連載コラム/私の視点・社会の支点
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このたび月刊フィランソロピーのコラム欄 「私の視点・社会の支点」 を担当するニッセイ基礎研究所の土堤内と申します。日本はこれからますます少子高齢化が進展し、本格的な人口減少時代を迎えます。このコーナーでは、日本が持続的な活力ある社会を築き、われわれが幸せに暮らすためのソーシャルデザインとライフデザインのヒントについて皆さんとご一緒に考えてみたいと思います。
ポスト 「2007年問題」 のライフデザイン
「会社で働く」 から 「社会で働く」 へ
昨年(2007年)は団塊世代が大量に定年を迎え始めたいわゆる「2007年問題」が話題となりました。団塊世代に関するある調査では、定年後も「働きたい」が約4割、「働かざるを得ない」が約3割と、働く予定の人は全体の7割近くに上っています。
「働きたい」とする人の定年後に望む働き方は、「現在の会社で継続して」や「現在と同じような仕事」など、現在の延長上の働き方を志向している人が多く見られます。一方、別の調査では「現在の会社とは関係ない会社で」や「新たな事業を始めて」を志向する男性が3分の1以上を占め、これまでの能力と経験を活かした市民活動やコミュニティビジネス、新たな起業も考えられます。
いずれにしても、定年とは新たな社会との関係性を再構築する絶好の契機です。但し、地域社会には企業と違う価値観や行動様式があり、階層型の起業とは異なるネットワーク型組織の働き方に適合する柔軟性が必要です。今後は、これまでに培った能力を活かして「会社で働く」から「社会で働く」ことが、新たな人生の可能性として楽しみの再発見につながるのではないでしょうか。
「孤立社会」 から 「個立社会」
最近のベストセラーのひとつである上野千鶴子さんの 『おひとりさまの老後』 によると、80歳以上の女性の83%は配偶者がいない、つまりこれからの超高齢社会の多くの女性は、結婚してもしなくても最期はひとりになるのだといいます。そこで孤立しないためには、他の人とつながりながら、ひとりの 『個』 として生きる心の準備が必要になります。
一方、男性は長生きをすればするほど女性に対して少数派になります。年齢階級別の人口性比(女性100人に対する男性の数)は、65歳以上で74.3%、75歳以上では60.0%、80歳以上では49.3%と圧倒的に男性比率が低く、高齢社会は女性中心社会なのです。したがって、これからは男社会の中だけで生きていくことは難しく、男性も孤立しないために女性や異世代とのコミュニケーション能力が不可欠になるのです。
このように高齢社会では、男も女も 『個』 を育てながら社会や地域コミュニティとつながることが重要です。これから「2007年問題」を乗り越えるためには、「孤立」することなく「個立」すること、そしていつも社会や地域のつながりの中でその一員として暮らすことが大切ではないでしょうか。