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・これまでの贈呈先
社会に役立つ寄付を行なった人を顕彰する『まちかどのフィランソロピスト賞』。第7回(2004年度)の贈呈先が決まりました。
贈呈式は、2004年9月9日(木)に学士会館(東京都千代田区)にて開催しました。
集合写真
◆ まちかどのフィランソロピスト賞
猪鼻 福松(いのはな ふくまつ)さん
(東京都北区)
<贈呈理由>
 
猪鼻福松さんは、1915年に群馬県館林市で生まれるが、生まれながらに病弱で、小学校入学後も強度の脳膜炎などに苦しみ続け、学校も休みがちな少年期を送る。4歳の時、父が亡くなり、母まつさんは、夫亡き後、農業に従事しながら苦労して6人の子どもを育てた。我が子の病気回復を願って、毎夜、近くの大林稲荷神社にお百度参りに通っていたが、その母の姿を見つけた時、胸熱く涙したことを、猪鼻氏は深く心に刻んでいた。
 
やっとの思いで小学校を卒業したが、虚弱体質のため旧制中学に進学することも叶わず、家業の農業を手伝うこととした。その結果、農作業を続けるうちに体力がついてきたが、本格的な農業に従事するには限界があると考えた猪鼻さんは、商売を覚えようと、隣村の雑貨商に無給で働かせてもらいたいと依頼。ここでの寝食を忘れた働きと、商才に長けた仕事ぶりで、奉公先に多大な利益をもたらした。その後、日中戦争が始まり、縁あって、警視庁巡査として、東京南千住警察署に配属。「笑顔のおまわりさん」と親しまれ、町内の人々から信頼される巡査として、長い警察官生活の第一歩を歩み始めた。
 
1940年(昭和15年)、衛生兵として入隊し、中国戦線を転戦。中国出港前日、母の死の知らせを受けた。輸送船で南方へ移動中、その船は撃沈されたが、母なき人生への執着は失せ、同僚を生かすために働いたことで逆に命が救われたという奇跡的な運命をたどる。ラバウル、マニラで治療を受け、赤十字の電飾を施した病院船で、無事帰国することができた。
 
その後、腰椎骨折の傷病兵ながら警視庁に復職し、職務に誇りと使命を賭けて文字通り粉骨砕身従事し、「特別優良警察官」「警察功労賞」など数々の賞を受賞、1972年(昭和47年)通算34年間、南千住警察署の一警察官としての勤務を終え、定年退職を迎えた。病弱で義務教育も満足に受けられなかったにもかかわらず、限られた可能性を精一杯生かし、真摯に実直に、そして謙虚に生きることで「災い転じて福となす」人生を送り、今日を迎えている。
 
あきらめていた結婚も叶い、よき伴侶と子どもにも恵まれたが、いつまで生きられるかわからないという思いはいつもつきまとい、万が一の時に備え、こつこつ貯めた貯金を元手に株を始めていた。その才覚も大で、大きな財をなすことになる。しかしながら、長寿・幸運すべてにおいて母の深い愛と真摯な祈りが自分を救い、お百度参りをした故郷の稲荷神社の加護のおかげだという思いを持ち続け、自らはつましい暮らしぶりで、以前より心に誓っていたとおり、80歳の時(1995年)、稲荷神社の新築工事の建設費総額を奉納した。また、故郷の子どもの遊び場、恩人でもある赤十字へも寄付し、その総額は1億円にのぼる。
 
今日、職業人として個人としての責任あり方が問われているが、限られた可能性を最大限生かしながらも、実直に生きることを貫き通した猪鼻さんの、母と故郷への感謝の結実としての寄付は、まさに『まちかどのフィランソロピスト』そのものの在りようとして、賞を贈呈するにふさわしいものである。
◆ 贈呈式
日時:
2004年9月9日(木)18:30~20:30(開場17:30)
会場:
学士会館 201号室
<所在地> 東京都千代田区神田錦町3-28
<最寄駅> 都営地下鉄三田線、新宿線、営団地下鉄半蔵門線「神保町駅」A9出口徒歩1分
プログラム:
18:30~19:15 贈呈式
 ・まちかどのフィランソロピスト賞 贈呈
 ・来賓ごあいさつ
山田英雄 氏(元警察庁長官、現財団法人公共政策調査会理事長)
19:15~20:30 懇親会
 ・ハンドベル演奏 ほか
 
第7回 まちかどのフィランソロピスト賞 実施要項
募集チラシ
クリックするとダウンロードできます。
第7回まちかどのフィランソロピスト賞推進募集チラシ
趣旨
阪神・淡路大震災以来、日本社会でもボランティアの活躍が目立ってきております。一方、ボランティアの影に隠れて見過ごされがちですが、社会に役立ちたいという思いをこめて寄付を行なう人も決して少なくありません。
 
こうした寄付はフィランソロピーと呼ばれ、特に米国ではとても盛んです。しかし、日本では寄付した人も目立ちたくないとか、陰徳こそが好ましいといった価値観に支配されやすく、また寄付金に対する優遇措置が極めて未整備なこともあり、寄付の実態がよく分かっていません。
 
そうした状況下で、当協会は、社会のために私財を投じた人を顕彰する『まちかどのフィランソロピスト賞』を1998年に創設しました。この賞を通じて、私財を社会に役立てた人を顕彰し、日本の社会の中に寄付文化を根付かせ、さらに、日本ではほとんど知られていなかった善意の寄付の実態を、少しでも明らかにしていくことを目的にしています。
対象
《対象者》
 ・社会のために私財を投じた個人またはグループ(金額の多寡は問いません)。
 ・社会のために寄付を集め、それを他者に寄付をした個人またはグループ。
 ・故人も対象とする。
 
《対象期間》
 ・1990年1月1日から現在まで
ご応募
《ご応募方法》
 ・当協会所定の推薦書用紙にご記入の上、下記事務局へご送付ください。
 ・他薦に限ります。
 
《ご応募締切》
 ・2004年5月20日(木)消印有効
選考
《選考方法》
 ・書類審査および訪問審査(ヒアリング)
 
《選考基準》
 ・次のいずれかを満たすもので、寄付額を競うものではありません。
  (1)フィランソロピー(人類愛)にふさわしい寄付であるもの。
  (2)社会のために大変役立っているもの。
  (3)寄付にあたって、人々を感動させるようなエピソードをもつもの。
 
《選考委員》
委員長
出口 正之
国立民族学博物館教授、社団法人企業メセナ協議会専務理事
 
井上小太郎
住友生命保険相互会社
 
加勢川佐記子
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc.
 
倉見 克行
株式会社 資生堂
 
山本 直之
関西電力株式会社
 
林 雄二郎
日本NPO学会会長、社団法人日本フィランソロピー協会会長
 
髙橋 陽子
社団法人日本フィランソロピー協会理事長
表彰
《贈呈品》
 ・『まちかどのフィランソロピスト賞』(1名)に賞状と記念品を贈呈します。(賞金はありません)
 
《贈呈式》
 ・2004年9月に学士会館(東京都千代田区)にて開催します。
事務局
《ご応募書類お送り先・お問い合わせ先》
  社団法人日本フィランソロピー協会
  『まちかどのフィランソロピスト賞』事務局
  担当:仁部智子(にべ ともこ)
 
  〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-1 古河ビル618
  TEL: 03-5252-7580--FAX: 03-5252-7585
前回・次回
 
社団法人 日本フィランソロピー協会
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-1 古河ビル618
TEL: 03-5252-7580--FAX: 03-5252-7585--Email--Access
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