お金から考える社会貢献学習シンポジウム
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12月の定例セミナー
2016年3月19日(土)、「募金」「寄付」を通して社会参画意識や自己肯定感を高める授業づくりを考えるシンポジウムを開催しました。当日は、学校、行政、企業、NPO・NGOなどから多くの皆様にご参加いただきました。
1.基調講演 「人間力育成における利他と幸福の関係」
前野 隆司 氏 (慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 教授)
 
前野隆司氏「人はどうすれば幸せになるのか」「人々が幸せになる社会を創るためにどうすればよいのか」統計学や因子分析などで明らかになっている「幸せ」と「利他」の関連と、そのメカニズムについて、お話しいただきました。
人間は、本能の中に「人に尽くしたい」気持ちがあって、そうした利他的な気持ちをうまく活用すると幸せになるようにできていること、人々を幸せにしようと動いているうちに、まわりまわって自分も幸せになること、そしてその「幸せ」は伝播するもの…。
「幸せ」というキーワードから、学校の中で実践する利他的な活動(社会貢献学習)の重要性を共有することができました。
 
2.事例紹介
2015年度、募金・寄付を核にした社会貢献学習に取り組んだ4つの学校に、各校での実践事例をご紹介いただきました。
※リンクを貼っている学校の詳細事例は別ページでもご覧いただけます。
〇 川崎市立大島小学校
 
川崎市立大島小学校大島小学校では、6年生全員が地域の障害者福祉施設を支援する活動に取り組みました。3つのグループに分かれ障害への理解を深めるとともに、寄付つき商品を企画し、校内での販売会のほか、近隣の幼稚園でも移動販売を行ないました。
 
杉並区立杉並和泉学園
 
杉並区立杉並和泉学園杉並和泉学園では3年生全員がディスカッションを通して、募金の目的を決め、商店街を訪問する戸別募金や駅頭募金を行っています。集まったお金の集計や寄付先の決定も生徒が行い、全校で取り組みを共有するための贈呈式を開催しています。
 
〇 神戸市立白川台中学校
 
神戸市立白川台中学校白川台中学校では、2年生全員が参加する地域での体験活動「トライやる・ウィーク」の期間に、受入先の事業所で募金活動を行っています。募金は地域の高齢者福祉活動として、一人暮らしの高齢者に年賀状をおくる「やまももっ子年賀状大作戦」の資金として活用しています。
 
〇 福津市立福間中学校(福岡県)
 
福津市立福間中学校福間中学校では、一人暮らしのお年寄りに送る活動「福まねき年賀状大作戦」を行っています。必要となる資金は校内や近隣小学校で募金活動を行い、協力を募っています。生徒会を中心に、全校生徒で取り組んでいます。
 
3.「チャリティーチャレンジ・プログラム」 紹介
2015年度、日本フィランソロピー協会では、各校の実践を踏まえ、小学校高学年から中学生を対象に、「総合的な学習の時間」で導入いただける社会貢献学習「チャリティーチャレンジ・プログラム」のカリキュラムを検討してきました。
 
「チャリティーチャレンジ・プログラム」の特長は、募金の目的、寄付先を子ども自身が決定し行動するところです。地域社会を見つめ、さまざまな人と関わる中で、他者への信頼、自己肯定感を高めます。
 
プログラムは「PLAN」「DO」「Check&Action」の3ステップに分かれ、募金の目的、寄付先を決めるディスカッション、募金活動の依頼とシミュレーション、募金・寄付活動の実施、報告と振り返りの15時間で構成されています。
 
「募金・寄付」 というリアルなお金を扱う体験を、授業の中に意図的、計画的に入れることによって、社会に役立つお金の遣い方、その大変さや有難さを実感することができます。(詳細は、こちら から。)
4.実践校の児童・生徒によるパネルディスカッション
「社会貢献学習でなにを学んだか」
ファシリテーター: 宮地勘司氏 (株式会社教育と探求社 代表取締役社長)
 
パネルディスカッション1取り組みを通して、どんなことを感じ、学んだのか、子どもたち自身の言葉で伝えていただきました。子どもたちの真剣な姿勢、実感のこもった発言が、教育効果を如実に物語っていました。
 
