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・これまでの贈呈先
社会に役立つ寄付を行なった人を顕彰する『まちかどのフィランソロピスト賞』。第9回(2006年度)は、一般部門に54件、青少年部門に46件のご応募をいただき、選考委員による書類選考とピアリング選考を経て、次のとおり贈呈先が決まりました。
贈呈式は、2006年9月12日(火)に学士会館(東京都千代田区)にて開催しました。
集合写真
◆ まちかどのフィランソロピスト賞
伊倉 二郎(いくら じろう)さん
(神奈川県相模原市)
<贈呈理由>
 
賞状贈呈
伊倉二郎さん(右)と当協会浅野史郎会長
伊倉二郎さんは、1926年、静岡県御殿場市に生まれる。生家は小作農家、12人兄弟で貧しい暮らしだった。姉たちが奉公に出ているのを見て、自らも早く働いて家計を助けたいと14歳で鉄道省に入省。採用試験時、解答用紙が白紙であることを見た隣の席の秀才学生(隣村出身)が、答を記入してくれたおかげで採用となるが、その秀才学生は身体検査で不採用、戦争中に死亡したことを聞き、他人の命をもらったような思いを持つ。
 
また、同省では、車両修理工として勤務するも、作業中の事故で大やけどを負った。「足を切断しなければ助からない」といわれたが、母親はどうしてもそれは忍びないと退職させ、地元の獣医に懇願、その思いが通じ4年半をかけて治癒。その獣医は治療代を一円も受け取らなかった。復職も果たし、母や医師の献身的な治療や看護によって命を与えられたという感謝の念を強く持つに至る。
 
終戦後、もはや国に依存するのではなく、自らの考えと力で生きようと「人生八十年計画」を立て、子どものため、平和のために社会に役立つことを決意、子ども会を設立。その後、給与の3分の1を子ども支援はじめ社会活動に充てる生活を続ける。原水爆禁止運動、公民館運営審議委員としての地域づくりなどの活動に従事する。
 
退職後「ひかり幼児園」設立。「子どもたちのために戦争のない世界を作ろう」とその敷地内には平和祈念の碑を建立。平和祈念集会は今も続けている。さらに相模原市在住の私費留学生に年間6万円の奨学金を支給する相模原国際奨学基金を創設。274名の奨学生が巣立った。この資金は、駅頭に立っての廃品回収などで確保。2年前、脳梗塞で倒れそれは断念したが、その後は、ぶどうの鉢植えを栽培・販売して資金に充てている。80歳を期に幼児園の閉園を決め、2006年、園地の一部、580㎡(地価8,000万円)の土地を子どもたちのための平和祈念公園として相模原市に寄付。
 
平和のため、次代を担う子どものために、自らの財と汗を使い、志と愛を貫いてきた生き様は「まちかどのフィランソロピスト」としてふさわしいものである。
◆ 特別賞
馬渕 隆一(まぶち たかいち)さん
(千葉県松戸市)
<贈呈理由>
 
賞状贈呈
馬渕隆一さん(右)と当協会浅野史郎会長
馬渕隆一さんは、1932年、香川県高松市に生まれる。実家はブリキ関係の工場を営んでいた。父親は経営者だったが、仕事の進め方だけを番頭に話し、自らは野良仕事をし、収穫を従業員らに分け与えるという暮らしだった。
 
戦争が激しくなり食糧難時には会社の株を売却。その収入で田畑を購入し耕作、高校に進んだばかりの隆一氏も早朝から夜遅くまで働き手として借り出され、結局高校を中退せざるを得なくなった。同氏は、このときを「仕事の中で最も過酷だった」と振り返るが、ものづくりの原点を教わった時期でもあった。
 
