福島県6農業生産者団体贈呈式
福島県6農業生産者団体贈呈式
日時:平成25年(2013年)11月28日(木)12:00~13:30
会場:ビッグパレットふくしま 4階プレゼンテーションルーム
 
 安達太良山と猪苗代湖と郡山駅を直線で結ぶと、ちょうど正三角形ができる。そのようなロケーションの郡山駅から車で約10分のところにある「ふくしまビッグパレット」に会場を借りて、贈呈式が行われた。この施設は、震災後2,500人もの避難者を受け入れたそうだ。そしてこの日、この施設が、福島県内の6つの農業生産者団体の新たな出発の節目の場所になった。
主催者挨拶
 
キリンビールマーケティング株式会社 福島支社長 椎屋 直孝
 
生産者と一緒に食卓の笑顔づくりに取り組む。
 
 本日、福島県の6つの生産団体に新たなお役立ちができると喜んでおります。
 弊社としましては、商品をただ販売するだけでなく、生産の現場から皆さまの食卓までのつながりを大事にしたいと思っております。復興応援キリン絆プロジェクト第2ステージでは、たくさんの方の笑顔のために進めていることも多数ございますが、本日このような形で6つの団体の皆様が新たなステージに向かうための一端を担うことが出来たことを大変喜んでおります。
 最終的には、福島県民の皆様が震災前の生活を取り戻すことができる、生産者の皆様の販売される商品が食卓の笑顔づくりになる、そのきっかけになることを今後も続けていくことが大事な役目と思っております。このような形で皆さまにお会いできること、これからも協力体制をとれることをうれしく思っております。
 キリングループとしましては、6次化の取組みの一つとして、福島市周辺で採れた和梨を原料に用いて期間限定の新製品「氷結和梨」をこの(2013年)11月5日に発売し、商品を通じて食卓の笑顔づくりに寄与することができました。
公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 髙橋 陽子
 
仕事に取り組まれる皆様の姿が、子どもたちを育てる。
 
 福島県は「課題先進県」だと思います。その課題解決のために、6次産業化、地域ブランディングを掲げた復興応援キリン絆プロジェクトのもと、課題を解決し、新しい価値を創っていく、そういう意味でも皆さんはリーダーだと思います。ぜひ外の力も入れていただきながら、力を発揮して行ってください。キリン絆プロジェクトでつながった皆さん同士のネットワークの強化、情報交換、力の出し合いもぜひやって頂きたいと思っております。
 先日、福島市で保育園の子どもを持つお母さんにお会いしました。そこでお母さん方に、今何が欲しいかと聞いたときに、「落ち葉を売ってください。」という答えが返ってきました。子どもたちに、あのパリパリした感触の落ち葉を踏んだり、撒いて遊んだり、焼き芋を作ったりといった体験をさせたいと言っていました。今は落ち葉がきれいな時期ですが、5歳以下の子どもたちは、落ち葉を触ったことも踏んだこともないのです。
 子どもたちは、次の世代の主役です。子どもたちを、故郷に誇りを持った将来のリーダーに育てるために、皆様自身が今のリーダーになっていただきたいと思います。大人がこんなに頑張っている、こんなに力を出している、全国から手を差し伸べられ、そしてこちらからも差し出している。その姿を子どもたちに見せてあげてください。
 同世代での絆、次世代への絆、それを担っていただいている皆さん。その仲間に入れていただいて、ささやかながらお手伝いができている私どもは、この仕事を本当にありがたく思っておりますし、誇りに思っております。
目録贈呈
 
内容説明
キリン株式会社 CSV推進部 キリン絆プロジェクト リーダー 野田 哲也
 農業の復興支援は、復興支援第1ステージとして、震災後から2012年まで、震災により被害を受けた岩手、宮城、福島の農家の皆さまに、稼働していない中古農業機械のリユースを行うなど営農再開を支援してきました。その結果、農業機械支援金額は5億2,100万円、農業機械は386台が購入されました。
 続いて、2013年度からは被災地のさらなる農業復興に向け、復興支援第2ステージとして、農産物のブランド育成支援、6次産業化に向けた販路拡大支援を行っております。
 今回は2013年1月から2月に実施した公募により選考された、福島県の6農業生産者団体に対し助成を行うもので、それぞれの復興プロジェクトにおいて、農作物や加工品のブランドの育成、販路拡大、情報発信などに活用されます。
 今回の福島県6農業生産者団体様の助成金額は、次のとおりです。
いわきおてんとSUN企業組合
22,500,000円
大野農園株式会社
5,000,000円
富岡町アグリ環境協議会
20,000,000円
フクベリー合同会社
15,600,000円
緑の風ネットワーク実行委員会
18,000,000円
南相馬農業振興協議会
20,000,000円
福島県 一般公募助成額合計:
101,100,000円
 なお、福島県では、別途、県内のJA3グループに対し、総額1億963万5,000円の助成を行っており、今回の公募分助成と合わせて、支援総額は、2億1,073万5,000円となります。また、被災3県では、総額約8億円となる予定です。
贈呈者:キリンビールマーケティング株式会社 福島支社長 椎屋 直孝
    公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 髙橋 陽子
 
