理事長ブログ

2020.08.26

第23回 コロナ禍の真夏のマスクが教えてくれたこと

今夏の猛暑は、短かったが強烈だった。やっと秋の気配を感じるようになり、多少ほっとしている。それにしても、真夏のマスクはなかなかきつい。熱中症対策も同時にしなければならない。アクセルとブレーキを同時に踏むような毎日だが、これは、感染拡大防止と経済回復も同じで、物事一筋縄ではいかない、一人ひとりの日常のあり方そのものが試されているのかもしれない。

マスクを手作りして、それを山梨県庁に寄贈した少女の記事を新聞で目にしたのは3月だった。しかも布地は、自分が貯めたお年玉で買ったという。どんな少女なのだろうか、どんなドラマが起こったのか、と気になって、甲府まで会いに行った。新聞の写真よりも幼い感じの、中2の滝本妃(ひめ)さん。2月に、薬局で、マスクを買えなくて困っている高齢の女性を見たのがきっかけとか。以前から、人に喜んでもらうことをするのが大好き、という妃さんは、何とか自分でできることはないものか、と考え、お母さんに相談して、自分でマスクを縫うことにした。どこに持っていっていいかわからず、県庁に届けることにした。そうしたら、県知事が受け取ってくれるという。その面会時間のギリギリまで縫っていたので、612枚という半端な数になったのだそうだ。報道でそれを知った人からの感謝状が届いたり、トロフィー制作会社の社長さんは、感謝の気持ちを伝えたくて、“勝手にトロフィー”を作って送ってきた。そのほか、「あなたに使ってほしくて」と寄付金を送ってきた人もあるという。
それに対し、妃さんは、「いただいた寄付金は、山梨県庁を通じて、児童福祉などに使ってもらう」、というお礼状を一人ひとりに丁寧に書いて送っているそうだ。

一方では、ありがちな話だが、身近な人からや、SNSなどでの中傷もあり、落ち込んだこともある。でも、家族に支えられて、また、立ち上がって頑張っているから大したものだ。子どもたちの純粋な思いからの行動は力強い。傷つくことも含め、一つひとつ栄養にしている。もちろん、彼女を支え応援する家族の存在も大きい。こういう子どもたちの活動が、特別な子どもの美談として終わらせるのではなく、それを伝播したり、共感の輪を拡げることができれば、と思う。

マスク嫌いな私も、さすがに常に付けている。私たちの共通の思いは、自分がうつるのも困るが、うつすことも避けたい。日本人の場合、人の目を気にする、という面も確かにあるが、日本人のまじめさと優しさの表れでもあるように思う。そして、何より、何事も習慣化されることが肝なのだ。マスクから、寄付の普及に苦労している自分の仕事を振り返っている。

滝本妃さんの記事は、機関誌『フィランソロピー』10月号で掲載予定なので、是非ご覧いただきたいが、外科医になりたい、という妃さん。きっといいお医者さんになるだろう。こんな子どもたちの思いをまっすