連載コラム/私の視点・社会の支点
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公園は誰のもの
変わる公園の機能
江戸時代は庶民が集まり、花見や祭りを楽しむ遊興の空間が多く存在し、人々はそこで行楽を行い、様々なつながりを育みました。そのような場所は、明治6(1863)年に地租改正のために太政官布達によって「公園」に指定されました。やがてそれは明治の近代都市作りのために都市計画の視点から政府が計画・管理する近代都市施設として発展していくことになります。
そこでは公園の利用者は管理・規制の対象であり、計画や管理の主体となることはなく、江戸時代の庶民の「遊園」は長く国家の管理する空間として機能したのです。しかし、1956(昭和31)年に都市公園法ができ、公園の管理運営における市民参加がみられるようになりました。そしてようやく市民のための、市民による公園づくりが始まりました。
やがて公園における市民参加は、公園を作るプロセスや公園の運営の中にもみられるようになり、市民による主体的なコミュニティづくりにも発展しています。地域住民同士が様々な活動を展開し交流や支え合いなど地域のつながりを創り出すコミュニティガーデンなどもあります。
また、近年の公園は、子どもの遊び場として、市民のスポーツやレクリエーション等の憩いの場として活用されています。しかし、少子高齢化の進展など社会環境が著しく変化し、公園に求められる機能も大きく変わっています。最近では少子高齢化の結果、子どもの公園利用者が減り、高齢者の方が増えています。それに伴い公園に設置される遊具は高齢者向けの健康遊具が多くなり、既存公園の機能の見直しも急務になっています。
多様化するニーズと利用ルールづくり
近年ではペット連れの公園利用者も多く、公園にドッグランの設置を求める声がある一方で、犬の散歩を迷惑に思う人もいます。また、公園で遊ぶ子どもの声や噴水の音が騒音となり、近隣住民から苦情が出ることもあります。このような公園に対して多様化する市民ニーズに応えるためには公園利用の新たなルールづくりが必要になっています。
しかし、市民のものとなった公園が真に市民のニーズに応えることは容易ではありません。これまでの公園では、利用者など市民からクレームがあると設置者である市町村が利用ルールとして「○○してはいけません」という規制看板を設けてきました。しかし、どの声も同様に聞き入れると、公園は「あれもダメ、これもダメ」という規制だらけの場所になってしまいます。つまり、「みんなのものである公園」は、同時に「誰のものでもない公園」になるというパラドックスを抱える危険性があるのです。
公園に対する市民ニーズが多様になる中でどのようにして公園という公共空間を利活用することが妥当なのか、社会的にその正当性や代表性(レジティマシィ)を承認する仕組みが求められているのです。『公園は誰のもの』という問いに対して、「公園はわたしのもの、あなたのもの、そしてみんなのもの」と確かに答えるためには、利用者による、利用者のための新たな利用ルールづくりの知恵が必要ではないでしょうか。