事業説明
 
「ふくしまオーガニックコットン」
いわきおてんとSUN企業組合 代表理事 吉田 恵美子 様
 
オーガニックコットンで紡ぎ出された人形やTシャツが人と人の絆を結んで行く。
 
 いわきでは震災による津波被害、原発事故、風評被害などで農業が困窮し、耕作放棄地が拡がっています。今回の事業は、オーガニックコットンの栽培と6次産業化に取り組むことで活路を見出したいと、震災前から地域の中で活動していた3つのNPO(オーガニックコットン、スタディーツアー、コミュニティ電力)が一緒になって立ち上げたプロジェクトです。
 原発に苦しむ福島であるからこそ環境に配慮したオーガニック志向で農業を再生したいと思っています。オーガニックコットンの市場は世界的にも伸びており、将来的には県内の他市町村への普及を図っていきたいと思っています。またオーガニックコットンの商品(人形・Tシャツ、タオルなど)を製造し、持続可能なマーケットを開拓することで新たな産業を生み出すことを目標に市民参加型の実践をして行きます。
 また、このプロジェクトには、農業の復興だけでなく、いわき市に避難している24,000人の避難住民と地域住民、首都圏などからのボランティアがこの事業を通して、つながりながら、皆で復興に向かって行こうという願いが込められています。ご支援によって、プロジェクトを地域に定着させていくための大きな一歩を進めることができました。
「営農による農地の除塩・除染と収穫物の資源化・エネルギー化という新たな6次産業化」
富岡町アグリ環境協議会 会長 岡田 久典 様
 
避難先はバラバラでも、この仕事を通じ、心が一つになる。
 
 富岡町は昼夜を通して帰郷がままならない状態です。かつて米どころと呼ばれた地域の失われた農地を少しでも復活・活用し、米などのエネルギー生産に適した農産物を栽培して、エタノールやBDF(Bio Diesel Fuel)などエネルギー商品を生産販売することで、郷土を回復する一歩につなげていきます。将来はバイオマス活用の世界的なモデルを構築していきます。
 今回のご支援では、農地を使い続けたい、農業を続けたいという生産者の思いを支えていただきました。除染・除草も大幅に遅れる中、この支援がどれだけ私たちの力になったことでしょう。避難先もバラバラですが、燃料生産のエキスパートを目指し、心をひとつにして研鑚に励みます。
富岡ふるさと生産組合 渡辺 康男 様
 キリン絆プロジェクトで、離れ離れになった農家の仲間や大学、行政など関係者との絆が構築されつつあるのを実感しております。農地、農業の再生再開なくして町の復興はないと思います。試行錯誤を繰り返す中でも助成金を有効に活用したいと思います。
「新栽培法で、より大きく糖度が高いイチゴを南相馬の新ブランドにするイチゴ事業」
フクベリー合同会社 顧問 阿部 和義 様
 
仮設住宅の菜園でのいちごが大変おいしく、この感動が今回の事業につながりました。
 
 このプロジェクトは、仮設住宅の住民の健康のために、仮設住宅の敷地の中に1,000坪の農園を作ったことから始まりました。2013年に収穫したいちごは初めての栽培にもかかわらず、非常に美味しいものができたことが大きな感動になり、本格的に営農に向けた取り組みができないかと支援をお願いしました。プロジェクト支援のおかげでことし(2013年)7月から本格的に栽培を始めることができ、今後は完熟いちごを都市の消費者を中心に直販していくほか、機能性食品やいちごチョコなどの加工品も販売していく予定です。
 南相馬市は、福島原発事故の風評被害が払しょくされず、またもともと名産品が少ないところで農産物への期待ができない状態でした。これまで鹿島地区でのいちご農家は一軒だけでしたが、実は気候はいちご栽培に適しており、美味しいいちごが出来るのです。今回のご支援により、南相馬地域をブランド化し、名産品と成り得るいちご生産だけでなく、6次産業化を目指します。現在機能性食品「イチゴピュアゼリー」を企画・開発中です。年間を通じて収益が確保できる事業に取り組むことで農業復興と地域に貢献したいと思います。
「ふくしま花梨糖プロジェクト」
緑の風ネットワーク実行委員会 会長 高橋 正志 様
 
