなく、将来に持続可能な農地復旧を図るべく、圃場整備を取り入れていることが大きな理由となっております。一方では担い手不足の問題や、依然出口の見えない原発問題などもあり、未だ「復興、道なかば」というところでございます。
あの3月11日、私たちは会議で来ていた気仙沼市の階上支店で被災いたしました。そして避難指示の放送に従い、階上中学校へ職員ともども避難したわけです。すると次から次へと避難所に集まる人々の中に、組合員の方を見つけました。その方の話を聞くと「作ったばかりのハウスが、次々に津波に飲み込まれていった」、「農地が壊滅した」、そして「避難所にいた100名近い方々が流された」というではありませんか。その耳を疑うような絶望的状況に、言葉もありませんでした。そうした状況から、なんとか地域復興、営農再開を果たしたいと、国・県・行政に働きかけてきたわけでありますが、そんな折にキリンビール様から、このようなご支援をいただけるという吉報が入りました。それまでは悲嘆に暮れるばかりであった農家・組合にとって、これが大きな希望となったわけでございます。
当JAにおいても、津波で壊滅的な被害を受けた地元ブランド野菜「春告げやさい」の再興、新たな作物として全農のオリジナルミニトマト「アンジェレ」の生産、昨年度(2012年度)農機支援をいただいた「気仙沼茶豆」のブランド強化、の3事業を提案し、いずれも承認をいただきました。また、他の4JAにおいても、地域の特徴を活かした事業を提案し、すべての事業が承認をいただいたと伺っております。皆さまの温かいご支援に報いるためにも、壊滅した農業の再生による地域経済の復興に、全力を上げて取り組むことを、この場を借りてお約束いたします。
3. 事業説明
(1)「仙台ブランドの育成と農業者所得向上への挑戦」
《挨拶》仙台農業協同組合 代表理事組合長 遠藤 睦朗 様
キリンビール仙台工場の復興に力を得て

東北沿岸地域の農地2,000ヘクタールが被災しました。今回のプロジェクトの主催でありますキリンビール様の仙台工場も私どもの管内にあり、震災では甚大な被害を受けていらっしゃいます。しかしその後、キリンビール様で迅速な復興が成し遂げられたとの報せが、私たちに力を与えてくれました。そして農家組合員、農協も含めてこうした事業に取り組むキッカケになったものと私は確信しております。
併せまして昨年(2012年)、私どもの管内である七ヶ浜町生産組合に農機の支援をいただき、3年ぶりで今年やっと米を作れる状態になりました。まだ全部復旧したわけではありませんが、一部の水田で米を作り、一等米を出荷する喜びを味わうことができました。今回は第2ステージとして、仙台農協の農産直売所「たなばたけ」のブランド化に向け、支援をいただきました。
《事業説明》仙台農業協同組合 総務震災復興推進課 課長 渋谷 奉弘 様
先ずは大豆の加工から。そしてホウレンソウ、レタスへ。

事業の概要は、農産物を主原料とし日常生活で親しまれる加工商品の開発により、需要を開拓し、地域農業を活性化するということであります。事業費は、今回のプロジェクトによる支援金額4,500万円、総事業予算額は8,000万円となっております。スケジュールとしては、今回は地域の野菜を粉末にする機械を購入する計画ですが、それを来年(2014年)4月までに導入したい、その機械を使用して、商品の販売開始を来年(2014年)8月ぐらいまでに行いたいと考えています。
どういった野菜を加工するのかというと、まずは大豆です。仙台は転作で非常に多くの大豆を作付けしております。それを有効活用していきたいということです。次に園芸作物。被災した沿岸地域では非常に多くの野菜を作っています。これらの野菜を活用し、加工品を作っていきたいと考えています。
JA仙台管内では約2,000ヘクタールの水田が津波の被害を受けました。来年(2014年)4月に400ヘクタールの作付けができれば、それでやっと復旧作業はすべて終了となります。野菜については水田より早いタイミングで作付けに取り組んでいました。内容はホウレンソウなどの軟弱野菜やレタスなどです。今後はそれらの農産物をただ作って市場に出すだけに留まらず、加工し、消費量を上げていこうと考えています。
先ほど話にあった直売所「たなばたけ」を中心に、「おかず野菜」といった商品などで、日常の食生活に地元野菜を浸透させ、消費拡大を図っていきたいと考えています。付加価値を付けることで新規需要を創出し、地域農業のさらなる復興を加速させたいと考えています。
たなばたけのスイーツ工房

