宮城県10農業生産者団体贈呈式
宮城県10農業生産者団体 贈呈式
日時:平成25年(2013年)10月28日(月)11:00~12:50
会場:キリンビール株式会社 仙台工場
 
 キリンビール株式会社仙台工場は、驚くべき秩序を保ちながら震災に耐え、8か月で復旧を成し遂げた、謂わば復興の聖地である。この工場で、一般公募で選考された宮城県内の10農業生産者団体に対する贈呈式が執り行われた。
 明確なコンセプトを持った生産物、加工品を擁する農業者がそれぞれの事業計画を語り、復興への決意を表明した。
1. 主催者挨拶
 
キリンビールマーケティング株式会社 宮城支社長 小西 弘晃
 
伊達政宗の命を受け支倉常長は1613年のきょう、石巻を出発した。きょうは正に出発の日である。
 
 第1次産業の復興なくして、宮城県の経済の再生はありません。宮城県は、「食材王国みやぎ」ですが、第1次産業に携わる方々のご努力で県もそうしたPRができるわけです。第1次産業の一日でも早い復興と更なる付加価値の向上を目指し、ぜひキリングループとして、手を携え進んでいただきたいと思います。
 きょう展示されている商品を拝見すると、実に美味しそうで、すぐに食べたくなるほどですが、後ほどのランチを楽しみにしています。キリングループは、自然と食を見つめるものづくりで、新しい食と健康の喜びに貢献します。
 きょうは400年前に支倉常長の遣欧使節が石巻を出発した日だそうです。ぜひ、きょうが新しい宮城の農業の船出となりますように心から祈念しまして挨拶とさせていただきます。
公益社団法人日本フィランソロピー協会 リーダー 桑名 隆滋
 思えば1年前、皆様におかれましては尋常でない、大変な時期に、「事業計画書の概要」、それから「事業計画書の詳細」を立て続けて書き込んでいただき、更に個別面談というプロセスを経て、きょうここにご参集いただいております。
 ご自身の生活と、近隣コミュニティのことが非常に大変だった時期に、よくぞあれだけの詳細な計画書を、精神を落ち着け、秩序立てて書いてくださったことか、そのご努力に心から敬意を表します。皆様が、東北の地元で6次産業化、地域ブランド再生に取り組んでいらっしゃる姿は、間違いなく地元の方々の希望だと思います。
2. 目録贈呈
 
《内容説明》
キリン株式会社 CSV推進部 キリン絆プロジェクト リーダー 野田 哲也
 農業の復興支援は、復興支援第1ステージとして、震災後から2012年まで、震災により被害を受けた岩手、宮城、福島の農家の皆さまに、稼働していない中古農業機械のリユースを行うなど営農再開を支援してきました。農業機械支援金額は5億2,100万円、386台が購入されました。
 続いて、2013年からは被災地のさらなる農業復興に向け、復興支援第2ステージとして、農産物のブランド育成支援、6次産業化に向けた販路拡大支援を行っております。
 今回の助成は、2013年1月から2月に実施した公募により選考された宮城県10農業生産者団体に対してなされ、それぞれの復興プロジェクトによる農産物や商品のブランド育成、販路拡大等に適用されます。
<宮城県10農業生産者団体 復興プロジェクト支援金額>
石巻稲作研究会
21,100,000円
岩沼園芸研究会
29,500,000円
株式会社 GFC
21,000,000円
株式会社 椎彩社
12,500,000円
農事組合法人 Champs du mûrier (シャン・ドゥ・ミュリエ)
5,500,000円
伸萌ふゆみずたんぼ生産組合
12,500,000円
農事組合法人マイファーム亘理協同組合
30,000,000円
有限会社マルセンファーム
15,600,000円
リアス唐桑 食と地域の絆づくり協議会
7,300,000円
有限会社 六郷アズーリファーム
10,000,000円
宮城県 一般公募助成額合計:
165,000,000円
 宮城県では県内の5つのJA(仙台・名取岩沼・みやぎ亘理・南三陸・いしのまき)に対し、総額1億8,200万円の助成を行い、今回の公募と合わせた支援金額は、3億4,700万円。岩手、宮城、福島の3県を合わせると総額8億円の助成を行う予定です。
贈呈者:キリンビールマーケティング株式会社 宮城支社長 小西 弘晃
    公益社団法人日本フィランソロピー協会 リーダー 桑名 隆滋
 