1954年、マブチモーター株式会社の前身である東京科学工業株式会社を、兄・馬渕健一氏とともに創立。専務、社長を歴任し、2003年、会長に就任。
 
1996年、同社のベトナム工場を設立した際、現地で従業員を採用したくても字が読めない、計算ができない人が多いことを痛感。また、子どもたちが生活のために勉学よりも仕事を優先せざるを得ない状況を知り、「日本は他のアジア諸国よりも、一足先に恵まれた生活をできるようになったのだから、アジアの一員として、他の国を支援する義務がある」「どんな人にも、生まれてきてよかったと思える人生を歩ませたい」と、2005年、自社株の持分約90億円相当と、現金15億円を出捐、東南アジアや中国などから年間20人程度の留学生を日本に招き、学費や生活費を支援するマブチ国際育英財団を創設した。
 
マネーゲームに翻弄されがちな今日、自らの成功と財をもって若者の育成にかけるその生き様は、若者に夢と目標を与えるものとして、さらに、公を担う民間人の責務を体現するものとして、敬意を表するものである。
◆ 青少年の部
愛知県高校生フェスティバル実行委員会
(名古屋市)
<贈呈理由>
 
活動発表
生徒代表・名倉愛美さんによる活動発表
愛知県高校生フェスティバル実行委員会は、愛知県下の高校生有志で構成され、ボランティア活動や文化活動を行なっている。阪神・淡路大震災の折には現地救援活動に加え、親を亡くした中・高校生に奨学金を贈るための募金活動を開始し、これまでに423人、計2,499万円の奨学金を贈っている。
 
また、経済的理由で学ぶことを諦めざるを得ない私立高校生に奨学金を支給する「愛知私学奨学資金財団」が財政難に陥っていることを知り、1999年から「まだ見ぬ仲間を救おう!」というスローガンのもと、1億円を目標に募金活動を開始。毎月の街頭募金および学校行事等で、地道に寄付を呼びかけた。その姿は多くの高校生、地域住民の共感を呼び、「1億円募金活動」の輪が広がり、2006年4月、ついに1億円を達成した。「愛知私学奨学資金財団」は1976年の設立以来、経済的理由で退学する生徒たちを救おうと、月額1万円(年額12万円)を無利子で貸与。これまでに奨学金を給付した1,876人のうち、613人が1億円募金によるものという。
 
同じ高校生としての、やむにやまれぬ熱い思いが果たした募金は、若き学徒のすがすがしいメッセージとして、同世代の若者に希望と温かい勇気を与えるものである。
 
沖縄市立宮里中学校
(沖縄市)
<贈呈理由>
 
活動発表
生徒代表・奥間喬啓さんによる活動発表
写真右端は 比嘉 司 教諭
同校1年7組(比嘉司教諭、生徒数38名)では、総合学習の一環として、福祉・ボランティアをテーマに、空き缶/不用品/ベルマーク/募金等の「集める活動」に取り組んでいた。
 
「誰かのためになりたい」「貧しい人のために何かしたい」という生徒の意思に応え、担任教諭は、ボランティアの意味、目的を考えるための情報収集を促した。生徒からの提案で、沖縄市で活動する国際協力の専門家、池間哲郎氏(特定非営利活動法人アジアチャイルドサポート代表理事)の講演会を開催した。
貧しい国で暮らす子どもたちの現状を知り、自分たちの生活との格差に大きなショックを受けた生徒たちは、こうした子どもたちや地域のために何かをしたいと、ショッピングセンターや街頭での募金活動を企画。ポスター作成、チラシ配布、事前のリハーサルなど綿密な計画による実行の結果、2日間で29万円を集めた。
 
2006年6月、募金はミャンマーの集団井戸建設に活用され、そこには「輝け未来、命の水」と彫ったプレートが掲げられた。38名の生徒たちの「人の役に立ちたい」という素直な思いを引き出し、それが確かな結実をもたらした。
 
