連載コラム/私の視点・社会の支点
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東京マラソン2008 「東京がひとつになる日」
3万人のランナーと1万人のボランティア
(2008年)2月17日日曜日、今年で2回目となる『東京マラソン2008』が開催されました。そのキャッチフレーズは、「東京がひとつになる日」です。新宿の都庁前を午前9時過ぎにスタート、トップアスリートや車いすランナーを含む約3万2千人の一般市民ランナーが東京の街を駆け抜けました。沿道からは166万人の観衆が声援を送り、市民による街頭パフォーマンスも多数繰り広げられました。
市民マラソンの特徴は、市民ランナーの多さに加えて、ボランティア参加者の多さです。『東京マラソン2008』でも3万2千人のランナーに対して、1万2千人のボランティアが参加しました。ボランティアは会場の案内、観衆の誘導・整理、エイドステーションの給水・給食、ゴール地点のランナー誘導、その他にも道路・会場の清掃や荷物預かりなど多岐にわたる仕事を行ないます。
このように市民マラソンは、大勢のボランティアによって支えられ、大会の運営自体が市民を主体として行われているのです。今回、私もそのボランティアの一人として参加しました。ランナーサポートというランナーを仮設トイレに誘導・整理する仕事でした。ボランティア参加者に対するキャッチフレーズは、「あなたの笑顔がチカラになる」です。
市民マラソンとソーシャルキャピタル
私は毎年12月に行なわれるハワイのホノルルマラソンにランナーとして参加しています。走るたびに感じることは、マラソンは実に多くの人たちに支えられているスポーツだということです。一人で参加していても、一緒に走る大勢のランナーや沿道の多数のボランティア、市民の声援がどれだけ大きな力になるかわかりません。公道を使用して行なう競技ゆえに、さまざまな人たちの理解と支援なくして成立しないのです。
今回はランナーからボランティアへと立場を変えてみて、また新たな発見がありました。それはボランティアもランナーを支えながら、同時にたくさんの元気をもらっているということです。
ボランティアとランナーは、支える側と支えられる側ではなく、実はともに支え・支えられているという「互助」の関係にあることを実感しました。
コミュニティが衰退する一方で、これからの人口減少社会が活力を維持し、われわれが豊かに生きていくためには、この支え・支えられrる「互助」の仕組みが不可欠です。そのような人間同士の信頼関係がソーシャルキャピタルという21世紀の新たな社会資本です。市民マラソンには地域のソーシャルキャピタル・人間関係資本を蓄積する可能性があるのです。
今後、ランナー、ボランティア、地域住民、大会運営者、観衆等が一体となって、まさに「東京がひとつになる日」が実現するとすばらしいですね。『東京マラソン』は、真の市民社会をつくるひとつの試金石になるかもしれません。