連載コラム/私の視点・社会の支点
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ワークライフバランス~“仕事と介護の両立”
大介護時代の到来
(2012年)1月末に公表された国立社会保障・人口問題研究所の新たな日本の将来推計人口をみると、2060(平成72)年にはわが国の総人口は約3割減り、子どもと現役世代が半減し、社会全体の4割が高齢者になります。そしてひとりのお年寄りを1.3人の現役世代が支える、いわゆる「肩車型」社会へ移行します。
また、日本の世帯数の将来推計では、2020年以降はすべての都道府県で「一人暮らし」が最多の世帯類型になります。そして世帯主年齢65歳以上の高齢世帯では4割近くが「一人暮らし」になり、男性の生涯未婚者(50歳まで結婚していない人)は4人にひとりになるとされています。
現在、2000年に導入された公的介護保険の65歳以上被保険者は約3千万人、そのうち要介護・要支援認定者は約500万人です。また、長寿化に伴って認知症高齢者が増加しており、厚生労働省の推計では2015年には250万人に達すると思われます。特に認知症高齢者のケアは、長時間にわたる家族などによる日常生活のサポートが必要です。
今年(2012年)は団塊世代が65歳に到達し始める年で、今後3年間に600万人以上が高齢者になる計算です。そして10年後にはこれらの人たちが75歳以上の後期高齢者に加わり始めます。75歳以上の後期高齢者の要介護割合は65歳から74歳の前期高齢者の7倍にも上り、10年後に団塊世代が後期高齢者になると日本はまさに“大介護時代”を迎えるのです。
中高年のワークライフバランス
このように増加し続ける高齢者介護を一体誰が担っているのでしょう。厚生労働省「国民生活基礎調査」から介護の状況を見てみましょう。要介護者の3人に2人は主に同居する家族に介護されています。次いで事業者による介護や別居する家族による介護となっています。傾向としては同居家族による介護が減少し、事業者と別居家族による介護が増加しています。
同居または別居する家族の主な介護者の性別をみると7割が女性で、やはり介護の担い手の中心は女性です。しかし、近年では男性比率が上昇しており、介護の担い手の男性シフトが続いています。また、年齢別では男女ともに50~60歳代が全体の5~6割を占めており、仕事を持っている中高年介護者が増えています。そのため介護を理由とする離職者も増加し、介護離職者の8割以上は女性ですが、男性比率は確実に上昇しています。
その理由として40~50歳代の女性の就業率が高まり、共働き世帯が増加していることが考えられます。同居する主な介護者として「子の配偶者」(ここでは要介護者の息子の妻が主に想定されます)が近年大幅に減少し、仕事を持つ妻が増えて夫の親の介護まで手が回らないのだと思われます。このように多くの中高年男性にとって親の介護は妻任せにはできない時代になっています。
介護は子育てと違いその負担は徐々に重くなり、なかなか将来の予測がつきません。これまで少子化対策として「仕事と子育ての両立」がワークライフバランスの重要な視点でしたが、これから高齢化が一段と進むと「仕事と介護の両立」も重要になるでしょう。ワークライフバランスの実現は誰もが幸せに暮らすために、子育て世代だけではなく企業の中枢にいる中高年層などにとっても世代を超えた喫緊の課題となってくるのではないでしょうか。