そうま天のつぶブランド育成プロジェクト事業報告会
そうま 天のつぶブランド協議会
「そうま 天のつぶブランド育成プロジェクト~そうまが極める、つぶの力」
事業報告会
日時:平成29年(2017年)5月9日(火)13:30~15:00
会場:JAふくしま未来 そうま地区本部3階大会議室
 
 東日本大震災からの復興が続く福島県相馬地方では、各農産物生産者やJAふくしま未来そうま地区本部が続けてきた努力により、耕作地や水田の作付け面積が大きく回復している。
 福島県が復興のシンボルと位置づけるオリジナル県産米「天のつぶ」もまた、生産面積が年々拡大している。JAふくしま未来そうま地区本部でも、平成27年度(2015年度)に522ヘクタールだった作付面積を、今年度は900ヘクタールを目標に拡大し、生産量のアップを目指している。
 2017年5月9日、JAふくしま未来そうま地区本部3階大会議室で「そうま 天のつぶブランド協議会」による「そうま 天のつぶブランド育成プロジェクト~そうまが極める、つぶの力」事業報告会が開催された。
 同協議会は、2015年11月、米栽培農家とJAふくしま未来そうま地区本部が、「天のつぶ」のおいしさを広く消費者に伝えるため、そして「天のつぶ」をブランド米として全国に展開するために立ち上げた会である。そして情報の発信、販売店や外食業者への販売、加工品の開発など、「天のつぶ」の認知度アップとブランド力確立を目指して、「復興応援 キリン絆プロジェクト農業支援」の助成のもと、活動してきた。
 この日の報告会では、プロジェクトの立ち上げの背景やコンセプトなどがあらためて紹介されたほか、商品開発、販促活動、生産振興といったこれまでの取り組みと成果が発表され、また、新たに浮かんできた課題や今後の目標などが語られた。
 「天のつぶ」は、米粒が大きく、ふっくらとおいしい食味が特徴だ。復興田でもしっかりと根を張っている。倒伏が少なく、天に向かって真っ直ぐに成長する姿は、文字どおり復興のシンボルである。
 同協議会では「天のつぶ」のブランド化のほかにも、生産面積の拡大による農業の復興と振興によって、地域の食文化、農水産業、相馬の風土や文化を守り、次世代に伝えていくこともまた、大切な目標として掲げている。
 天の恵みを受けて大きく育ったそうま産の「天のつぶ」が、地域の魅力や誇りを伝えていく力の源となれるよう、相馬地方の田んぼには、昨秋よりも広々と、黄金の光が輝き渡るだろう。
 
《開会の挨拶》
ふくしま未来農業協同組合 そうま地区担当 常務 星 保武 様
 私たちは、震災により、もうダメかと思うほどの被害を受けましたが、キリン絆プロジェクトの支援を賜り、水稲の作付面積は震災前の50%にまで復興しております。この田植えの時期、カエルの声もいっそう元気なものに聞こえ、農家のモチベーションも上げてくれるものと感じております。
 本日は、このプロジェクトによって私たちの農業が大きく変化したということを、明るいニュースとしてお伝えできるのかなと思っております。このプロジェクトが成功するとともに、「天のつぶ」が市場のニーズに合った売れるお米として、ますます伸びていくことを期待しております。
《主催者挨拶》
そうま 天のつぶブランド協議会 会長 濱田 賢次 様
 2015年11月、キリングループ様のご支援のもと、当協議会は発足いたしました。そしてきょう、成果をご報告できるまでになりました。この間の各関係機関からいただいたたくさんのご支援に厚く御礼を申し上げます。
 発足以来、その目的に沿って「天のつぶ」のブランド育成に努めてまいりました。とりわけ6次化商品の開発には力を集めてまいりまして、その甲斐あってか、「天のつぶ」の知名度は消費者に浸透してきていると感じています。
 2015年には522ヘクタールだった作付け面積も、今年度の目標は900ヘクタールになっています。
 先人たちは私たちに農業を伝えてくれました。私たちも気力を絞って次の世代にこれを残していかなければなりません。農業を取り巻く環境は常に変化し、私たちは常に新しい取り組みを求められています。このプロジェクトが農業の変化に対応できる一助となるよう願って止みません。
《来賓代表挨拶》
キリン株式会社 CSV戦略部 絆づくり推進室 室長 中澤 暢美
 本日は、皆様の取り組みとご努力の成果をうかがえますこと、楽しみにしてまいりました。
 私どもでは、福島、宮城、岩手の農業と漁業の復興応援を2011年以降、進めてまいりました。漁業では47案件、農業では48案件につきまして、ご支援させていただいております。
