連載コラム/私の視点・社会の支点
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サマータイムにチャレンジ~生活時間軸の多様化
サマータイム論議
日本でも地球温暖化の防止に向けてサマータイムの導入が話題となることがあります。サマータイム(Daylight Saving Time)は、比較的緯度の高い国々で、日照時間の長い間、時計の針を1時間進めることにより太陽の光を有効活用しようとする制度です。現在、世界70ヶ国以上で採用されているといいます。
実際、サマータイムを実施している国で暮らしたり、旅行中に経験されたりした方もいるでしょう。私は昨年11月にアメリカのニューヨーク・シティ・マラソンに参加しましたが、ちょうどレース当日の11月2日(日)の午前2時が夏時間から冬時間への切り替え時期に当たりました。この場合、冬時間への移行で時計は1時間遅くなるので幸いレースに遅刻する心配はありませんでしたが、大会要綱には特に注意を促すようなことも無く、現地の人々は淡々と対応していました。
サマータイムは地球温暖化対策や働き方の見直し等の理由から経済界や国会議員によって導入の推進が提唱される一方、多くの国民からは省エネルギー効果への疑問や残業増加への懸念、体調への影響、導入コストの負担、時刻を合わせる手間などが指摘されています。さて、みなさんはサマータイム導入の是非についてどのようにお考えでしょうか。
一人ひとりのサマータイム
私は今年(2009年)の4月から個人的にサマータイムを実施しています。毎年、フルマラソンを走るためにトレーニングをしていますが、これまでは仕事の帰りにジムに寄り、ランニングマシンで走っていました。それを4月からは毎朝1時間早起きをして、出勤前に自宅周辺を走ることにしたのです。
幸い4月は天気の好い日が多く、朝日を浴びて桜を見ながらの早朝ランニングは実に爽快でした。朝、走っていると散歩を楽しんでいる大勢のお年寄りを見かけます。サラリーマンは仕事を中心に生活の時間軸が決まりますが、お年寄りは食事や起床・就寝など自分のライフスタイルに合わせて時間軸を決めることができる人が多いのでしょう。今後、さらに高齢化が進むと、暮らしの時間軸が一層多様な時代が訪れると思います。
今回、私は個人的にサマータイムをやってみて、時間はどう使うかと同時にどのような時間軸で暮らすのかが人生にとって重要だと感じました。生活の時間軸を少し変えることにより、4月号に書いたように人生の「地」と「図」が変化するからです。
自分だけで生活の時間軸を変えることが難しいサラリーマンにとっては、サマータイムの導入により現在のライフスタイルを見直してワーク・ライフ・バランスの実現を図るなど、新たな生活の豊かさを探るきっかけになることが期待されます。一方、一人ひとりのサマータイムは国民が一斉に取り組むのではなく、われわれの暮らしの時間軸の多様化を促すことに意味があるのではないでしょうか。サマータイムが実施されると、私は、毎朝2時間早起きをすることになるかもしれません。