<プロフィール>
毛受敏浩さん
 
めんじゅ・としひろ
慶應義塾大学等で非常勤講師を歴任し、現在、自治体国際交流総務大臣表彰選考委員、新宿区多文化まちづくり会議会長、未来を創る財団理事を務める。著書に『人口激減-移民は日本に必要である』、『異文化体験入門』、『地球市民ネットワーク』など。
 
表紙
機関誌『フィランソロピー』
No.382/2017年10月号
第10回 私のフィランソロピー
毛受 敏浩
公益財団法人日本国際交流センター 執行理事
フィランソロピー活動には、分かりやすいものと、分かりにくいものがあります。前者は、理解されやすく企業の支援も得られやすいもので、その例として「子どもの貧困」があるでしょう。一方、後者は理解が進まず、支援も得られない。私が取り組んでいるのはまさに後者で、それも従来、タブー視されてきた「移民政策」というテーマです。
こうしたテーマを掲げると、個人的にネット右翼に厳しく攻撃されることもあります。ではなぜ、あえてこうしたテーマに取り組むのでしょうか?
それは、長年の国際交流の経験から、外国人との接触によって、多くの日本人が啓発を受け、日本のよさを見直す絶好の機会になると考えるからです。外国人が定住することで、単に、労働力を確保できるだけではなく、日本人自身にも大いに刺激となり、閉塞感を打破するきっかけにもなるでしょう。
日本の将来には、人口減少という大きな暗雲がかかっています。今後、人口減少は加速し、2020年代の人口減少は620万人、30年代には820万人、40年代には900万人と、東京の総人口に匹敵する人口減少が、十数年ごとに繰り返される未来が、目の前に迫っています。政府は地方創生、一億総活躍、働き方改革など、次々に新方針を打ち立てましたが、肝心の人口減少は止まる気配がありません。
日本が危機に瀕しているのであれば、一過性の国際交流に留まらず、親日国から、有能で日本語がある程度できる若者を段階的に受け入れ、彼らに定住の道を開き、日本の若者と、ウインウインの関係ができるような受け入れ策を構築する。それが将来にわたり、日本の持続性を維持する唯一の方法でしょう。巨大な負債を抱えた日本では、人口減少がこのまま続けば、国家破たんの可能性も出てきます。
筆者は、公益財団法人日本国際交流センターの活動として、10数年前から、多文化共生や外国人定住化に向けての政策提言というテーマに、取り組んできました。今年(2017年)6月に出版した『限界国家』(朝日新書)では、堺屋太一氏に序文を寄稿いただき「本書は、長期にわたりこの国が繁栄するためのよい導きの書となるであろう」という評価をいただきました。
元警察庁長官の国松孝次氏らとともに「定住外国人政策研究会」を行い、賛同者も徐々に増加してきました。タブーや無理解を乗り越えて、ここまで活動を続けてきたのは、日本の近未来への強い危機感があったからです。未来を切り開くアクション、それは、フィランソロピーの究極の姿かもしれません。