 福島県では、さまざまな課題がたくさんあろうかと思いますが、皆様の頑張りが、福島というブランドを高めて行くことに繋がりますよう、これからも強くご支援できればと考えております。
 この相馬の大地を「天のつぶ」というブランドでいっそう輝かせることができて、皆様がもっと明るく元気になれますよう、祈念申し上げます。
《来賓代表挨拶》
公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 髙橋 陽子
 初めて相馬にまいりまして、「天のつぶ」のお話を伺った時のその帰り道、もう真っ暗で、私は期待と不安の両方を車中で抱いておりました。きょう、こうしてまた相馬を訪ねてまいりましたが、来る度に、元気と活力が湧いているなというふうに感じております。
 そして、お米はもちろん、6次化商品の素晴らしい産品ができておりますこと、皆様のご努力に心から敬意を表したいと思います。
 キリン絆プロジェクトは、あのたいへんな災害のあと、それでもがんばって故郷を再興させたいという皆様の思いを応援するものでした。さまざまな支援は風、そして皆様は土なのだと感じます。風は流れ去っても、土はしっかりとそこにあって、耕され、苗が植えられ、しっかりと根を張って、やがて実を結ぶ。土がしっかりと作られていることを、とても頼もしく思います。
 6次化商品や地域ブランドと申しますが、それを作り、支えるものはやはり人であり、そして人と人との繋がり、ご縁、絆、応援は、やはり形になっていくものだと、今、感じています。
 この土をもっと肥沃して、「天のつぶ」をもっともっと大きくして、子どもたちが故郷を誇りに思い、相馬、福島、日本がますます元気になっていけたら嬉しく思います。
《取り組み報告》
天のつぶブランド協議会 事務局 米津 友市 様
 本プロジェクトのサブタイトル「そうまが極める、つぶの力」というフレーズには、妥協を許さない浜の農家の米づくり、震災に負けない力強さが込められています。
 震災後、相馬地区では本格的に「天のつぶ」の栽培が始まりました。しかし、知名度は低く、産地環境も激しく、震災の影響で価格も下落しました。生産者の中には「どうせ作っても売れない」という人もいました。
 また、「天のつぶ」の栽培基準はあっても、結果は個人によってバラバラで市場から高い評価は得られませんでした。そうして見えてきた課題を整理するなかで、市場に受け入れられるためのブランド育成の必要性を感じました。
 そして、「天のつぶ」の特徴を整理し、相馬の自然や気候に適した特性、大粒であるという特徴、冷害に強く倒伏しにくい特徴などのほか、さらに生産者の思いを一粒にこめて届けるのだという思いをコンセプトにまとめました。
 ブランド戦略では、2.05㎜の篩(ふるい)網で選別した粒でプレミアム商品を作り、「天のつぶ」ならではの食べ方を紹介し、さらに加工品では海産物とのコラボレーション、スイーツなどで特色を出し、主食との相乗効果を期待して認知度アップを図りました。
 商品開発では「そうま天のつぶ」のブランドコンセプトに沿って全商品のデザインを統一し、既存商品のパッケージもリニューアルしました。
 2.05㎜で粒を揃えた「そうま生まれのプレミアム大粒米」は、粒が揃い、炊きムラがなく、ふっくらと炊きあがります。消費者ニーズに沿って、商品の量目は手に取りやすい2㎏としました。また、水だこ、しらすなど地元の海産物を使った炊き込みご飯では、海の幸が豊富な相馬地方の食を味わうことができます。
 
 さらに、「天のつぶ」に興味を持ってもらうため、クッキーやスイーツなど身近で購入しやすい商品も開発しました。
 「天のつぶ」の特徴、おいしい理由、魅力などを伝えるパンフレット、販促を展開する際に使用するポスターや幟、ジャンパーなども作成しました。日本橋ふくしま館や東京ビッグサイトでのイベントや商談会の開催、地産地消交流会などへも積極的に参加し、シンガポールへは浜通り地方で初めてとなる精米1トンを輸出することができました。ブランド化への大きな第一歩です。
 今後は、生産面積の拡大を目指します。作付面積は増えていますが、ブランド化を目指すにはまだまだ収量が足りません。3年後の作付け目標を現在の640ヘクタールから1500ヘクタールに設定しました。
 また、全国的評価や、より相馬の特色を生かした栽培方法や指導体制も課題です。
 プレミアム米は米専門店での取り扱い増加を狙い、寿司店、うなぎ店などへの販売拡大を目指します。