<発言の一部>
 
・募金活動を通して地域のつながりを実感することができた。一人の力だけでなくみんなで集まって活動することで大きな力になることが分かった。
・人前で大きな声で呼びかけることは得意ではなかったが、募金活動で大きな声で呼びかけるとたくさんの人が笑顔で答えてくれて、人前でも恥ずかしがらずに大きな声を出すのは楽しくてやりがいがあると感じた。
・人に対しての感情が変わった。「この人はこうだからできない」ではなくて、「この人はこうだからできる」という人の良いところを引き出すことの大切さを学んだ。
・ポスターに書く言葉や内容、どうすれば伝わるか、一つ一つに意味を持ちながら書くのが大変だった。
・商店街で募金をしているとき、お店によっては「こっちが欲しいくらいだ」と怒られた。どう答えればよいかわからなくなり、大変だった。
・少しのお金でもたくさん集まると大きな金額になる。日頃から小さな金額だからと好き放題使うのじゃなくて考えて使おうと思った。
・クッキーを売るときに、最初は120円だったけれど、バザーの時にたくさん売るために100円にした。そうすると利益が出なかった。買う人は安いからどんどん買うけれど、売る人は赤字がどんどん増えていく。次の注文販売では、30円の寄付つきにして150円にした。買う人は少し高くてあまり買ってくれないから 「おまけ」 をつけることにした。売る人と買う人の両方の立場に立って考えることの大切さを知った。それぞれの立場のことを考えて生活していきたい。
5.実践校の教員によるパネルディスカッション
「社会貢献を学ぶ授業づくりは可能か」
ファシリテーター: 高橋陽子 (公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長)
 
パネルディスカッション2子どもたちの学びや成長を支えた各校の教員に、今回の取り組みを通して、印象に残っていること、苦労や工夫、自分自身の変化、今後チャレンジしたいことなどをお話しいただきました。
 
<発言の一部>
 
・活動をして初めて子どもと地域はこんなふうにつながることができるんだ、協力してくれる地域の人はこんなに温かいんだと感じました。学校と地域のつながりの大切さを強く感じた。
・子どもの成長を目の当たりにして可能性を実感できた。活動する中で、大人がさらっと流してしまうポイントでも子どもたちは立ち止まって考える。そういう姿を見て子どもに寄り添って一緒に創り上げていくのが総合学習なのかなと再確認した。
・子どもの探求心に寄り添ってカリキュラムを組んだ。子どもが気づきに寄り添ってカリキュラムを組むことを追求できたことが私にとっての喜びであり、学びになった。
・活動する中で一番大変だったのは教員。一番若くて信頼していた先生が「ボランティアやりたくない」と言ったときはショックだった。それでも話をして、先生の考えを聞いていった。先生に活動を知ってもらうために、例えば全校集会の際に子どもが発表したり、成果を見せたりした。子どもの姿を見て、先生は変わる。
・活動の時間を捻出するのが大変だった。そういうときにカリキュラムマネジメントが大切になる。総合の時間以外でも、活動の中でグラフを作成するときには算数の時間を充てたりした。こうした教科連携は可能だと思う。
・子どもたちにとっては、募金の目的と結果のわかりやすさが大事かなと思う。地域の中でお金を活かすと、その変化や成果が目に見えて確認できる。
・子どもの情熱・情で大人が動き、大人が変わった。小学生にとっての社会は、家族、地域、学校。学校と地域は近づいている。自分自身が地域と 「情」 をもってつながって、子どもたちも情をもって結びついていけるよう挑戦していきたいと思う。
・募金の目標を決めるか、決めないか、子どもたちはそういったテーマでも話し合える。子どもたちの発想や自主性に寄り添いたい。
<参加者の声> (アンケートより)
 
・シンポジウムの冒頭に幸せのメカニズムを聞いたので、その後の話を聞く準備ができた。
・幸福というのは学校現場でも重要なテーマだと思った。
・社会の課題に無関心な大人が多い中で、こういう子どもたちがいることがうれしい。
・子どもたちが社会貢献、社会問題、参画の意識が非常に高いことに驚いた。
・リアルなお金を扱うことで意識の変化が起きるのは参考になった。シミュレーションでは得られないものがあると思った。
・体験から学んだ子どもたちの言葉は説得力があった。真剣な姿に励まされた。
・先生方の思いに触れて刺激になった。子どもたちのあとで興味深く聞いた。
・教育現場では「お金より〇〇」となりがちだが募金・寄付も学習の一つのアイテムとして扱えることが分かった。
お問い合わせ
公益社団法人日本フィランソロピー協会
担当: 宮本 栄(みやもと・さかえ)
TEL: 03-5205-7580 FAX: 03-5205-7585 Email  
 

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