ふくしま土壌ネットワーク/“桃の力”プロジェクト収穫体験・未来の食育イベント
ふくしま土壌ネットワーク “桃の力”プロジェクト
収穫体験・未来の食育イベント
日時:平成27年(2015年)7月25日(土)10:30~12:00
会場:福島市飯坂町 果樹園きつない
 
 6月下旬という遅い時期に梅雨入りし、その後もカラ梅雨の7月を過ごした東北地方。
 果樹栽培農家にとっては、果実の成長に気をもむ時期が続いたが、後半には適度な降雨があり、また、何よりも太陽の光が大きな恵みとなって、福島市では、県の代表的な桃の品種「あかつき」が、例年よりも早く出荷のピークを迎えた。
 果実は、やや小振りながらも出来映えは良好。甘みも深く濃いという。
 
 7月25日、福島市飯坂町の果樹生産者・橘内氏の果樹園で、子どもたちを招待して「収穫体験・未来の食育イベント」が開催された。
 これは、県産の桃「あかつき」のおいしさを再認識し、福島の桃を取り巻く風評を払拭しようという「ふくしま土壌ネットワーク」の活動の一つ。
   イベントには、市内の幼稚園児と保護者約20人が参加し、桃の塗り絵などを楽しんだあと、ネットワークのメンバーから手ほどきを受けながら、たわわに実った「あかつき」を枝から収穫。試食では「おいしい!」「あま~い!」という明るく元気な声が上がった。
 「ふくしま土壌ネットワーク」は、福島市内の若手果樹経営者たちが土壌の放射能検査を通じての安全性の確認、産地再生に向けて立ち上げた「ふくしま土壌クラブ」と、地域住民の生活と企業の生産活動を取り戻すさまざまな活動を続ける「福島大学うつくしまふくしま未来支援センター」が、県の果実を代表する「桃」のブランド力を高めることで「果樹王国ふくしま」のイメージ向上と農業地の発展を計ることを目標に、ことし(2015年)2月に設立した組織である。
 
 4月には、「復興応援 キリン絆プロジェクト」の農業支援助成事業を受けて「あかつき」のブランド育成、加工品開発、価値の伝達、食育などに取り組む「“桃の力”プロジェクト」をスタートさせた。
 
 この日のイベントは、そのプロジェクトの一環である「あかつき」のブランド力発信、ならびに「食育」に係るもの。
 甘くふくらんだ桃色の輝きと、子どもたちの「おいしい!」という可愛い声に励まされ、プロジェクトは今後、首都圏などでのモニター調査、加工品の開発など、いよいよ佳境へと向かう。
開会式
 
 前日からの雨も未明には上がり、雲の合間からは青空も顔を覗かせていた。
 日中の最高気温が35度を超えるとの天気予報の通り、気温はぐんぐん上昇し、蒸すような空気が果樹園を包む。
 濃緑色の葉陰には、鮮やかな桃色の果実が実り、甘い香りが風に漂っていた。
 午前10時30分。開会にあたり、まず、「ふくしま土壌ネットワーク」の代表・髙橋賢一氏が挨拶。
 
「この暑さは人間には辛いですが、桃にとってはうれしい暑さです。きょうは、ことし(2015年)4月より進めております『“桃の力”プロジェクト』の柱の一つである食育のイベント。そして、何より桃のおいしさを知ってもらおうという企画です。ことしの桃はたいへん甘く、例年より少し早めの収穫ですが、その分だけ早く、おいしい桃が食べられます。」
 次に、キリン株式会社CSV推進部 絆づくり推進室長の野田哲也が、
「私どもの支援活動を、きょうのようにご当地の皆様にお披露目できることをうれしく思います。プロジェクトの名前の通り、桃の力をもらい、また桃に力を与え、福島の元気と再生に役立てますよう願っております。」と挨拶した。
 このあと、髙橋代表から「あかつき」という品種についての解説があり、小松知未副代表をはじめ「ふくしま土壌ネットワーク」のメンバーから、「“桃の力”プロジェクト」の四本柱であるモニター調査、加工品開発、PR活動、食育の各活動についての進捗状況などが報告された。
 
