連載コラム/私の視点・社会の支点
previous 第6回 next
「新しい公共」を支えるふたつの“思金”―寄付と納税―
千葉県市川市の「1%支援制度」
これまで公共サービスはわれわれが納める税金を使って国や地方公共団体が提供してきました。しかし、国民のニーズが高度で多様になった現在、その行政サービスには限界が生じています。今後、住民の多様なニーズに応えるには地域に密着した民間の非営利活動を促進することが重要です。そしてそのような「新しい公共」を支える主体に対して資金を供給する仕組みが必要になってきます。
千葉県市川市では平成16年度に市民活動団体支援制度(1%支援制度)を条例で定め、個人市民税の1%を市民が選んだ市民活動団体に提供することができます。これは納税者が市民団体の活動内容を考慮し、自らの意思で支援する団体を選択して納税するものです。この制度によって市民は納税意識を高め、市は市民活動を支援するとともに市民ニーズを把握することができ、市民団体は活動内容のPRや情報開示を進めることができます。
納税とは本来このように納税者の主体性が重要ですが、いつの間にか税金は「取られるもの」となり、「納めるもの」ではなくなってしまいました。本当の市民社会を構築するためには税金が国民の意思を反映した文字通り“思金”になることが必要ではないでしょうか。
日本の寄付とアメリカの寄付
「新たな公共」を支える“思金”としてもうひとつ重要なのが寄付です。「NPO白書2007」(NPO研究情報センター、2007年3月)によると、2004年の日本の寄付総額は6,008億円で、法人寄付が4,532億円(75.4%)、個人寄付が1,476億円(24.5%)となっています。一方、アメリカは総額が23兆7,649億円で、法人寄付が1兆2,980億円(5.5%)、個人寄付が22兆4,669億円(94.5%)となっています。
対名目GDP比でみると、法人寄付は日本が0.09%でアメリカの0.10%とほぼ同規模であるのに対して、個人寄付は日本が0.03%でアメリカの1.77%のわずか60分の1になっています。このように寄付の日米比較をすると寄付総額の差とともに、その内訳が日本の個人寄付が極めて少ないことがわかります。
その理由としては宗教や文化的な背景があることも事実ですが、近年アメリカでは寄付獲得(ファンドレイズ)の専門化が進んでいることが挙げられます。その結果、従来はアメリカの個人寄付も富裕層の大口寄付が中心となっていたのが、多数の人々による小口寄付が増加しているのです。特に、 e-フィランソロピーといったインターネットを使った寄付は寄付者の拡大をもたらし、2001年の同時多発テロ以降、災害時などの緊急支援のための寄付では大きな割合を占めています。
このように寄付は「新たな公共」を支える重要な“思金”です。そして多数の個人が中心となる寄付を促進することが寄付の民主化を推進し、真の市民社会に近づく重要な一歩になるのではないでしょうか。