3. 事業説明
 
(1)「地域ブランド米創造及び加工・販売と農業体験プログラムを通じた高付加価値化」
   石巻稲作研究会 会長 太田 俊治 様
 
農業の魅力的なライフスタイルを発信していく。
 
 震災の大津波で研究会の会員の農地の半分以上が被災しました。当地域は北上川最下流域右岸の海抜が低い地域のうえ、地盤沈下により、塩害の被害も大きく受けました。私たちはこの震災を契機に石巻の第1次産業を見直し、生産品の品質や付加価値を高め、また加工業者や販売者、健康事業者、教育事業者、メディアなどとつながった取り組みを行うことで、地域経済の活性化と合わせた復興に貢献したいと考えました。
 具体的には、無肥料・自然栽培米を素材とした高付加価値の商品開発や、「トラベルレストラン」として生産現場の風土を体験するツアーの実施など、高い競争力のある商品としての「農」、さらには魅力的なライフスタイルとしての「農」を発信していきます。
(2)「伝統野菜『岩沼(玉浦)白菜』の地域ブランド化で耕作放棄地解消と循環型農業での雇用創設」
   岩沼園芸研究会 会長 八巻 文彦 様
 
岩沼には塩害に強い伝統野菜の白菜があった。
 
 震災で土地や農機具を失った農業者が「今できる農業とは何か」を考え、塩害に強い白菜に着目しました。岩沼は「仙台白菜」発祥の地であり、長年栽培し続けた高齢農家も多く、若手後継者育成と技術の継承も期待できます。「岩沼白菜」を地域ブランド化し、加工品の販売にも取り組むことで耕作放棄地を解消し、農業以外の雇用も生み出しながら安定した所得を確保することで、岩沼地域の農業復興を目指します。
 ご支援によって農業機械や施設も整い、復興に向けての態勢が整ってきました。6次産業化に向けて、地元レストランなどの協力も得ながら「岩沼白菜のラザニア」や、昔から地元で使われていた漬物の伝統的なタレなどの商品化を試みています。
(3)「山元町と蔵王町による気候や土壌の差異を活かした高級西洋野菜の産地化」
   株式会社GFC 代表 曽根 孝治 様
 
アニメ制作会社と被災農家のタッグが、山元町と蔵王町の連携を紡ぎ出す。
 
 震災被害と、生産者の高齢化から農業の担い手不足が深刻になる中、商品開発とマーケティングが得意な白石市のアニメ制作会社と、被災した若手農業者がタッグを組んで、農業のさまざまな可能性に挑戦するための法人を設立しました。
 沿岸部の山元町と、山間部の蔵王町の気候特性を活かし、イタリアの高級野菜であるトレビスやトレビーゾ、ちぢみホウレンソウなど付加価値の高い品種を産地リレーさせながら生産加工販売を行います。販路としては、外食中食メーカーや小売、地元の直売所、ウェブ上での販売などで、商品の付加価値に合わせて展開をしていきます。
 また、コンテンツの地産地消を目指し、タウン誌「蔵王ことのほか通信」の発行など蔵王町の農業や観光をPRし魅力を伝えていきます。
(4)「菌床椎茸栽培事業の復興による地域活性化と南三陸の商業団体との連携による産業再生」
   株式会社椎彩杜 常務取締役 髙橋 浩幸 様
 
南三陸名産の贈答品を創る。
 
 震災では、沿岸から3キロ地点にあった加工場が津波で被災しました。施設の復旧に留まらず、新しい収益体質の確立を目指します。地域に先駆けて復興することで、再開を躊躇している同業の一次産業者を牽引したいと思っております。事業内容は、椎茸かりんとうを自社製造して、さまざまなバリエーションを作成し、さらに海産物と椎茸を組み合わせた商品開発を行い、贈答品セットなどの南三陸名産を新たに立ち上げます。
 自社製造の加工品を全国に発信することで、「南三陸といえば海とシイタケ」といわれるようになるよう全力を尽くします。障がいのある方や外国人なども積極的に雇用して地域への奉仕と還元ができる企業に成長したいと思っています。
 ご支援により加工場を新設することによって椎茸かりんとうを自社製造できるようになれば、さらにバリエーションを増やして販路拡大を目指したいと思っています。また南三陸直売所「みなさん館」の漁業者や女川町の被災した加工業者と連携し、椎茸プラス海産物の商品化などの新商品発売も予定しています。
(5)「復興の桑プロジェクト」
   農業組合法人Champs du mûrier 菊地 柳司 様
 
