理事長ブログ

2019.09.30

第15回 郡山市における農福連携

郡山市で、数軒の農家さんと、障がい者の授産施設、引きこもりなどの自立支援NPOなどと一緒に、農福連携のモデル事業を始めた。当協会は、行政・農家・就労者・一般市民などを結ぶコーディネーターの役割を果たす予定だ。それぞれの課題を抽出しながら、共に考え、議論し、未来に向かって進むための調整しつつ推進役、というところか。従来、福祉施策は、障がい者、児童、高齢者、外国人など、縦割り行政で、今日の複雑化する課題に応えることがなかなかできない中、制度の狭間から落ちていく人たちが多い。そんな中、やっと、社会のすべての人が、「居場所と出番」を持てるような社会づくりを目指して行政も動き始めた。福祉側だけではなく、農家さんも後継者問題、担い手不足という課題を抱えている、という背景もある。実際、日本の基幹産業としての農業をどう取り戻すか、また、企業としては、新たなビジネスモデル、というポジティブな関心もあるようで、農福連携への関心は高まっているように思う。

運営委員会のようなものも作るが、多様な人たちに入ってもらい、異文化交流(?)から始めなければ、と思っている。そうすると、チューニングが必要だし、これがいささか面倒な面もあるが、このひと手間(二手間?)が、後々のスムーズな運営につながり、いい成果も期待できると思う。また、いわゆる当事者にも意見を出してもらうつもりだ。障がい者、引きこもりの人、外国人、刑余者など。「支援」という名のもとに、当事者の声を聞かない事業が多いが、それは避けたいと思っている。

「お百姓さんになりたい」というドキュメンタリー映画を上映しているので観てきた。

2.8ヘクタールの畑で60種類もの野菜を育てている、埼玉県三芳町の明石農園のお話。代表の明石誠一さんは、28歳の時に東京から移り住み、新規就農した人だ。有機農法からスタートし、10年前からは農薬や除草剤、さらに肥料さえも使わない「自然栽培」に取り組んでいる。ここでは、野菜同士が互いを育てる肥やしになり、雑草は3年を経て有機物に富んだ堆肥になるのだそうだ。種も、ほとんど市販の種を使わず、畑で育てた野菜から種採り(自家採種)しているので、不揃いな野菜が出来るが、「不揃いであることが自然の本来の姿だ」と明石さん。「それは人間も同じだ。どんなに重篤な障がいを抱えた人も、その人の存在価値はある」。「競争社会から共生社会へ」を農を通じて実践している。明石農園には、多くの就農希望者がやってきて、ワイワイ、ガヤガヤ、失敗しながら野菜作りに悪戦苦闘している。 20年前に、奈良県で自然農法をする方を訪れたことを思い出した。修行僧のようなところがあり、俗世間から離れた、孤高の人の風情を持っておられた。今は違う、子育てしながらのお母さんも、若者も、早期退職の人も、障がいのある人も、料理教室やコンサートを開いて、楽しみながら、新規就農に挑戦している。そうした顔の見える野菜を購入する消費者も増えてきた。

尤も、東日本大震災を経験し、自然への怖れ、人間のおごり、を反省したはずなのに、実は、前世紀の効率・経済絶対主義の呪縛から抜け切れていないことによる問題のなんと多いことか。明石さんの堂々とした挑戦に、「持続可能な社会」の実現は、毎日の仕事と暮らしの実践の中にあることを突き付けられた。郡山での事業を進めるにあたって、「しかと心得よ」ということか。

※農福連携:農業者と、社会福祉法人やNPO法人などの福祉団体が連携して、障がい者や高齢者らの農業分野での就労を支援する取り組みの総称。