理事長ブログ

2019.09.02

第14回 久里浜少年院訪問記

先日、神奈川県横須賀市にある久里浜少年院を訪問した。ここは、少年院の最後の砦と言われていて、他の少年院を転々としてきた強者ども(?!)80名が収容されている。

同院の職員から、ここの少年たちにボランティアをさせたい、という依頼があったので、千葉にある企業を紹介したら、双方ともに関心を持って下さり、実現に向けての可能性を探ろうと、現場を見せてもらい、相談に行ってきた。少年たちは、「ありがとう」「ごめんなさい」を言ったことも、言われたこともないので、感謝される体験、達成感を得る体験をしてもらいたいという思いからの依頼である。尤も、一般の少年院と違って、外に出たり、共同作業はできないので、自室で一人でできることから始めることになる。

久里浜の海のすぐそばにある同院は、他の少年院より一段と塀が高くなっている。また、彼らの生活は、一般の少年院と違って、食事もトイレも自室でするという大人の拘置所などと同じ環境なので、何とか、その中で心を癒し、心を拓く可能性を探したい。SDGsの「誰も置き去りにしない社会」創りのためにも、彼らを見捨ててはいけない、と思っている。ここで食い止めないとさらに落ちていき、社会としての損失も大きいはずだ。

案内された部屋の一つに「服喪室」があった。亡くなった被害者に、彼らがお線香をあげて、お参りをする部屋だという。心がずんと重くなる。訪問した日の午後は、部屋で静かにすることになっているそうだ。各部屋の入口のドアの上にテレビが設置されていて(見る番組は制限されているようだが)、廊下から、彼らが冷房のない部屋でドアの方を見ながら座っている姿が見えると、胸にこみ上げてくるものがある。彼らも元は被害者だ。そして、彼らは何度も挫折を繰り返しているので、刺青が入っている少年も多く、自暴自棄になりやすさも抱えている。出院した後、やくざと風俗以外に手を差し伸べ、サポートする環境と仕組みが必要である。

女子少年院を出た少女たちを描いたドキュメンタリー映画『記憶』を観たが、自身も少年院に入っていたという監督山田すえ子さんの舞台挨拶を思い出した。非行に走るきっかけは今も昔もそう変わらないが、出た後の社会環境が大きく違ってきた、という。不寛容ということか。帰り際に、一昔前までの少年たちと違うところは?と聞いたら、甘えん坊なところだと教官が教えてくれた。彼らは何度も挫折しているので、自暴自棄になりやすさも抱えているが、自分のことを親身に考えてくれ、心を許せる人がいれば、立ち直る可能性はある。出院後に、やくざや風俗の人以外に、彼らを応援し、サポートする環境と仕組みが必要なのだ、と思う。

司法と福祉が少しずつ連携しつつあるが、民間の活動の拡充と共に、当事者のための制度のあり方をもう一歩進めて欲しい。出院後、仕事に就けない人の再犯率は3倍だそうだ。日本財団の『職親プロジェクト』による雇用促進事業や、雇用に協力する企業も少しずつ増えている。一つひとつの事例に触れることで、「誰も置き去りにしない社会」のイメージも具体化するのではないだろうか。そして、敗者復活の道を拓くことが社会の持続可能性が増すことにもつながる。

来年春のボランティア実施に向けて、準備を進め、実現をめざし、一人でも多くの少年たちの、「ありがとう」と言われた時の、照れくさそうな顔をみたいと思っている。