塩害に強く、成長の早い桑に地域の復興を託す。
 
 津波被害を受けた農地に7,000本の桑の木を植え、葉を粉末化して健康茶として販売します。桑は非常に高い独自の有用成分があることで知られています。6次産業化を目指し、桑の葉パウダーを用いた食品・飲料やサプリメント、実を用いたジャムなど、国内だけでなく海外にも販路を広げ幅広い消費者をターゲットにした商品を作りたいと思っています。畑の再生だけでなく地域の雇用の場を作り出し、地域コミュニティの再生と活性化を目指します。将来的には桑畑の近くに自然エネルギー利用した販売施設を作り、カフェや地元の農産物などを販売したいと思っています。万が一の場合に地域住民が避難できる高床式の建物を建設する予定です。
 津波で被災した土地に昨年(2012年)試験的に75本の桑の苗を植えました。ことし(2013年)から7,000本を植え、法人化を果たし本格的に稼働します。被災農地を活かし、地域の雇用を生んで、健康に役立つ桑の商品を広め、地域を元気にしていきたいと思っています。
(6)「宮城県おおさき・ふゆみずたんぼササニシキプロジェクト」
   伸萠ふゆみずたんぼ生産組合 事務局 西沢 誠弘 様
 
渡り鳥と共生する農業で風評被害の払拭に貢献する。
 
 大崎市内田尻地区で2003年より取り組んできた「ふゆみずたんぼ」(冬期湛水田)によるササニシキの有機栽培、渡り鳥など生き物との共生農業による稲作を、地元ならびに東北沿岸部や原発事故の風評被害のある被災地域へ普及させることに務めます。ふゆみずたんぼの物語が多くの方に認知されることによって、“生き物と共生する、健康に良いふゆみずたんぼのササニシキ”としてブランド化を進めます。関連する商品の開発、安定した販路の確保・拡大を行い、事業の継続性を確保する組織体制を整えながら、後継者を獲得し育成していきたいと思っています。
 これまでも、津波による塩害のあった陸前高田市や南三陸町の田をふゆみずたんぼにして除塩をすすめ、田植をサポートしました。渡り鳥と共生する農村らしい景観を維持する共生農業法としてPRを行うために、ドイツで毎年開催されている世界最大規模のオーガニックフェアへの出展も考えています。
(7)「亘理地域で生産から販売までが完結するブランド『ワタリアントマト』の立ち上げ」
   農業組合法人マイファーム亘理協同組合 組合長 千葉 義昭 様
 
塩害に負けないトマトづくり
 
 塩害地域を再び栽培可能な状態にするため、土壌改良や耐塩性のある加工トマトを栽培しています。耕作不可能といわれた塩害農地で、株式会社マイファームが開発した土壌改良剤で糖度11以上の美味しいトマトができました。日本全国からボランティアの方々が集まり収穫作業などをしています。
 現在は震災からの復旧に留まらず、地域の復興を目指して、トマトの自社加工に着手しました。ジュース、ケチャップに続き、ピューレを生産販売し、「亘理のトマト」が認知され始めています。卸売りだけでなく、直売用の店舗を出して小売への展開を視野に入れていきます。2015年には生産から販売まで一貫した体制を定着させ、6次産業化することでブランド化を進め、地域振興の成功モデルとして社会的に認知される存在になることを目指します。
(8)「『鹿島台トマト』の全国展開&海外展開に向けたベースづくり~マルセン式トマト6次産業化プロジェクト~」
   有限会社マルセンファーム 代表取締役 千葉 卓也 様
 
美味なるトマトを基礎に置いた6次化と、ブランド確立
 
 鹿島台トマトを全国的なブランドにするため、希少種の玉光デリシャスと高糖度中玉トマトのフルティカ、ならびにジュースなどの加工品でギフト市場や飲食店市場を開拓します。今回の事業を通じて、商品ラインナップの充実と販路拡大を行い、2016~2018年に計画している「温室栽培の拡張と直売所設置」につなげていきたいと考えています。
 震災以前から、高齢化が進み農業人口が減っていく中、鹿島台トマトを全国的なブランドに育てていくことで若い農業経営者を育て、地域農業を盛り上げて行きたいと思っています。また高齢の農家の方も長く続けられるような生産物、栽培法など仕組みを考えて行きたいですね。今回の支援は主にトマトの品質向上や海外展開も含め新しい販路開拓に役立てます。
(9)「リアス唐桑 海と大地の恵みプロジェクト」
   リアス唐桑 食と地域の絆づくり協議会 会長 千葉 貫二 様
 
