連載コラム/私の視点・社会の支点
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曇らない窓ガラス
増える「家庭部門」のCO2
鳩山政権が2020年までに温室効果ガスを90年比で25%削減すると宣言し、いよいよその実現に向けたロードマップ(工程表)の具体案が明らかになってきました。実際の温室効果ガスの排出量は、2008年度は12.8億トンと基準年(90年)の12.6億トンを1.9%上回っています。部門別にみると産業部門は13.0%減少していますが、逆に家庭部門は34.7%増加しており、全体の14.1%を占めています。
家庭部門のCO2排出量増加の背景には、われわれの生活の利便性や快適性を求めるライフスタイルの変化とともに、少子高齢化による世帯の縮小という構造変化が深く関わっています。世帯が縮小すると住宅のエネルギー効率が低下します。平成20年の総務省「家計調査年報」の世帯人員別「月間光熱・水道費」をみると、1人世帯が10,996円、5人世帯が28,167円で、一人当たりに換算すると1人世帯は5人世帯のほぼ2倍の光熱費がかかっています。
社会保障・人口問題研究所の推計では、2020年の平均世帯人員は2.36人に減少し、2015年までは世帯総数が増加します。その結果、家庭部門のエネルギー消費はますます増大する可能性が高いのです。今後、家庭部門のCO2排出量を削減するためには、戸建て住宅に比して冷暖房のエネルギー効率が優れている集合住宅の比率を高めたり、既存の住宅ストックを省エネ構造に改修したりするなど、世帯縮小による住宅エネルギー効率の改善を図ることが重要になります。
住宅版エコポイント制度
私が幼い頃のわが家の窓は木枠に薄い板ガラスをはめたもので、風の強い日には隙間風が入ってくることもよくありました。やがて多くの住宅の窓がアルミサッシに変わり気密性も高まりました。その後、外壁の断熱性の向上もあって、冬季には室内外の温度差が大きくなり、窓ガラスが結露してびっしりと水滴がつく日も多くなりました。
集合住宅では管理組合の規約により外部に面する窓ガラスを勝手に取り替えることはできません。私の住むマンションでは昨年規約が改定され、居住者が既存の窓ガラスを複層ガラスなどに交換することが可能になりました。そこでわが家も早速、複層ガラスに入れ替えたところ、結露がなくなり、暖房効率もかなり向上したことを実感しています。
政府は今年度の補正予算で住宅版エコポイント制度を導入し、住宅の省エネ性能の向上に向けたエコリフォームやエコ住宅の新築を推進しています。省エネルギーを実行する場合、住宅の断熱性能向上のような快適性と経済性が両立する対策は取り組みやすいものです。また、初期投資の負担軽減につながる住宅版エコポイント制度により、かなりその普及にも弾みがつくのではないでしょうか。
家庭部門のCO2削減のためにはまず1人ひとりができるところから始めることが必要です。わが家では暖房を入れる時間が減ったばかりか、部屋の窓ガラスの結露がなくなりとても快適に暮らせるようになりました。そして曇らない窓ガラスからは社会の動きが少しよく見えるようになった気もします。