フィランソロピー見聞録

機関誌最新号
Date of Report:2024.2.16
2023年度 久里浜少年院 胡蝶蘭贈呈式
公益社団法人日本フィランソロピー協会は、誰も排除されることなく、すべての人が社会参加できる機会を提供する共生社会づくり推進事業の一環として、2019年度より、久里浜少年院在院生による社会貢献活動「花育(はないく)」をサポートしています。過酷な生い立ちもあり自己肯定感が低く、少年院入院を繰り返してきた在院生たちが、胡蝶蘭のお世話を通してかけがえのない命の存在に気づき、自他を大切に思うきっかけづくりとしています。
 
2023年度は10月に活動をスタート。在院生は、一人一鉢手渡された胡蝶蘭に、「らんまん」「慶祝寒蘭」「晴天」などそれぞれ名前を付け、自室(単独室)で開花するまで育ててきました。
 
2024年1月22日(月)、神奈川県内の9団体をお迎えし、贈呈式が行なわれました。贈呈先の方々から、「みなさんが大切に育てた蘭が見る人の心を和ませてくれる。今度は私たちが大切に育てていきます」と感謝の言葉をいただきました。
【花育】花を教材に生命の大切さや他を思う心を実感し、自己有用感・自己肯定感を高めることで非認知能力を醸成する活動。
 
在院生一人ひとりが胡蝶蘭に名前を付け、手書きのメッセージカードを添えて団体に贈呈しました。
(クリックすると拡大します)
日時:2024年1月22日(月)14:30~15:30
会場:久里浜少年院 体育館(神奈川県横須賀市)
在院生人数:41名
贈呈先:下記9団体
協力:有限会社椎名洋ラン園
【贈呈先】
病気の子どもと家族を支える団体
・神奈川県立こども医療センター
・認定NPO法人 スマイルオブキッズ
・認定NPO法人 横浜こどもホスピスプロジェクト
 
障がいのある人の暮らしを支える団体
・社会福祉法人 訪問の家
 
難民の暮らしを支える/国際理解を促進する団体
・NPO法人 アルペなんみんセンター
・神奈川県立地球市民かながわプラザ(あーすぷらざ)
 
困難な状況にある子どもの生活と自立を支える団体
・社会福祉法人誠心会 しらかば子どもの家
・社会福祉法人白十字会林間学校 あすなろサポートステーション
・認定NPO法人 子どもセンターてんぽ
 
贈呈先で胡蝶蘭を飾っている様子
< あいさつ >
在院生代表
今回、蘭の花を育てるとき、名前を付けて、受け取ってくれる人の気持ちを考えるところから始めました。最初は育てられるだろうかと思いました。最初に花がついたときは嬉しかったし、小さな命の大切さを思いました。私たち一人ひとりが心を込めと育てた花が誰かの役に立つことができれば良いと思っています。
人生は花を育てることと同じで、日に当てて栄養をもらうなど、私たちも自分にとって必要なことをやらなければ決して咲くことができないのです。私たちが育てた胡蝶蘭を大切にしてもらえると嬉しいです。
 
椎名 輝(しいな ひかる)さん/有限会社椎名洋ラン園
去年10月末に皆さんにお渡ししたのは花芽(はなめ)のついた状態の蘭でした。蘭は花芽を付けるまでに4年かかります。それまで私たち生産者は子どものように蘭を育てます。その大切な蘭を皆さんに託したのです。きょうまで皆さんが大切に育ててくれて嬉しかったです。皆さんの部屋は蘭を育てるには、日照や気温など良いとはいえない環境です。でもきれいに花を咲かせてくれた。何が要因か、それはみんながお世話をしてくれたからです。
贈呈式の前にラッピングをしましたが、メッセージカードに小さな字でたくさん書いてありました。自分の経験や思いやりにあふれたものでした。今回、皆さんが育てたものは2つあると思います。一つ目は蘭、二つ目は贈呈先への思いです。お花は生き物ですから、いつか枯れるときがきます。でも、みんなの思いは一生消えない。贈呈先でも蘭を大切にしてくれています。みんなは今回、誰かのために何かを為した。花にかけた愛情と思いやりの心を忘れないでほしいと思います。
 
髙橋陽子(たかはし ようこ)/公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長
みなさんに2つのことを伝えたいと思います。1つ目は、思いを込めて大切に蘭を育ててくれたこと、ありがとうございました。贈呈先の人に届き、見る人を力づけることをしてくれました。そういうことが自分に出来たんだということに、自信を持ってもらいたいです。2つ目は、世の中にはいろいろな人がいます。出院後、苦労することもあると思います。でも、きょう来てくれた方々のように、みんなを応援してくれている人が必ずいます。皆さんを頼りにして、ありがとうと言ってくれる人が必ずいることを忘れないでほしいと思います。これからの人生が少しでも実りあるものになること、花を咲かせてほしい皆さんに幸あれと願っています
【久里浜少年院】
少年院は、家庭裁判所の決定により保護処分として送致された少年を収容する法務省所管の施設。久里浜少年院は、「反社会的な価値観・行動傾向があるなど、非行の程度が深い少年」「外国人等で日本人と異なる処遇上の配慮を要する少年」「16歳未満の受刑者」などを対象に、健全な価値観を養い、堅実に生活する習慣を身に付けるための各種指導のほか、個別の問題性に応じた指導、日本語や日本文化・習慣を定着させるための指導などを重点的に行なっている。
【有限会社椎名洋ラン園】
1976年、千葉県旭市にて洋蘭栽培を開始。コンパクトでありながらボリューム感もある「ミディーコチョウラン」のオリジナル品種を開発し、国内外で生産および販売を手掛ける。2014年より、学校等で胡蝶蘭の苗を育て、花を咲かせて大切な人へプレゼントすることを目的とした授業、「大切な人のために花を咲かせるカリキュラム」を開始。千葉県を中心に小・中学校、高校、大学、児童養護施設、障害者学校、デイサービス施設、少年院などで約30か所・累計2,000人が参加。
ホームページ:https://sheena.ranran.co.jp
 
この日の模様は報道各社の取材を受け、次の3社にご紹介いただきました。
 
・テレビ神奈川
同日18時の定時ニュース
 
・読売新聞
2024年1月24日(水)朝刊
読売新聞オンライン
 
・東京新聞
2024年1月29日(月)朝刊
東京新聞 TOKYO Web
「フィランソロピー見聞録/久里浜少年院 社会貢献活動(2023年度)蘭の贈呈式」おわり