巻頭ごあいさつ/No.398
「Dare Care Share」で未来を拓く
公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長
髙橋 陽子
2月以降、従来の新聞やテレビなどのメディアに加え、SNSによる情報が錯綜する中、ほとんどの人が、初めて遭遇する新型コロナウイルス感染拡大という見えない脅威と闘う暮らしが続いています。
不安が募り、さまざまな情報に振り回されている状況において、今号では、メディアの役割について考えてみようと企画を組みました。
企画を練っている間にも、状況は刻々と変わり、かつ、どうもすっきりとは収束しそうにないという予測と覚悟の中で、当協会もメディアとして、今何を伝えるべきかを捉えなおし、今これからできることを考えるヒントになる情報提供に特 化して考えてみることにしました。とはいえ、網羅することはできませんので、当協会が関わっていることを中心にお伝えしております。
このたび、従来から困難な状況にある人たちが、緊急事態宣言の中で、居場所を失い、職を失い、つながりを失うという、ますます困窮を極める事態に陥っておられます。
何とかならないかというもどかしさを抱えつつも、今回の問題の難しさは、誰もが当事者であるということです。感染の可能性があるという意味での当事者、拡大させるという意味での当事者、そして、同じ不安の中にいるとはいえ、より いっそう困難を抱えている人に対し、同じ社会の一員として支援することが出来るという意味での当事者です。
フランスの哲学者アランの『幸福論』の中に、「悲観主義は気分のものであり、楽観主義は意志のものである」という言葉があります。今は、まさに、どちらにも揺れがちな状況にあると言えます。だからこそ、助け合い、支え合う意志を持って、何とか前向きに乗り切っていきたいと思うのです。
そうした思いで、当協会では、まず、NPOの実態と企業の支援策についてのアンケート調査、個別NPOへの電話ヒアリング調査を実施しました。活動を休止しなければならない中、何とかさまざまな工夫を重ね支援を続けたい、しかし、運営、 方策が厳しいという現実が見えてきました。また、企業としては、NPOの実態に耳を傾けながら、少し息長く支援を考えていきたいという意志も窺えました。
それに応えるべく、オンライン上で、企業の担当者向けのさまざまな課題やそれに応えるためのNPOの活動について聞く機会を設け始めました。また、従来より、企業の従業員がNPOでボランティアをするマッチングをしておりますが、テレワークが続く中、在宅でのボランティアのマッチングも始めました。
さらに、中高生によるNPO支援事業を計画しております。是非、皆さまも、活動のヒントにしていただければと願っています。
今こそ、共生社会実現のために、一人ひとりが、社会のさまざまな問題に対し、自分ごととして向き合い行動する時が来たように思います。「Dare Care Share」精神を今こそ心に誓い、進めるために共有させていただきます。
Dare Care Share で、今自分にできることを考え、それに取り組むことが、自分自身の不安に向き合い、乗り越えようという前向きな生き方につながるのではないかと思っています。
メディアの役割は、「考える材料を提供すること」といった人がいます。考え、決断し、行動するために、まず、従来から困難な状況を抱えている人たちが、さらに、苦境に立たされている現実をヒアリングし、それをお伝えすること。そして、さまざまな取り組みを知っていただき、意志さえあれば、可能性は拓けるということを実感するきっかけにしていただきたいと思い、各地のNPOからの、現場だからこそ見える情報をお届けいたします。
当協会も、この苦しい試練を、無駄にすることなく、Dare Care Share へのきっかけを提案しながら、新たな地平を拓くための事業を進めてまいりたいと思っています。