連載コラム/私の視点・社会の支点
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「どげんかせんといかん」時代の「どげんかしてはいかん」こと
「どげんかせんといかん」
昨年(2007年)の流行語大賞のひとつに、東国原・宮崎県知事の「どげんかせんといかん」があります。これは英訳すると "We definitely need something for a change." で、もっと砕けた口語英語では、 "Gotta do somethin'" と言うそうです(2008年1月19日・日経新聞「なるほど英語帳」より)。われわれは変革のために何かを必要としているということです。
耐震偽装や食品偽装、年金記録問題など本当に「どげんかせんといかん」問題が山積みです。戦後の様々な仕組みが制度疲労を起こし、多くの問題をはらんでいます。小泉内閣以来、聖域なき構造改革が叫ばれ、様々な改革が行われてきましたが、まだまだ十分とは言えません。
現在、白熱する次期アメリカ大統領の予備選挙でも、キーワードは "change" です。特に、民主党オバマ候補はこの "change" を掲げて支持を拡げています。それだけアメリカ社会の中にも閉塞感が漂い、それをブレイク・スルーする変革が求められているのでしょう。このような時代には、変化が一条の光となります。ですから、日本でも「どげんかせんといかん」が流行語大賞のひとつに選ばれたのだと思います。
不易流行
松尾芭蕉の言葉に「不易流行」があります。これは、この世の中には変わらないこと・変えてはいけないこと「不易」と、変わること・変えるべきこと「流行」があるということです。後者はまさに「どげんかせんといかん」ことを意味しており、多くの人が熱心に議論しています。
一方、「不易」ですが、現代社会はあまりに変えなくてはならないことが多過ぎるためか、「変えてはいけないことは何か?」を議論することが少ないような気がしてなりません。たとえば教育改革においても変えるべき点ばかりが議論され、本当に教育の中で変えてはならないことの議論が十分行われているでしょうか。
今日、携帯電話が普及してコミュニケーションのあり方も大きく変化しています。しかし、フェースtoフェースの会話は依然重要で、いくら携帯電話が普及しても対面で話すことはなくなりません。ですから人と人が直接話すときの作用はとても大事であり、それは変えてはならないことでしょう。
確かに現代社会は変革なくして発展はありません。しかし、それは同時に変えてはならないことをしっかり認識することと表裏一体なのではないでしょうか。東国原知事の「どげんかせんといかん」は、その裏側に「どげんかしてはいかん」というメッセージが込められているように思うのです。さて、みなさんはいったい何が「どげんかしてはいかん」こととお考えでしょうか。
(著者注:「どげんかしてはいかん」は宮崎弁として正確かどうかわかりません。)