将来構想として、商品開発については、生産者や地域の消費者に参加していただき、一体となった地域ブランドを成長させていきたいと考えています。管内には120万人という人口を抱えています。ここに「仙台ブランド農産物」を浸透させ、消費を拡大することによって、地元の農産物の売上が上がり、所得向上につながるという好循環を考えています。
続きまして管内を紹介します。JA仙台は3市3町で構成され、太平洋から山形県境まで広大な面積にまたがっています。沿岸地域は今回の震災で大きな被害を受けました。仙台平野の仙台市宮城野区・若林区、それと七ヶ浜町です。「たなばたけ高砂店」は国道45号線沿い、JR仙石線陸前高砂駅の隣りに建設されています。
「たなばたけ」は平成23年(2011年)10月8日にオープンいたしました。本来はもう少し早くオープンすることになっていましたが、震災の影響でこのタイミングになりました。復興のシンボルとして、地域との絆を深めることをモットーに運営し、現在多くの利用者の方々にご愛顧いただいております。
先週末の3連休には2周年祭を開催しました。多くの方々に地域の新鮮な生産物を購入いただくことで、農家の所得向上にもつながっています。
この中にはさまざまな工房があり、その一つに「スイーツ工房」があります。こちらで販売する商品は、日本で一番最初に野菜スイーツを開発した「パティスリーポタジエ」(東京中目黒)のオーナーパティシエ・柿沢安耶さんのご指導の下、開発を行いました。例えば「ニンジンミカンプリン」や「キャベツとデコポンのシュークリーム」「トマトのロールケーキ」などです。スイーツ工房では、こうした野菜をメインとした洋菓子を販売しています。先日はお祭りに出店し、この野菜スイーツがかなりの売上げを記録しました。
出荷者と一緒に商品開発
これまでは出荷者から直売所へ野菜を出していただき、それで農家が収入を得ていました。しかし、それではなかなか高収入にはつながらないだろうということで、商品開発会議を設けまして、出荷者に商品開発に参画いただき、「たなばたけ」で販売することになりました。
スイーツは常日ごろ食べない「非日常」のものですが、今後は日常的に食べていくものを開発していこうと思っています。現在予定しているのは「ベジパン」「やさいのおかず」「やさいの駄菓子」といったシリーズです。ターゲットとしては、仙台120万人の生活者の中で、食に拘りがある人、お洒落で健康志向の強い人といったところをターゲットにして行きたいと考えています。
そして生鮮品と野菜スイーツとの相乗効果や市場シェアの拡大、地域ブランドの育成、これらを図ることで、販売の増加、収入の増加で出荷者へ還元していきたいと考えています。開発した商品を紹介します。
・やさいのおかずシリーズ「鉄火味噌」
仙台の大豆に、ダイコンなどの根菜類を煮込んでご飯にかけて食べるもの。ご飯が進むよという商品です。
・「野菜キーマカレー」
ひき肉の代わりに大豆を使用したカレーです。
・ベジパンシリーズ「ベジパン」「大豆パン」
日常的に食べられるものをということで開発しています。
・やさいの駄菓子シリーズ「やさいグミ」「やさいマシュマロ」「野菜まころん」
「たなばたけ」に来たお客さまから「おみやげが欲しい」という声を聞き、開発しました。日持ちの良いお菓子です。
(2)「園芸産地・名取岩沼の復活と新たなブランド確立」
《挨拶》名取岩沼農業協同組合 代表理事専務 根深 雅美 様
着実に進む復興
当管内は園芸産地として、都市近郊の立地条件を活かし、販路の拡大と園芸振興に取り組んできました。特に「仙台せり」について全国有数の産地でありますし、「小松菜」「チンゲンサイ」は東北一の産地です。しかし震災と津波によって園芸ハウスが流失・倒壊し、管内で50ヘクタールほどの被害がありました。結果的に葉物野菜の大幅な生産減少を余儀なくされました。
現在は生産量も徐々に回復していますし、復興も着実に進んでいます。課題は生産量の回復に伴う被災施設の復旧・整備。これに加え、今後はブランドの開発・育成、あるいは6次化産業に向けて取り組みます。今までのものを元通りに戻すことだけでなく、これからの創造的な復興を視野に入れて取り組むことが大切だと感じています。
《事業説明》名取岩沼農業協同組合 営農部 園芸課 課長 菊地 昇 様
仙台せりを全国へ

野菜の一大産地である名取岩沼の農業復興を「仙台せり」と復興野菜に託し、生産量の拡大とブランド化を進めます。
スケジュールとしては、平成25年(2013年)9月から1年間、PRキャラバンによって主要青果卸売市場でのトップセールス、および量販店での試食宣伝会を開催します。広報活動につきましてはテレビ、ラジオによる宣伝と、新しい食べ方のレシピ作りを行います。技術向上対策として、栽培講習会を開催します。生産計画の立て方や品種の選定の仕方など、優良栽培事例を用いて知識を共有し、生産者間の品質の平準化を図るとともに、出荷資材のコスト低減も図ります。最後に加工部門として女性部組織、地元の食堂組合との意見交換会を開催し、メニューの考案、試作品の開発を行います。
主要農産物としては、以前からの主要生産物である小松菜、チンゲンサイ、仙台せりです。特に「仙台せり」は、8月末から翌年の4月末までの出荷期間となっています。せりの収穫にはウエットスーツ素材の胴付長靴を着用して、折り採りを行っています。収穫後、地下水で洗浄し、一束100gの調整を行い、30束ずつ箱詰めします。その後野菜集荷所へ持ち込み、生産者が品質検査を行い、各卸場へ卸します。現在は北海道、東北、京浜市場、合わせて21カ所に出荷しています。試食宣伝会では京浜市場にて早朝より市場担当者をはじめ、仲卸し、買参人(ばいさんにん)
※を対象とした宣伝会を、出荷組合の協力の下、毎年開催しています。また地元小学生を対象とした総合学習で、セリ農業の体験学習も行っています。小学生には実際に圃場へ入ってもらい、セリの折り採りや束ね方の体験を行っています。
チンゲンサイ、小松菜については管内の沿岸部で広く栽培されているものです。震災後、早期の復興で生産量を回復しまして、生産者とともに加工品などの開発に取り組んでいます。
※買参人:卸売市場で卸売業者や仲卸業者から生鮮食料品を買うことを、市場開設者に認められた人。
(3)「亘理・山元産いちごの本格出荷に伴う『仙台いちご』ブランドの復興と6次産業化への挑戦」
《挨拶》みやぎ亘理農業協同組合 代表理事組合長 岩佐 國男 様
土地や機械は失っても、やる気と技術は失わない。

