川崎市立大島小学校 社会貢献プログラム2015
◆ 参加校概要
学校名: 川崎市立大島小学校
創立年: 1924年 (大正13年)
所在地: 川崎市川崎区浜町1-5-1
学校長: 赤松 理 (あかまつ・おさむ)先生
学級数: 14学級、個別学習室3学級
生徒数: 380名
◆ 実施プログラム概要
単元名: 「深めよう! きずなのあしあと」
実施時期: 2015年4月~2016年3月
授業時間: 70時間 (総合的な学習の時間)
参加者数: 6年生3学級、75名
川崎市立大島小学校では、子どもたちの自己肯定感を高めるために、低学年より地域との関わりを持つことを大切にしており、「地域の人々に支えられている自分」を自覚できるようにしています。
 
2015年度の6年生は、前年度、学校の創立90周年記念に合わせ、地元の障がい者が働く 「パン工房アンダンテ」 の協力を得て、自分たちが栽培した米からつくる米粉クッキー 「きずなのあしあとクッキー」 づくりに取り組みました。
 
第6学年でも、地元の福祉施設との関係をさらに深め、福祉に対する思いの芽を育てることを目的に、授業づくりが進められました。当初はクッキーの共同販売を複数回行なうことで交流し、理解を深めようとしましたが、初回のバザーでの利益が少なかったことを知った子どもたちが話し合い、授産施設としての 「アンダンテ」 の活動を学校内外にアピーすることが施設への貢献になるのではと考え、寄付付きクッキーの販売活動につながりました。
◆ 実施内容
時期 項 目 内 容 写 真
5月 ・「きずなのあしあとクッキー」の販売状況を調べる。 ・「アンダンテ」店舗でのクッキーの売上が落ちていることが分かり、販売に協力しようと考えた。
きずなのあしあとクッキー
・バザーでの共同販売を「アンダンテ」に依頼し、出店計画を立てる。 ・児童の希望により、クラスを越えて3つの担当に分かれ、活動を開始。
①外交担当、②広報担当、③販売担当
6月 ・PTAバザーに向けた活動 ・「アンダンテ」との価格交渉、CM映像づくり、出店の際の販売方法など、具体的に成果が出るものに子どもたちがかかわった。  
・第一回共同販売会議 ・共同販売会議では、子どもたちの司会進行、およびそれぞれの担当から意見を出した。
議論のようす
・PTAバザーでの共同販売
6月27日(土)
・クッキーの店舗価格は1袋120円だが、子どもたちが話し合い、売れやすいよう販売額を100円にした。
・400袋を完売。


6月のバザー
7月 ・共同販売までの活動を記録にまとめる。 ・クッキー販売が本当に「アンダンテ」の役に立ったのか、という子どもたちの疑問から、夏祭りでの販売は中止し、計画の変更を迫られた。  
10月 ・「アンダンテ」との話し合い ・「アンダンテ」のスタッフに学校に来てもらい、団体の活動内容や共同販売の利益について、話をしてもらった。
・利益が出ておらず、スタッフの人件費などを考えると逆にマイナスになっていたことに子どもたちはショックを受ける。

アンダンテとの話し合い
11月
12月
・「アンダンテ」への理解を深める。
・学習発表会で、「きずなのあしあとクッキー」の実践を発表。
・再度、クラスを越えて3チーム(見学、共同販売、PR)に分かれ、「アンダンテ」の活動を知り、広める活動を進める。
・共同販売チームは、アンダンテへの寄付を募り、活動資金に役立ててもらう方法をいくつか考え、アンダンテへ提案を行なった。
 
1月 ・チームごとの話し合いと活動 見学チーム:取材報告
 
PRチーム:販売に伴うチラシとポスターづくり
 
共同販売チーム:共同販売と交流について検討。近隣にある東三和幼稚園、学校関係者向けの販売を決定。

ポスターづくり
2月 ・クッキーの共同販売 ・販売価格は、30円の寄付を付けて1袋150円に決定。
 
・東三和幼稚園にてブースを設け、降園時間に保護者に向け販売。販売数102袋。
 
・校内児童・教員向けに注文販売を実施。販売数200袋。

幼稚園での販売
・ストラップづくり ・約200個を販売チームと協力者で作成
寄付のお礼のストラップ
・社会福祉法人青丘社スタッフとの交流会の企画・提案 ・青丘社は、「アンダンテ」等のさまざまな福祉施設を運営している団体
 
・利用者に配慮し、一緒に楽しめるリクリエーションを4種目提案した。
 
3月 ・クッキーのCM撮影
・施設見学の報告
・青丘社との交流会
・振り返り
   
◆ クッキーの販売数と寄付額
  販売単価 販売数 寄付額
 PTAバザー 100円 400袋 なし
 東三和幼稚園 150円 102袋 3,060円
 校内向け販売 150円 200袋 6,000円
◆ 参加した生徒の感想
 
・PR活動をするときに、誰に伝えるのかでPRの仕方を変えるなど、相手を意識することが大切ということが分かった。
・活動を通して、障がいが人にあるのではなく、障がいのある方にとって、周りの環境が障害で、障害物を取り除き、だれもが一緒に暮らせる社会を目指すことが大切だということが分かった。
・共同販売グループの外交担当として、アンダンテや東三輪幼稚園との電話交渉を行いました。「日時をいつにするか?」「クッキーの注文数はいくつになるか?」など、注文販売担当やおまけづくり担当と打ち合わせをして、電話で伝える内容をまとめることに苦労しました。大変でしたが、この経験は必ず社会に役に立つと思って活動していました。
◆ 協力団体関係者の感想 ( 「パン工房アンダンテ」 スタッフ)
今まで、高校生とはボランティア学習という形で交流がありましたが、小学生との交流は初めてでした。高校生と違うと思ったことは「感性」の部分。小学生は感性が豊かというか、率直な言い方をします(例、「障害のある方は○○ができるか?できないか?」)。その率直な表現が密なふれあいにつながりました。小学生にとっても、私たちにとっても良い経験になりました。先生たちは手探りで学習を進めているようでしたが、子どもの反応や気付きから学習を組み立てていることに好感がもてました。私たちとも密に連絡をとってくれました。一方的な要求を出すのではなく、仕事を提供したり、寄付活動をしたりと、双方向のやりとりができました。障がいのことを伝える機会をもらって良かったです。
◆ 教員の姿勢と工夫
 
・5年生のときから関係のある 「アンダンテ」 に対する子どもたちの感謝の気持ち、「恩返しをしたい」 という気持ちは大きく、それが適切な形で達成されるよう、教員同士、また相手である 「アンダンテ」 職員と話し合いを重ね、子どもたちの活動をサポートした。
・教員の役目は、子どもたちがより良い地域との関係を築けるよう、関係団体と積極的にコミュニケーションを図っていくことである。
・実社会で活動すると、地域の人々からの思わぬ反応や、子どもたちの気持ちの変化により、計画の変更を迫られることがある。計画の立て直しは難しい作業であるが、子どもたちの声や地域からの声を丁寧に聞き、活動に反映させることで、子どもと教員との信頼関係も醸成された。
(おわり)

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