 価格回復、風評被害の払拭、生産者の誇りを取り戻すこと。そして、地域の食文化、その元となる農業や水産業、それを育んできた管内の風土や文化を継承し、子どもたちに伝え、未来への架け橋となること。それが、私たちが目指すプロジェクトの姿です。
《激励の挨拶》
JA全農福島 福島営農事業所 所長 宍戸 藤市 様
 そうま天のつぶブランド育成プロジェクトの成果を伺わせていただきましたが、全農福島といたしましても、この成果を確実に販路拡大へと繋げて行きたいと考えます。6次化商品も含め、全農の子会社なども使い、さらなる販売展開を図ってまいりたいと思います。輸出につきましても、米穀部でしっかり考えて県の協力も得ながら検討してまいります。
 このプロジェクトの発展に合わせ、全農も産地のPRに努めて行きますことをお約束します。皆さん、がんばってまいりましょう。
《インタビュー点描》
トラックスアンドストアーズ 代表取取締役社長 西尾 望 様
 パッケージのデザインばかりでなく、スイーツの試食など仕事を超えたところで、そして長く関わらせていただいたプロジェクトでした。その分、細かい部分にもこだわり、思い入れがいっぱいあります。商品が実際に売り場に並べられたときは嬉しかったですね。
 日本橋のふくしま館へも時々覗きに行って売れているかな、なんて気になったり(笑)。
 パッケージなどは、生産者の思いが消費者に伝わればいいなと思ってデザインしました。稲作はここだけの文化じゃないけれど、相馬ならではというものを伝えられる方法はないかなっていうところを一番考えていました。
 地域性とか、明るさとか、純朴な感じとか、たくましさとか。そんな相馬らしさが、消費者に気持ちよく伝わればいいなと思ってデザインしました。
《インタビュー点描》
そうま 天のつぶブランド協議会 会長 濱田 賢次 様
 協議会を立ち上げてからきょうまで、長かったなぁという気持ちと、やり残した部分があるなという思いの両方があります。
 「天のつぶ」のネームバリューがどこまで消費者に浸透したか、そこが気になっています。やはり販売実績が伴わないといけないのかな。
 生産量も増やしていかないと、ブランドとして取り扱ってもらえません。また生産者の高齢化、後継者不足といった農業を取り巻く環境、そして消費者の好み、食べ方など、いろいろなことが変化していきます。生産者の独りよがりではダメで、生産地としてニーズを掴むことも大事です。
 でも、良いものを作れば売れる、だけでもダメ。売り込まないと(笑)。質と量の両方を上げていきたいと思います。
《インタビュー点描》
JAそうま 天のつぶ ブランド協議会 副会長 桑折 健一 様
 「天のつぶ」は、倒伏もしないでしっかり育つ稲です。でも実際に育ててみると穂揃いが悪く、刈り取り時期の判断も難しいですね。
 育て方がまだ確立され切っていません。皆で作り始めて、まだ4~5年ですからね。生産者の技術的なものや、納得できるやり方みたいなものがそれぞれありますし。
 実際、昨年のお米より、一昨年のお米の方が、食味が良かった。それはなぜなのか、マグネシウムのような、ほんのちょっとでいい微量要素が関わっているのかなとか、1年に1回しか育てられないものですから、まだ手探りの部分もあります。
 これからが本当の勝負。土壌づくりにも工夫しながら、ことしはぜひ、食味にこだわって育てて行きたいと思います。
《インタビュー点描》
天のつぶ ブランド協議会 事務局 米津 友市 様
 「天のつぶ」をブランド化するためには、やはり生産量を増やしていかなければ、という思いが強くあります。生産面積が拡大するということが、相馬地区にとっての復興を意味するものと思います。稲作をやめたり休んだりしている農家の方にも、もう一度栽培してほしいと思っています。農業を続けていってほしいということでもあります。
 稲作は、新規参入という方はなかなかいなくて、やめていく人が多いです。後継者問題もあります。
 子どもたちに復興した大地を受け継いでほしい。復興させるのは私たちの務めです。まず自分の子どもが大人になる前に、現状復帰させ、元通りにしたいと考えています。その手応えは感じつつあります。
 また、食味を上げるのに、今、生産者の方に魚滓(あら)を肥料に使った栽培方法を試してもらい、相馬らしいやり方を始めています。天と、海と、大地とで相馬らしいお米を作りたいと思います。
2017.05.09 そうま 天のつぶブランド協議会「そうま 天のつぶブランド育成プロジェクト~そうまが極める、つぶの力」事業報告会 おわり

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