JAみやぎ亘理は、県内JAでも最南端のエリアを管内としております。その大部分が太平洋に面しておりまして、今回の震災による津波では耕地の78%が被災しました。「後ろを振り返ると、もう海になっている」という状況でした。全壊は6つの集落に及びます。
それでも私たちは、決して負けない、土地や機械は流失しても、やる気と技術は失われないという信念で頑張ることを誓いました。45年前から先人たちが築いてきたいちご栽培を、絶やすことはできません。96ヘクタールあったいちご農地の内、95%が流失しました。ハウスは2.3ヘクタールしか残りませんでしたが、それでも諦めないという想いで過ごしてまいりました。
2年7か月が過ぎましたが、被災した水田を埋め立て、最新技術を投入した大型ハウスを建てました。ここでいちご作りを再開しております。現在いちごは花盛りです。ミツバチが飛んでおります。こうした風景を見るたび「よくぞここまで復活したな」と、そして「全国民の支援と組合の頑張りがここまでにしたのだな」という想いでいっぱいです。
亘理・山元はかつて45億円の売上を誇った、東北一のいちごの産地です。これをさらに推し進め、名実ともに日本一の名産地にしたいと考えています。水田についても今年の秋から2,000町歩(約2,000ヘクタール)の大区画整理事業が始まっております。私たちは諦めません。むしろ災い転じて福となすという想いを強く抱きながら、これからも頑張ってまいりたいと思っております。
(2013年)11月6日には、いちごの出荷式が行われます。そこで私は何をお話したらいいのか、おそらく涙が出るのではないかなと思っております。私たちの管内222名のいちご農家が、あの選果場に集まりいちごを出荷する姿、更には田んぼで黄金色に実った稲を収穫する姿、これこそが地域の復興と位置付けていましたが、それがまさに実現するのです。「よくやれたな、よく助けていただいたな」という想いで一杯でございます。
《事業説明》みやぎ亘理農業協同組合 営農部 営業対策課 課長 中山 一哉 様
地元の小学生が仙台いちごのキャラクターを作成

復興した仙台いちごの販売促進に合わせ、新たな加工品の開発や、キャラクター作成により、ブランド確立を図ります。
私たちは行政と一体となり、管内7か所にて園芸団地の建設に取り組んできました。栽培面積は約41ヘクタールに及びます。農協だけでなく全農さんとも一緒になり、施設使用の検討なども行いました。また技術の指導も行っております。そうしたハード面の整備は進んでおりますが、販売対策などのソフト面がこれからでありますので、今回のプロジェクトを通じ、ブランドの強化を図っていきたいと思います。
今回、管内の小学生に応募いただき、いちごのキャラクターを作成しております。出荷資材のデザインなどを全面リニューアルし、販売促進を図っていきたいと思っています。また着ぐるみも作成してPR活動をして行く予定です。
「仙台いちご」は地域団体商標登録をしており、品種としては「もういっこ」という仙台で育成されたものでございます。果実が大きく、さわやかな甘さが特徴で、スイーツや加工品にも適した品種です。これを全面的にPRしてまいりたいと思います。
今後お菓子やワイン、ジャムなども含め、魅力的な商品開発も行って参りたいと考えております。
(4)「気仙沼茶豆のブランド化に向けた販売推進、及び地域特産品としての確立」
(5)「被災地での新技術を導入した『アンジェレ』の栽培、及び地域特産品としての確立」
(6)「『春告げやさい』の再興による南三陸『春告げの国』づくり」
《挨拶》南三陸農業協同組合 階上生産組合 組合長 佐藤 美千夫 様
今回の震災では、色々な方面からの支援、協力をいただきました。これに応えるためにも、前向きな姿勢で、これからの農業と地域の発展、そして宮城県の農業の復活に取り組んで参ります。
《事業説明》南三陸農業協同組合 営農生活部 農産園芸課 課長 三浦 昭夫 様
<気仙沼茶豆>
様々なアイデアで、気仙沼茶豆の販売促進を

