連載コラム/私の視点・社会の支点
previous 第20回 next
わが家のスイッチ・社会のスイッチ
トイレのスイッチ
先日、わが家のトイレのスイッチを交換しました。わが家のトイレは窓がなく、照明器具のスイッチが内部についているので、時々消し忘れることがあるのです。そこでこの照明スイッチを人体感知センサー付のものに取り替えたのです。ドアを開けてトイレの中に入ると自動的に点灯し、用が済んで出ると一定時間後に自動的に消灯するのです。これでわが家ではトイレの照明を消し忘れることがなくなりました。
このスイッチは他にもおもしろい機能がついています。わが家には高齢の母親がおり、夜中によくトイレに起きてきます。眠っていた目にはトイレの明かりはとてもまぶしく感じられます。ところがこのスイッチは夜間の点灯の照度が通常の20%に抑えられるのです。つまり夜中にトイレに行ってもほんのり点灯するのでまぶしさを感じずに用を足し、また容易に眠りに戻ることができるのです。
このスイッチを製造している電器メーカーのホームページには、『スイッチ換えればくらし変わる』というキャッチコピーが載っています。確かにスイッチひとつを換えただけで、わが家の暮らしはずいぶん快適になったような気がします。たかがスイッチ、されどスイッチだと実感しました。
社会のスイッチ
家のスイッチひとつを換えただけで暮らしにこのような変化が生じるわけですから、社会のスイッチを換えれば国民生活は大きく変わるかもしれません。昨年(2009年)、自民・公明連立政権から民主党を中心とした政権に社会のスイッチが替わり、予算や政策の見直しが急ピッチで進んでいます。無駄な公共工事の見直しや子育て支援など国民が本当に必要としている分野への予算配分等、その成果が評価されるのはこれからです。
もちろん何でも変えればいいというものでもありませんし、変えないことは変えないという姿勢をキチンと貫くことが重要です。公開で行われた事業仕分けも賛否両論ありますが、少なくとも何か閉塞した社会に新たな突破口が開かれたような気はします。
この政権交代というスイッチの交換で最も重要なことは、新政権がどのような日本社会の将来像を描いているのかを具体的に明らかにし、その実現に向けてどのようなセンサーを備えているかではないでしょうか。この国で暮らす人々が何を求めているのかを的確に捉えるセンサー機能が欠如していては、いくらスイッチを交換してもそれは何の役にも立ちません。
わが家のトイレのように適切なセンサーが付いたスイッチは、日々の暮らしをとても快適にします。同様に旧来の社会のスイッチが国民のニーズに合ったセンサーを備えたものに替われば、われわれの暮らしは大きく改善されるでしょう。新政権がそのような国民の期待に応えるべく全力を尽くすと同時に、私たち国民一人ひとりが新たな政権のセンサー機能をしっかり注視することが求められているのではないでしょうか。