連載コラム/私の視点・社会の支点
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素敵なランニング仲間たち
いつも「グッドモーニング」
私は昨年の4月から出勤前に家の近くの海岸を走っています。毎朝同じような時間帯に同じコースを走ると、同じ人に出会うことがよくあります。今日は、そのよく出会う人たちの何人かをご紹介しましょう。
まずは、80歳代と思しきご夫婦です。おじいさんは杖をつきながら、ゆっくりと散歩を楽しんでいます。時々、おふたりが並んで堤防に座り、愉しそうにお喋りをしている姿を見かけます。私が「おはようございま~す」と言うと、それぞれから明るい声で「おはようございま~す」と返事が返ってきます。おふたりは何故か歩くとき横に1メートルほど離れています。若いカップルのように手をつなぐことはないのですが、少し離れて歩くその姿は、とてもほのぼのとした感じがします。そんな雰囲気を味わうだけで、何か一日が幸せな気分になります。
次に出会うのが、ひげのある中年男性ランナーです。帽子をかぶり濃い色のサングラスを掛けています。何かとっつきにくい感じの人です。ところがこの人がすごいスピードで近づいてくると、急にサングラスの下の頬の辺りが緩み、ニコッと笑いながら右手を高く挙げ、「グッドモーニング!」と大きな声を発します。こちらも負けずに大声で「グッドモーニング!」と応えます。何故、いつも「おはよう」ではなく「グッドモーニング」なのだろうと思いつつ、颯爽と走る彼の姿には「グッドモーニング」がよく似合うような気がします。私は彼と会うたびに元気の源をもらいます。
いつか「ボンジュール」
ランニングの最後は砂浜でストレッチをします。そこにいつも現れるのが60歳を過ぎた定年退職者風のおじさんです。短パンにTシャツ姿で、腰には何故かゴルフクラブのアイアン1本を刀のように挿しているのです。もちろんこの海岸はゴルフ禁止です。彼はその他に左手に大きなゴミ袋、右手にゴミ挟みを持っています。昨晩、誰かが楽しんだ打ち上げ花火の残滓を一つ一つ挟みでつまんではゴミ袋に入れていきます。少し進むと体操をしたり空を見上げたり、そしてまたゴミ拾いをはじめます。私はこのおじさんに声を掛けたことはありませんが、この人のおかげでいつもきれいな海岸を走ることができるのだと感謝しています。
他に、挨拶しても返事のない人や軽くうなずくだけの人、何か恥ずかしそうに手を挙げる人、さまざまな人たちがいます。名前も住んでいる場所も知らない人たちですが、毎朝そこを走ると、その人たちと出会える。「おはよう」の挨拶以外に言葉を交わさなくても、その中に私の存在を知っている人がいる。人と人とのつながりが薄れる現代社会にあって、それはとても素敵なことのように思えます。
私はひとりで走ることが好きですが、ランニングには一緒に走らなくても素敵な仲間が大勢います。時々、エクボのかわいい女性ランナーとすれ違います。彼女はいつも元気な声で「おはようございま~す」と声を掛けてくれます。私も「おはようございま~す」と応えるのですが、いつか「ボンジュール」と言ってみようかなと思っています。