気仙沼茶豆は、階上地区で平成15年(2003年)ごろから作付けをスタートしました。先日(2013年)9月19日には、キリングループ様と一緒に100名近い関係者をお招きし、大収穫祭を行いました。
もともと、気仙沼茶豆は集団転作によって作付けがスタートしたものです。現在は6ヘクタールほど作り、600万円ほどの売上げを上げておりますが、なかなか思うように伸びておりません。そこで平成28年(2016年)までには作付を10ヘクタール、生産高を2,000万円まで伸ばすことを目標としております。販売先は仙台の市場を含めた地元市場。キリングループ様には全国のキリンシティで、この茶豆を使っていただくなど、ご協力いただいております。
調理例の「茶豆のポタージュ」や「薄皮ごとずんだ」は宮城県農業大学校の学生に開発してもらったものです。このレシピを販売時に配りながら、より美味しく食べてもらおうと思っております。
また、新しいタイプのパッケージも導入しました。こちらの「すぐ食べレンジ」ですが、「水がいらない、ガスがいらない、手間もいらない」という、非常に画期的なパッケージです。たった5分でおいしい茶豆が味わえるということで、大好評となっております。ことし(2013年)も三越さんなどで販売させていただき、評判も上々でした。今後もこういった様々な付加価値を付け、販売促進を強化していきたいと思っています。
<アンジェレ>
津波を被ったエリアでも、トロ箱栽培システムでアンジェレを作る。
次に、ミニトマトの「アンジェレ」についてです。こちらは「うぃずOne」という、トロ箱※を使用した栽培システムを導入して「被災地を農地にしよう」という試みです。
実はこの栽培に挑戦しているのは、非常に大きな津波の被害を受けたエリアです。津波をかぶった土壌は、一反歩もトラクターで耕運するとタイヤがパンクしてしまうという荒廃ぶりで、農作物の栽培が厳しい状況でした。そこで客土などをせず、気軽にチャレンジできるこの手法を採用することにいたしました。具体的にはトロ箱に土を入れ、そこに苗を植え、2か月後に収穫ができるという栽培法です。栽培するアンジェレという品種はJA全農のオリジナルブランドで、糖度が10度以上ある非常に食味の良いミニトマトです。それを完熟した状態で出荷するので、「とてもおいしい」と好評です。
先日の大収穫祭では、気仙沼茶豆とこのアンジェレの試食会を行いました。当日はキリンシティ様から、新メニューのご提案をいただきました。
※トロ箱:発泡スチロール製のプランター(箱)
<春告げやさい>
春告げの国、南三陸

「春告げやさい」は平成19年度(2007年度)に商標登録をしております。事業概要としましては、春告げやさいの生産振興と6次産業化を通じ、地域ブランド確立と農業および地域経済の活性化を図るものです。
震災ではとにかく園芸施設が壊されてしまいました。平成22年度(2010年度)は販売高が4,000万円ほどありました。しかし震災後の平成23年度(2011年度)はそれが600万円ということで、約5分の1以下まで落ち込んでおります。そこで、設備の再構築を今回の事業に加えております。
春告げやさいの産地は海沿いのため、海産物も豊富です。そこで、水産業ともコラボレーションした「春告げ丼」といった商品を作るほか、「春告げスイーツ」といった、野菜を使用した菓子などを作ることも睨んでおります。
将来の構想としましては、JA南三陸管内を「春告げの国」ということで、打ち出していきたいと考えています。具体的には津山から唐桑のあたりまでの南北に77キロメートルという長いエリアです。また気仙沼であれば「つぼみなの里」、本吉であれば「ながいもの里」、志津川であれば「ふきの里」というように里づくりをして、生産の拡大と、生産者のやる気を喚起して頑張りたいと思っております。
春告げやさいは当初5品目しかなかったのですが、平成21年(2009年)に「レインボーカラー」にあやかり7品目としました。店頭がさみしい1月ごろに、きれいな7色で彩ることができるとあって、好評を得ております。この野菜を使ったのが「春告げ丼」です。これは春告げやさい1品目と南三陸の海鮮、そしてJA南三陸管内で採れた米を使うことを定義とした丼です。
春告げやさいのポスターには、気仙沼の地元アイドルグループ「SCK(Sanchi Chokusou Kesennuma) GIRLS」に協力をいただきました。この娘たちも「売れたい」、春告げやさいも「売れたい」、お互い売れたい者同士でタッグを組もうということでやっております。
(7)「JA直売所新設に伴う6次産業化、地域ブランド化サポート体制の構築」
《挨拶》いしのまき農業協同組合 代表理事組合長 石川 壽一 様
防災機能を備えた大型直売所を地域のシンボルに