かりんとうの由来を求めるところから、地域の名産品化を目指す。
 
 福島県各地の農産品・特産加工品を用いて、県内事業者がかりんとう「ふくしま花梨糖」を作り、新たな福島ブランドとして販路拡大、地域振興につなげていきます。現在は、いわき地区のいわきねぎ、梨、いちご、中通り地区のしょう油、ソース、ピーマンなどを使った商品を開発しました。ギフトとして会津木綿柄の折り紙で地域の方が自慢できる商品を地元の生産者や業者の手で作り上げ、まずは地元で消費して愛着ある商品にしていく予定です。将来は生産者から加工者、販売者までが参加する組合組織にすることも考えております。
いわき食彩館株式会社 代表取締役 松崎 康弘 様
 かりんとうは、今から400年前に伊達政宗の命でヨーロッパに渡った支倉常長の遣欧使節団が持ち帰ったものという説があります。伊達家の発祥は伊達市ですが、遣欧使節団は1611年の三陸大地震と津波を経験した政宗が世界に目を向けるために遣わしたという話を聞いたことがきっかけで、本プロジェクトを立ち上げました。震災復興へ向けた福島からの発信として、遣欧使節団400年の記念事業(日本スペイン交流400周年事業:2013年6月から2014年7月まで)が行われているスペインの展示会への出品も計画しております。気軽に楽しめるお菓子として各地域で親しまれ、また自慢のお土産になるよう大切に育てていきます。
「線量、風評に影響されない非食用農業の事業化~バイオディーゼルの事業」
南相馬農業復興協議会 会長 西 一信 様
 
バイオ燃料事業で南相馬の農業の新機軸を示す。
 
 原発事故による作付制限、水田転作の加算により、今後の水稲農業には不安があります。ひまわりや菜種など、油糧植物栽培からバイオ燃料販売まで、一貫して手掛けるバイオ燃料事業を興し、農業による地域の復興を推進します。ことし(2013年)は20ヘクタールの畑でひまわりを育てました。収穫した種子はこれから委託業者に持ち込みエステル化とBDF混合を委託する予定です。
 これまでと違った農業の新基軸を示し、地域農家の生産意欲を保ちながら今後の方向性を探っていきます。本事業を起爆剤にしながら徐々に栽培面積を拡大し、安定した農業を目指します。2011年からの構想でしたが、今回のご支援により、実現に向けた事業を開始することができました。
「地域との共存共栄。世界最高の安全基準で、つながる未来への食の発信」
大野農園株式会社
※代表取締役・大野栄峰(おおの よしたか)氏は、体調不良のため欠席
 大野農園の事業は、果実王国福島のフルーツや野菜をたっぷり使ったスイーツピッツァやフルーツジュースを、キッチンカーで販売するところから始まる。(2013年)11月2日(土曜日)に、ここビッグパレットで行われたイベントにキッチンカーで出店し、好評を得、一定の手応えを掴んだ。
 
懇談会
 
《挨拶》
キリンビールマーケティング株式会社 福島支社長 椎屋 直孝
 
縁の深い福島
 
 私は震災の年の秋に福島に参りました。私自身は大阪の生まれですが、家内が三春町の出身で福島とは20数年のお付き合いがあります。今後もいろいろなところで皆さまの活動と接点が生まれてくると思います。「絆」として、これからも今まで以上にキリンビールの商品をご愛飲いただきたいと思いますし、私たちも皆さまの活動を見届けていきたいと思います。
公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 髙橋 陽子
 皆さんの発表を期待しながら拝聴しましたが、その期待を大きく超える感動をいただきました。それぞれの地元を愛しながら、オール福島で広い面でリーダーシップを取ってやっていただいていることが本当に素晴らしいと思います。そうすることで6次産業化も進んでいくと思いますし、よく世間で後継者がいないと言いますが、それは苦しそうにやっているからで、皆さんが復興に向けて勇気を持って取り組む姿を見せれば、次に自分たちもやろうという若者が育つのではないかと思いました。
2013.11.28「福島県6農業生産者団体贈呈式」おわり

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