 この日のイベントは「食育」の推進もテーマの一つ。現在、桃を題材に、子どもたちに向けた絵本の作成も進められている。会場には、絵本の作成を行っている名古屋市在住の絵本作家・はらきょうこ先生も出席。子どもたちと会話をしながら、リスが描かれた自作の塗り絵を一緒に楽しんだ。
 「私はきょう、初めて『あかつき』をいただきました。地元の子どもたちと一緒に絵を描いたりしながら、『あかつき』のおいしさと、福島にはこんなにおいしい桃があるということを伝えることができる絵本を作っていきたいと思います。」と、はらきょうこ先生。
 イベントに招かれた市内の幼稚園児とその父兄約20名は、先生がこの日のために描いてくださったリスと桃の絵の上に、マーカーや色鉛筆を使って色を塗った。
 桃のピンクと淡黄色、葉の緑、そしてリスの薄茶色・・・。子どもたちは、じーっと桃を見つめたり、触ってみたりしながら、「あかつき」をふるさとの身近な果物として感じた。
もぎ取り体験と試食
 
 もぎ取り体験では、はじめに「ふくしま土壌ネットワーク」のメンバーから「こうしてもぎ取るんだよ」とお手本が示された。
 「桃は枝の先っぽの方に向かってやさしく引っ張ってね。そうすればキレイに取れるから。」
 「あれがいい。」
 「これかな?」
 子どもたちは小さな手を懸命に伸ばし、色味もみずみずしい「あかつき」の実を枝からもぎ取った。
 「いい匂いがするね。」というお母さんの言葉に顔をほころばせながらテーブルへと運び、大人たちが剥いてくれた桃を頬張る。
 「あま~い!」
 「もも、だいすき~!」
 あるお母さんは、「福島に住んでいると、桃って結構身近な存在なのですが、こんなふうに枝にたくさん実っているところを間近で見たのは、子どもはきっと初めて。木に実っているところを触ったり、もぎ取ったり、そして葉っぱにも触らせてもらったりして、きょうは貴重な体験をさせていただきました。子どももきょうは朝から『ももが食べられる~!』とはしゃいでいました(笑)。」と話してくれた。
 雲間からはいつしか夏の日射しが降り注ぎ、明るい緑の光があふれる果樹園には、桃のみずみずしさにも負けない、子どもたちのおいしい笑顔がたくさん咲いた。
《インタビュー点描》
ふくしま土壌ネットワーク 代表 髙橋 賢一 様
 ことし(2015年)は雨がちょっと少なめでしたが、春は温かく、開花も早くて、その後もおおむね天候にも恵まれた年だったと思います。例年ですと収穫のピークは8月上旬ですが、ことしは1週間ぐらい早い7月下旬です。ことしの『あかつき』は着色もよく、甘みがたっぷりで間違いのない出来です。きょうは食育に関するイベントですが、このあとモニター調査などもあり、加工品の開発も始まります。でも、この味ならいいものができそうだなと期待しているところです。これまでになかった味の加工品を作り出したいですね
《インタビュー点描》
絵本作家 はら きょうこ 先生
 以前に別のお仕事で髙橋さんとご一緒させていただいて、そのご縁から今回のお話を頂きました。絵本は来年(2016年)の2月ごろの完成を目指しています。リスが育てた桃を子どもたちに届けるというストーリーラインを考えています。また、福島らしさというものも表現できたらと思っていて、いわき市のフラダンスとか温泉なども入れたいです。そして、大切に育てた桃をケーキ屋さんに届けたあと、最後は子どもたちのところへ持って行って一緒に食べる・・・みたいな。
 桃が育っていく様子や、食べておいしいと言っている子どもたちの顔も描きたいですね。福島の桃のおいしさを、子どもたちにも、そして全国の皆さんにも伝えられるように頑張って描きます。
《インタビュー点描》
ふくしま土壌ネットワーク 副代表 橘内 義知 様
 今年は晴天続きで雨が少なく、かと思えば収穫直前に強い雨が降るなどして、どんな出来になるかちょっと心配していました。でも、おいしくなって、収穫も早い。今後の加工品開発にも期待できそうです。桃を使った商品としては、ジュースも一つの選択肢ですが、いろんな可能性を探っていきたいと思います。何しろことし(2015年)はスタートの年。いろんな挑戦をしていきたいです。 絵本についても、じっくり時間をかけて作っていきます。途中で読み聞かせなども行って、子どもたちの声や目線、反応なども見ながら進めていきたいなと考えています。
2015.07.25「ふくしま土壌ネットワーク“桃の力”プロジェクト/収穫体験・未来の食育イベント」おわり

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