石巻市は昔から施設園芸が盛んでありましたが、震災によって沿岸部の施設園芸ハウスが毀損・流失してしまいました。その中で営農再開に向け、公共事業を活用し、ハウスはなんとか再建ができました。しかし農業機械がない。こうした状況の中、第1ステージではキリンビール様より施設園芸用トラクター45台を支援していただきました。組合の方々も言い尽くせぬほどの感謝の念を抱いております。本当にありがとうございました。
当JA管内には水田が1万2,000ヘクタールほどありましたが、うち3,800ヘクタールが津波の被害を受けました。また園芸用ハウスは、大小合わせ200ヘクタールほどありましたが、10ヘクタールほど流失しております。また農業用倉庫も10棟流失しました。さらに11ある金融支店のうち、7つの支店が浸水による大きな被害を受けました。そうした中で、地域の復興は想像することさえ難しい状況でした。
しかし現在は各方面から物心両面の支援をいただきながら、事業の展開を図っている最中です。震災前の販売高は120億円あったわけですが、その回復が最大の目標です。現在の水田の作付面積は、震災前の約60%でして、この先3~4年ぐらいかけて100%を目指していきます。一番重症なのは水田が未だ海水の下にあるエリアでして、大小あわせ60ヘクタールほどになります。これらに関しては、国交省や農水省と相談しながら復旧に努めていきたいと思っております。
そうした中、今回の事業計画ですが、来年度(2014年度)は今回の震災における学びを活かし、食料の供給拠点としての防災機能を有した大型直売所を、地域の新しいシンボルとして建設いたします。農家がイキイキと働き、地域の人々が集う交流の場となるように取り組んでまいりたいと考えております。
そして本プロジェクトにおきましては、新直売所の開設準備に併せて「加工品開発部隊」、あるいは「6次産業化連絡協議会」などの組織を創設し、生産者の活動の場を拡大する仕組みを構築したいと思います。
更に、地域産業との連携による商品の開発にも注力したいと思っております。
《事業説明》いしのまき農業協同組合 営農販売部 営農企画課 山内 順一 様
生産者自らが商品開発を行い、販売を行うことができる環境を整備する。

当JAは石巻市、東松島市、女川町をエリアとしておりまして、東日本大震災によって水田3,800ヘクタール、園芸ハウス10ヘクタールが津波の被害に遭いました。これを受け、復興プロジェクトを立ち上げるとともに中期経営計画をまとめ、(1)農地の復旧、(2)農業用の設備・機械の修繕・取得、(3)直売所の建設による販売機会の創出と地産地消の促進、の3つを柱に計画を進めてまいりました。
(1)につきましては、ガレキの撤去、ヘドロの除去、除塩作業など、JAグループを含め、全国の皆さまからの力を借りながら行ってきました。平成24年度(2012年度)の時点で水田1,923ヘクタール、園芸ハウスで7.6ヘクタールの再開を果たすことができました。
(2)に関しては、復興支援事業などにより、設備や資・機材などの導入が進み、徐々に営農再開の目処がつきました。本プロジェクトの第1ステージにおきましても、トラクターの支援をいただき、営農再開の弾みとなりました。心より感謝を申し上げます。
そしてこれから重要な柱となる(3)がスタートいたします。総額4億円を超える事業となり、本プロジェクトの第2ステージにおいても、6次産業化、そして地域活性化への取り組みとして3.200万円のご支援をいただき、現在活動を進めているところであります。直売所建設に関しては、平成27年(2015年)4月の開設に向けて急ピッチで作業を進めています。将来的にはJA直売所を中心とした、6次産業化、地域ブランド化を後押しする体制を確立し、生産者自ら開発した商品を自ら地域内外へ販売することにチャレンジしやすい環境を作ります。
直売所を中心とした事業の全体フレームですが「つながる、集まる、盛り上がる」をコンセプトに、消費者と生産者を結び、地域のコネクターとしての役割を果たしていきます。そのためにまず、JA内部に加工を支援する体制と環境を整備します。加えて農家とのコミュニケーションを深め、地域が一体となって取り組むための組織を作ります。生産者が商品開発に容易に取り組める環境、そして関連機関と連携できる環境を整えることで、農業をベースとした6次産業化への取り組みが、将来に向け自律的に繰り返されることを狙っています。
現在取り組んでいる、商品加工についてご紹介させていただきます。現在商品を加工しているのは「トマトジャム」「キュウリの佃煮」「米粉プリン」「こだわり熟成味噌」の4つです。
「トマトジャム」は木の上で完熟したトマトだけを使い自然の甘さを活かしたジャムです。5月から10月の間だけ収穫し、その時期だけ作ります。季節ごとに変わるトマトの美味しさを感じられるジャムとなっています。
「キュウリの佃煮」ですが、地場産のキュウリは勿論、石巻の加工業者が加工するカツオブシと、塩昆布を使用して作ります。更にJAいしのまき管内でとれた大豆と麦から作る旨口醤油で味付けした石巻づくしの商品となっています。塩分控えめで、シャキシャキとした歯ごたえがビールのお供に最適です。この2点の商品は、石巻市内の授産施設の皆さんにご協力いただき、開発・製造を進めています。
「米粉プリン」はとろっとした食感とミカンのすっきりした香りが、全体の甘さと調和したプリンです。米粉が適度な濃厚感を生み出しています。
最後に「こだわり熟成味噌」です。JAいしのまき産の大豆を使用するのが特徴なのですが、味噌を醸した菌が生きていて、この菌の働きで、日を追うごとに味噌の味が変化するという商品です。
《協力団体挨拶》
全国農業協同組合連合会 宮城県本部 県本部長 千葉 和典 様
被災者と被災地が主役になって進める復旧
私どもも、震災直後から各JAさんと一緒に取り組んでまいりましたが、「復旧の支援」というのはどうあるべきなのか、また誰のためにやるべきなのか、常に悩みながら進めてまいりました。しかし、やはり被災者、被災地が主役となって復旧を推し進めなければならないと感じています。被災地に寄り添い「今、何が欲しいのか」「今後どうするつもりなのか」を捉えながら支援していくのが本当の支援ではないかという想いを胸に携わっております。キリン絆プロジェクトの第1・第2ステージはまさにそれを体現していると感じ、あらためて感謝と敬意を表する次第であります。
《主催者挨拶》
キリン株式会社 執行役員 CSV推進部長 栗原 邦夫
気仙沼茶豆で気付いた食の力

