連載コラム/私の視点・社会の支点
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ふえる「ひとり男性」の危機
~「ひとりの不安」を「ふたりの安心」へ
コクチョウ
「コクチョウ」というと皆さんはどんな漢字を連想されますか?「国鳥」や「黒鳥」・・・。今回は今年10月1日に実施された「国調」、すなわち国勢調査についてです。国勢調査は日本国内に住んでいるすべての人と世帯を対象に5年ごとに実施され、1920(大正9)年に第1回調査が行われて以来、今回が19回目の調査です。総務省のホームページによると今回の調査意義は、「本格的な人口減少社会となって初めての調査」であり、「我が国が直面する様々な重要課題に対する適切な施策の策定・推進のため、精度の高い統計を提供」するものとされています。
これまで国勢調査は調査員による訪問調査を基本としてきましたが、近年では個人情報保護意識の高まりや昼間の不在世帯の増加などから調査票の確実な回収が難しくなっています。そこで今回は郵送により直接市町村に提出する方法や東京都においてはモデル的にインターネットによる回答方式を採用しています。なお、東京都のネット回答率は8.4%とのことです。国勢調査には人口や世帯のほかにも住居、就業、職業、産業、通勤・通学等に関するさまざまな調査項目があります。これから順次集計が行われ、来年2月には最新の人口・世帯数が公表され、少子高齢化が進展し本格的な人口減少時代を迎える新たな日本の姿が浮かび上がってくることでしょう。
高まる男性生涯未婚率
国勢調査の調査項目のひとつに配偶関係があります。配偶関係は「有配偶」「未婚」「死別」「離別」の4つに区分されています。前回の05年の調査結果では、「有配偶」は男性60.8%、女性57.0%、「未婚」は男性31.4%、女性23.2%、「死別」は男性2.9%、女性13.5%、「離別」は男性3.3%、女性5.2%となっています。1980年以降男女ともに「有配偶」の割合が低下する傾向がみられ、わが国の大きな少子化要因のひとつになっています。
特に配偶関係で注目されるのが、男性の生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚したことがない人の割合)の高まりです。それは70~80年代は2%台だったのですが、2000年には12.6%、05年には16.0%にも上っています。女性の場合も上昇傾向にはありますが、05年時点で7.3%と男性の半分以下です。その大きな要因のひとつは、近年増加する若年男性の非正規雇用者が安定した経済基盤を築けないために、「結婚したくても結婚できない」未婚男性の大量発生につながっているのではないかと考えています。
ここに未婚を含む「ひとり男性」にとってショッキングなデータがあります。95年の少し古いデータですが、男性の配偶関係別の平均余命は有配偶者に比べ40歳時では未婚者は8.6年、死別者は4.1年、離別者は10.3年短くなっています。また、死亡率は有配偶者に比べ30-44歳で未婚者は2.7倍、死別者と離別者は7.0倍に上ります。自殺率(07年)も未婚者は1.3倍、死別者は2.8倍、離別者は5.6倍であり、「ひとり男性」にとって危機感を覚える内容です。現代社会では社会的孤立や生活リスクが高まっており、一人ひとりが自立を果たしながら「ひとりの不安」を「ふたりの安心」に変えるような配偶関係のあり方が重要になっているように思います。ちなみにオーストラリアに生息する「黒鳥」は、雌雄ともに抱卵し、とても仲がよいそうです。