連載コラム/私の視点・社会の支点
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シェアする社会~「つながり」求めて
変わる家族像
昨年(2009年)12月に国立社会保障・人口問題研究所が、2005(平成17)~2030(平成42)年の25年間の5年ごとの都道府県別世帯数の将来推計値を公表しました。それによると一般世帯総数は2015年にピークを迎え、以降、減少することになります。これまで人口減少下においても一般世帯総数が増加してきたのは、平均世帯人員が減少してきたからで、今回の推計では2030年には2.27人となり、東京都ではついに2人未満(1.97人)となります。
家族類型別世帯数をみると、「夫婦と子から成る世帯」は減少し、2020年以降はすべての都道府県で一人暮らしである「単独世帯」が最多となります。これはこれまで日本の世帯が核家族を中心としてきたことから考えると極めて大きな構造変化です。つまり家族の基礎単位と考えられてきた「核家族(Nuclear Family)」がさらに細分化され、将来の家族像は今日のものとは大きくかけ離れた姿へと変容しつつあるのです。
このように単独世帯が主要な家族類型になると、これまで家族が担ってきた社会的機能にも多大な影響が生じます。わが国では2000年に公的介護保険が導入され、介護の社会化が進んでいます。また、共働き世帯が増加して子育ての社会化も始まっています。しかし、これから様々な家族機能が縮小することは間違いなく、今後それをどのように補完するかが新たな課題となります。
「つながり」つくる
家族機能を社会制度がすべてカバーすることは困難で、それに替わることが期待されるのがコミュニティ機能です。単独世帯が中心となった「ひとり社会」では、コミュニティというインフォーマルな共同体が家族機能を補完することが重要です。今後、団塊世代が大量に退職し、会社という帰属社会を失ったとき、引きこもりや孤独死といった社会的孤立が深刻化するかもしれません。そのような社会的孤立を防ぐためには、仕事以外の暮らしの中で、様々な人や地域とのつながりが必要となり、われわれ自身にはこれまで以上にコミュニティにおけるコミュニケーション能力の涵養が求められます。
「ひとり社会」では、時間、空間、経験などをシェア(共有)することが大きな価値になると思われます。例えば、これまでの一人旅とはひとりでする勝手気ままな旅でしたが、最近では初対面の人同士が相部屋になるグループツアーが人気を呼んでいるそうです。このようにひとりで参加しながらも、参加者同士で会話や体験を共有することから新たなつながりが生まれるのです。また、食事も鍋や大皿料理など大勢で同じ料理をシェアしたり、居酒屋で見知らぬ人同士が相席で酒を楽しむような形態も増えているといいます。
今後、家族の細分化は家計効率の低下を招くことからルームシェアやカーシェアリングの進展などが考えられます。それは単に規模の経済効率性を求めるだけではなく、新たな人と人とのつながりの模索でもあるのです。これから本格的に訪れる「ひとり社会」の時代には、新たな「つながり」をつくる『シェアする社会』が注目を集めるのではないでしょうか。