実は本日、感慨深いものがあります。私ごとではございますが震災時、九州で統括本部長の任に就いておりました。そこで震災とほぼ同時に今の職務、震災対策本部の事務局担当となりました。そこで食に携わる企業として、何を応援できるのかと、いろいろ考えました。その際、日本フィランソロピー協会の髙橋理事長からも様々なご提案をいただきました。そこで、やはり「現場に行かなければならない」ということで、先ほどご挨拶をいただいた全農の千葉本部長のところへ伺い、現地のニーズを聞かせていただきました。その後、東京の本社でもJAさんをお訪ねしながら、最終的に第1ステージの農業機械支援が決まったわけです。
しかしこの農業機械の支援に関しても、JAさんの「中古機農業機械メンテナンス」の仕組みがあればこそだったと思います。そして全国のJAの仲間の方々が、被災地への想いを感じて成し得た業ではないかと思っております。
気仙沼茶豆の大収穫祭にことし(2013年)は残念ながら出席はできませんでしたが、昨年参加させていただき、採れたての茶豆をいただきました。「ビールと枝豆」といえば定番の組み合わせですが、こんなに美味しいものだと思ったのは初めてでした。ぜひことしの茶豆も食べたいとキリンシティに行ったのですが、残念ながら提供期間が終了していました。聞いたところでは、キリンシティでも大変好評だったということです。そしてきょう、新たな事業がスタートするということで、非常に感激をしている次第です。
プロジェクト名に「絆」を掲げているからには、人と人を結び、このような場面をどんどん作ることで、被災地復興を、地域の皆さまとともに進めていければと考えております。
今キリンで進めております「選ぼうニッポンのうまい!2013」キャンペーンも、JAさんのお力添えがなければ成立しない企画です。「食」が被災地を、そして人を元気づけると思います。食べているときに怒っている人は少ないと思います。今後もJAさんと共に食を通じ、笑顔と元気をますます生み出せるような活動にしたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
4. 懇親会
日時:平成25年(2013年)10月15日(火)15:50~17:10
会場:キリンビール株式会社 仙台工場内 ピアポート
贈呈式の後、懇親会が行われた。レストランはビュッフェ形式で、受贈者が関係する農産物をふんだんに使った色とりどりの料理やスイーツが並ぶ。キリンビールで乾杯。乾杯と同時に、上質の料理と飲み物が醸し出す時間がゆっくりと流れ出した。
《挨拶》キリンビール株式会社 仙台工場 工場長 横田 乃里也
事業説明には、復興への意思が込められていた。

震災から2年7か月経ちましたが、大変な被害を受けた中、事業化に向けた立派な計画書を作られていて、大変感銘を受けました。この仙台工場も地震と津波の被害を受け、8カ月ほどで復旧しましたが、それ以降さまざまなキャンペーンで売上から1本1円を頂戴し、微力ではありますが東北の農業復興の支援とさせていただいております。「キリン絆プロジェクト」を、第1・第2ステージと発展させることができましたのも、皆さまのご尽力があってこそだと思っております。
話は変わりますが、ビール業界も昨今は厳しく、人口も減少しておりますし、高齢化も進み、売り場では流通が大変強くなっていて、時々「どうしたらいいだろう」と悩むことがあります。ビール業界も、お客さまの期待に沿った商品をしっかり作り、最適なところで売っていくという意味では、皆さまの事業と同じです。
今回の事業計画では、どのプレゼンテーションでも6次産業化やブランド創造という根本がしっかり押さえられていて、復興への強い思いを感じた次第です。
▲ここまで
(3)「山元町と蔵王町による気候や土壌の差異を活かした高級西洋野菜の産地化」
株式会社GFC 代表 曽根 孝治 様
アニメ制作会社と被災農家のタッグが、山元町と蔵王町の連携を紡ぎ出す。


震災被害と、生産者の高齢化から農業の担い手不足が深刻になる中、商品開発とマーケティングが得意な白石市のアニメ制作会社と、被災した若手農業者がタッグを組んで、農業のさまざまな可能性に挑戦するための法人を設立しました。
沿岸部の山元町と、山間部の蔵王町の気候特性を活かし、イタリアの高級野菜であるトレビスやトレビーゾ、ちぢみホウレンソウなど付加価値の高い品種を産地リレーさせながら生産加工販売を行います。販路としては、外食中食メーカーや小売、地元の直売所、ウェブ上での販売などで、商品の付加価値に合わせて展開をしていきます。
また、コンテンツの地産地消を目指し、タウン誌「蔵王ことのほか通信」の発行など蔵王町の農業や観光をPRし魅力を伝えていきます。
(4)「菌床椎茸栽培事業の復興による地域活性化と南三陸の商業団体との連携による産業再生」
株式会社椎彩杜 常務取締役 髙橋 浩幸 様
南三陸名産の贈答品を創る。