大唐桑が世代と世代をつなぎ、地域の活力を生み出す。
 
 平成15(2003)、16(2004)年に町名にちなんだ特産品を育てようと、耕作放棄地に植栽した「大唐桑」を、新しい町の基幹産業にするために地域ブランドとして育成します。生産性の向上のほか、「桑茶」「桑パウダー」「大唐桑の実ジャム」、また地場海産品と連携した商品「桑塩」など加工品も手掛け、生産、加工、販売を一元化することで地域内の雇用、所得を創出し、地域力をベースアップしていきます。海と大地の恵みという地域資源を有効活用することでブランド化を目指し、地域活性化につなげます。
 本事業では、高齢者の持つ経験や知恵を生かしながら、地域のNPOの若者たちが地域のネットワーク構築に一役買ってくれており、地域内でブラッシュアップしながら時代のニーズに合ったものづくりに励んでいます。現在は都市部への販路拡大を目指し、軽量化を進め、ラベルデザイン、価格などを見直し、新パッケージを作成しています。
(10)「被災して故郷を失った井土浜・仙台東部地区の農業再生の仕組み作り」
   0有限会社六郷アズーリファーム 代表取締役 菊地 守 様
 
ミニライスセンターが可能にする自主流通米で、井土浜ブランドを創る。
 
 震災により「おらほの米」としての自主流通ができなくなった井土浜地区の農業者の忸怩たる思いを汲み取り、地域にミニライスセンターを建設して自主流通できる仕組みを再構築します。井土浜産の野菜はレタスやホウレンソウ、トマト、キュウリなど100アイテムありますが、共同出荷できる体制を整えることで、地域連携を強化し井土浜ブランドを作り上げます。
 今後は、共同の加工設備を建設し、おこわや漬物など加工品の製造体制と販売体制を作ることで、小規模農家の経営を助けます。また井土浜地区と同じように、津波で被害を受けた荒浜、藤塚などにもライスセンターへの受け入れを拡大し、将来的には地域を越えて仙台東部地区復興に貢献して行きたいと思っています。
 
4. 懇親会
贈呈式終了後、キリンビール株式会社仙台工場内のレストラン「ビアポート仙台」に会場を移し懇親会が行われた。受贈者が持ち寄った生産物を用いた弁当を使い、キリンビールで談笑。お互いの交流を深めるキッカケになった。トマトジュースにキリンビールを注いだ「レッドアイ」が即興で作られ、宴席が盛り上がった。
《挨拶》
キリンビール株式会社 仙台工場 工場長 横田 乃理也
 震災後の将来を見通せない中、一歩一歩を歩まれ、立派な事業計画を立てられて、特に復旧だけでなく新しい農業を切り開いて行こうとする皆さまの思いを強く感じました。
 キリンビール仙台工場も、2011年11月2日に出荷を再開できまして、そのとき最初に作ったのは遠野産ホップを使った「一番搾り とれたてホップ生ビール」です。その年からこのビールの売り上げの1本につき1円がキリン絆プロジェクトの資金提供につながっています。私たちの製品が微力ながらも回り回って皆さまの力になれることを光栄に感じています。
 私どももビールづくりをしながら、お客さまが元気になり、あるいは食卓、社会が潤いのあるものになっていけばと思っていますが、皆さまも思いは同じだと感じました。きょうご参加の皆さまのご健康と、プロジェクトの発展をお祈りしております。
 
ササニシキ系の米でつくったおにぎりの
食べ較べ
 
4種類の米を形の違うおにぎりにしたのは、レストランのアイデア。頑張る農家への協力は誰も惜しまない。
椎茸かりんとう
 
このかりんとうは、ビールによく合う。
沿岸3キロにあった加工場を津波で失ったが、今また自前の加工場を建設しようとしている。再開を躊躇する事業者が多い中、この挑戦は試金石になる。
大唐桑茶
 
桑茶の喫茶は昔から続く庶民的な健康法である。因みに、大唐桑という品種は、公的機関である某研究所が品種改良により生みだした品種。カルシウム、鉄、亜鉛などのミネラル成分が多量に含まれた高い健康性能をもつ。伝統の知恵と若い感性の化学反応が大唐桑に新しい生命を吹き込む。
2013.10.28「宮城県10農業生産者団体贈呈式」おわり

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