連載コラム/私の視点・社会の支点
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寄付の「見える化」~東日本大震災を機に
寄付のマーケティング
98年に特定非営利活動促進法(NPO法)が成立し、翌99年に私は非営利組織のマネジメントについて学ぶためアメリカ・NPO研修に参加しました。そこで受けた講義のひとつがNPOのマーケティングでした。一般の営利組織に比べNPOのマーケティングの特徴は、サービスを利用する人たちのニーズ把握に加えて、NPOに対して寄付する人たちに関するマーケティング、すなわちファンドレイズのためのマーケティングが重要だと教わりました。
今年(2011年)6月には改正NPO法が成立し、認定NPO法人の認定基準が緩和されてその増加が見込まれます。これまで認定NPO法人は認定基準が厳しく、NPO法人全体のわずか0.5%、223団体(2011年7月1日現在)に過ぎませんでした。また、認定NPO法人等に寄付した個人に対する優遇税制も拡大され、今後はNPO活動を促進するための資金がたくさん集まることが期待されます。そのためNPOにとっては前述のファンドレイズ戦略が極めて重要になるでしょう。今後はNPOを対象としたNPOマネジメントの一環としてファンドレイズに関するNPO向けセミナーなども多く開催され、そのキャパシティビルディングが図られることになるのではないでしょうか。
東日本大震災における寄付
3・11東日本大震災における寄付は、日本赤十字社や中央共同募金会をはじめ様々なチャネルを通じて多額の義捐金が集まりました。私は5月号の本欄にも書いたように「ラン・バイ・テン」という1キロ走ると10円を被災地に寄付する活動を中心に3つの方法で寄付をしています。震災直後は被災者の救援活動にとにかく資金が必要だろうと日本赤十字社へ義捐金を送りました。その後、被災地での救援活動が具体的にわかるようになると現地で活動するNPOに寄付をしました。また、インターネットを通じて宮城県に「ふるさと納税」をしました。「ふるさと納税」では被災県の知事名のお礼の文書が自宅に届きました。
このように寄付にはいろいろな方法がありますが、私にとっては現地で支援活動しているNPOへの寄付がとても手応えがあり、今も少額ですが寄付を続けています。それはNPOにインターネットを使って寄付すると、その後もNPOから定期的に現地における活動状況のメールが届き、その結果、寄付金がどのように活かされているかがわかるからです。
2005年に千葉県市川市では「市民活動団体支援制度」ができ、市民は市民税の1%相当額を自分が支援したい市民団体に寄付できることになりました。この制度をつくった意義は市民活動を市民自らが支援することですが、さらに税金を“取られる”ではなく“納める”という意識の醸成には、税金の一部でもその使途が市民に見えること、すなわち税金の「見える化」が重要であることが制度成立の背景にあると聞きました。寄付も同様にリピーターを生み、NPOがファンドレイズを成功させるためには寄付の「見える化」が重要な鍵となるのではないでしょうか。寄付するお金には寄付者の様々な「思い」が込められていて、それが「見える化」されることが寄付の継続性や豊かな寄付文化の定着につながるように思います。