震災では、沿岸から3キロ地点にあった加工場が津波で被災しました。施設の復旧に留まらず、新しい収益体質の確立を目指します。地域に先駆けて復興することで、再開を躊躇している同業の一次産業者を牽引したいと思っております。事業内容は、椎茸かりんとうを自社製造して、さまざまなバリエーションを作成し、さらに海産物と椎茸を組み合わせた商品開発を行い、贈答品セットなどの南三陸名産を新たに立ち上げます。
自社製造の加工品を全国に発信することで、「南三陸といえば海とシイタケ」といわれるようになるよう全力を尽くします。障がいのある方や外国人なども積極的に雇用して地域への奉仕と還元ができる企業に成長したいと思っています。
ご支援により加工場を新設することによって椎茸かりんとうを自社製造できるようになれば、さらにバリエーションを増やして販路拡大を目指したいと思っています。また南三陸直売所「みなさん館」の漁業者や女川町の被災した加工業者と連携し、椎茸プラス海産物の商品化などの新商品発売も予定しています。
(5)「復興の桑プロジェクト」
農業組合法人Champs du mûrier 菊地 柳司 様
塩害に強く、成長の早い桑に地域の復興を託す。


津波被害を受けた農地に7,000本の桑の木を植え、葉を粉末化して健康茶として販売します。桑は非常に高い独自の有用成分があることで知られています。6次産業化を目指し、桑の葉パウダーを用いた食品・飲料やサプリメント、実を用いたジャムなど、国内だけでなく海外にも販路を広げ幅広い消費者をターゲットにした商品を作りたいと思っています。畑の再生だけでなく地域の雇用の場を作り出し、地域コミュニティの再生と活性化を目指します。将来的には桑畑の近くに自然エネルギー利用した販売施設を作り、カフェや地元の農産物などを販売したいと思っています。万が一の場合に地域住民が避難できる高床式の建物を建設する予定です。
津波で被災した土地に昨年(2012年)試験的に75本の桑の苗を植えました。ことし(2013年)から7,000本を植え、法人化を果たし本格的に稼働します。被災農地を活かし、地域の雇用を生んで、健康に役立つ桑の商品を広め、地域を元気にしていきたいと思っています。
(6)「宮城県おおさき・ふゆみずたんぼササニシキプロジェクト」
伸萠ふゆみずたんぼ生産組合 事務局 西沢 誠弘 様
渡り鳥と共生する農業で風評被害の払拭に貢献する。


大崎市内田尻地区で2003年より取り組んできた「ふゆみずたんぼ」(冬期湛水田)によるササニシキの有機栽培、渡り鳥など生き物との共生農業による稲作を、地元ならびに東北沿岸部や原発事故の風評被害のある被災地域へ普及させることに務めます。ふゆみずたんぼの物語が多くの方に認知されることによって、“生き物と共生する、健康に良いふゆみずたんぼのササニシキ”としてブランド化を進めます。関連する商品の開発、安定した販路の確保・拡大を行い、事業の継続性を確保する組織体制を整えながら、後継者を獲得し育成していきたいと思っています。
これまでも、津波による塩害のあった陸前高田市や南三陸町の田をふゆみずたんぼにして除塩をすすめ、田植をサポートしました。渡り鳥と共生する農村らしい景観を維持する共生農業法としてPRを行うために、ドイツで毎年開催されている世界最大規模のオーガニックフェアへの出展も考えています。
(7)「亘理地域で生産から販売までが完結するブランド『ワタリアントマト』の立ち上げ」
農業組合法人マイファーム亘理協同組合 組合長 千葉 義昭 様
塩害に負けないトマトづくり


塩害地域を再び栽培可能な状態にするため、土壌改良や耐塩性のある加工トマトを栽培しています。耕作不可能といわれた塩害農地で、株式会社マイファームが開発した土壌改良剤で糖度11以上の美味しいトマトができました。日本全国からボランティアの方々が集まり収穫作業などをしています。
現在は震災からの復旧に留まらず、地域の復興を目指して、トマトの自社加工に着手しました。ジュース、ケチャップに続き、ピューレを生産販売し、「亘理のトマト」が認知され始めています。卸売りだけでなく、直売用の店舗を出して小売への展開を視野に入れていきます。2015年には生産から販売まで一貫した体制を定着させ、6次産業化することでブランド化を進め、地域振興の成功モデルとして社会的に認知される存在になることを目指します。
(8)「『鹿島台トマト』の全国展開&海外展開に向けたベースづくり~マルセン式トマト6次産業化プロジェクト~」
有限会社マルセンファーム 代表取締役 千葉 卓也 様
美味なるトマトを基礎に置いた6次化と、ブランド確立