総合学習という機会を、「共に生きる」ことを学ぶ実践として生かしたことは、教育の意味を捉えなおす上でも多くの示唆を与えるものである。また、人間は本来、他者へのいたわりの心を持っていることを、身をもって示した若者たちに、心からの拍手と感謝の気持ちを送りたいものである。
◆ 贈呈式
日時:
2006年9月12日(火)18:30~20:30(開場17:30)
会場:
学士会館 201号室
<所在地> 東京都千代田区神田錦町3-28
<最寄駅> 都営地下鉄三田線、新宿線、営団地下鉄半蔵門線「神保町駅」A9出口徒歩1分
プログラム:
18:30~19:15 贈呈式
 ・まちかどのフィランソロピスト賞 贈呈
 ・来賓ごあいさつ
三木睦子さん
三木睦子さん
(三木武夫元首相夫人/アジア婦人友好会 名誉会長)
 
19:15~20:30 懇親会
 ・ミニコンサート
テノール独唱:
志田雄啓さん(日本音楽コンクール声楽部門第1位受賞)
   
ピアノ伴奏:
澤田素子さん
 
第9回 まちかどのフィランソロピスト賞 実施要項
募集チラシ
クリックするとダウンロードできます。
第9回まちかどのフィランソロピスト賞推進募集チラシ
趣旨
阪神・淡路大震災以来、日本社会でもボランティアの活躍が目立ってきております。一方、ボランティアの影に隠れて見過ごされがちですが、社会に役立ちたいという思いをこめて寄付を行なう人も決して少なくありません。
 
こうした寄付はフィランソロピーと呼ばれ、特に米国ではとても盛んです。しかし、日本では寄付した人も目立ちたくないとか、陰徳こそが好ましいといった価値観に支配されやすく、また寄付金に対する優遇措置が極めて未整備なこともあり、寄付の実態がよく分かっていません。
 
そうした状況下で、当協会は、社会のために私財を投じた人を顕彰する『まちかどのフィランソロピスト賞』を1998年に創設しました。この賞を通じて、私財を社会に役立てた人を顕彰し、日本の社会の中に寄付文化を根付かせ、さらに、日本ではほとんど知られていなかった善意の寄付の実態を、少しでも明らかにしていくことを目的にしています。
対象
《対象者》
 ・社会のために私財を投じた個人またはグループ(金額の多寡は問いません)。
 ・社会のために寄付を集め、それを他者に寄付をした個人またはグループ。
 ・故人も対象とする。
 ※青少年の部
 ・上記に該当する18歳未満のグループ(学校単位も可)。
 
《対象期間》
 ・1990年1月1日から現在まで
ご応募
《ご応募方法》
 ・当協会所定の推薦書用紙にご記入の上、下記事務局へご送付ください。
 ・他薦に限ります。
 
《ご応募締切》
 ・2006年6月1日(木)消印有効
選考
《選考方法》
 ・書類審査および訪問審査(ヒアリング)
 
《選考基準》
 ・次のいずれかを満たすもので、寄付額を競うものではありません。
  (1)フィランソロピー(人類愛)にふさわしい寄付であるもの。
  (2)社会のために大変役立っているもの。
  (3)寄付にあたって、人々を感動させるようなエピソードをもつもの。
 
《選考委員》
委員長
出口 正之
国立民族学博物館教授、国際NPO・NGO学会会長
 
井上小太郎
住友生命保険相互会社
 
大倉 通宏
株式会社 資生堂
 
北野 洋子
三井物産株式会社
 
中島 健三
大阪ガス株式会社
 
山本 直之
関西電力株式会社
 
髙橋 陽子
社団法人日本フィランソロピー協会理事長
表彰
《贈呈品》
 ・一般の部、青少年の部各1名(またはグループ)に
  『まちかどのフィランソロピスト賞』として賞状と記念品を贈呈します。(賞金はありません)
 
《贈呈式》
 ・2006年9月に学士会館(東京都千代田区)にて開催します。
事務局
《ご応募書類お送り先・お問い合わせ先》
  社団法人日本フィランソロピー協会
  『まちかどのフィランソロピスト賞』事務局
  担当:宮本 栄(みやもと さかえ)、小林聖美(こばやし さとみ)
 
  〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-1 古河ビル618
  TEL: 03-5252-7580--FAX: 03-5252-7585
前回・次回
 
社団法人 日本フィランソロピー協会
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