鹿島台トマトを全国的なブランドにするため、希少種の玉光デリシャスと高糖度中玉トマトのフルティカ、ならびにジュースなどの加工品でギフト市場や飲食店市場を開拓します。今回の事業を通じて、商品ラインナップの充実と販路拡大を行い、2016~2018年に計画している「温室栽培の拡張と直売所設置」につなげていきたいと考えています。
震災以前から、高齢化が進み農業人口が減っていく中、鹿島台トマトを全国的なブランドに育てていくことで若い農業経営者を育て、地域農業を盛り上げて行きたいと思っています。また高齢の農家の方も長く続けられるような生産物、栽培法など仕組みを考えて行きたいですね。今回の支援は主にトマトの品質向上や海外展開も含め新しい販路開拓に役立てます。
(9)「リアス唐桑 海と大地の恵みプロジェクト」
リアス唐桑 食と地域の絆づくり協議会 会長 千葉 貫二 様
大唐桑が世代と世代をつなぎ、地域の活力を生み出す。


平成15(2003)、16(2004)年に町名にちなんだ特産品を育てようと、耕作放棄地に植栽した「大唐桑」を、新しい町の基幹産業にするために地域ブランドとして育成します。生産性の向上のほか、「桑茶」「桑パウダー」「大唐桑の実ジャム」、また地場海産品と連携した商品「桑塩」など加工品も手掛け、生産、加工、販売を一元化することで地域内の雇用、所得を創出し、地域力をベースアップしていきます。海と大地の恵みという地域資源を有効活用することでブランド化を目指し、地域活性化につなげます。
本事業では、高齢者の持つ経験や知恵を生かしながら、地域のNPOの若者たちが地域のネットワーク構築に一役買ってくれており、地域内でブラッシュアップしながら時代のニーズに合ったものづくりに励んでいます。現在は都市部への販路拡大を目指し、軽量化を進め、ラベルデザイン、価格などを見直し、新パッケージを作成しています。
(10)「被災して故郷を失った井土浜・仙台東部地区の農業再生の仕組み作り」
0有限会社六郷アズーリファーム 代表取締役 菊地 守 様
ミニライスセンターが可能にする自主流通米で、井土浜ブランドを創る。


震災により「おらほの米」としての自主流通ができなくなった井土浜地区の農業者の忸怩たる思いを汲み取り、地域にミニライスセンターを建設して自主流通できる仕組みを再構築します。井土浜産の野菜はレタスやホウレンソウ、トマト、キュウリなど100アイテムありますが、共同出荷できる体制を整えることで、地域連携を強化し井土浜ブランドを作り上げます。
今後は、共同の加工設備を建設し、おこわや漬物など加工品の製造体制と販売体制を作ることで、小規模農家の経営を助けます。また井土浜地区と同じように、津波で被害を受けた荒浜、藤塚などにもライスセンターへの受け入れを拡大し、将来的には地域を越えて仙台東部地区復興に貢献して行きたいと思っています。
4. 懇親会

贈呈式終了後、キリンビール株式会社仙台工場内のレストラン「ビアポート仙台」に会場を移し懇親会が行われた。受贈者が持ち寄った生産物を用いた弁当を使い、キリンビールで談笑。お互いの交流を深めるキッカケになった。トマトジュースにキリンビールを注いだ「レッドアイ」が即興で作られ、宴席が盛り上がった。
《挨拶》
キリンビール株式会社 仙台工場 工場長 横田 乃理也
震災後の将来を見通せない中、一歩一歩を歩まれ、立派な事業計画を立てられて、特に復旧だけでなく新しい農業を切り開いて行こうとする皆さまの思いを強く感じました。
キリンビール仙台工場も、2011年11月2日に出荷を再開できまして、そのとき最初に作ったのは遠野産ホップを使った「一番搾り とれたてホップ生ビール」です。その年からこのビールの売り上げの1本につき1円がキリン絆プロジェクトの資金提供につながっています。私たちの製品が微力ながらも回り回って皆さまの力になれることを光栄に感じています。
私どももビールづくりをしながら、お客さまが元気になり、あるいは食卓、社会が潤いのあるものになっていけばと思っていますが、皆さまも思いは同じだと感じました。きょうご参加の皆さまのご健康と、プロジェクトの発展をお祈りしております。
ササニシキ系の米でつくったおにぎりの
食べ較べ
4種類の米を形の違うおにぎりにしたのは、レストランのアイデア。頑張る農家への協力は誰も惜しまない。
椎茸かりんとう
このかりんとうは、ビールによく合う。
沿岸3キロにあった加工場を津波で失ったが、今また自前の加工場を建設しようとしている。再開を躊躇する事業者が多い中、この挑戦は試金石になる。
大唐桑茶
桑茶の喫茶は昔から続く庶民的な健康法である。因みに、大唐桑という品種は、公的機関である某研究所が品種改良により生みだした品種。カルシウム、鉄、亜鉛などのミネラル成分が多量に含まれた高い健康性能をもつ。伝統の知恵と若い感性の化学反応が大唐桑に新しい生命を吹き込む。
2013.10.28「宮城県10農業生産者団体贈呈式」おわり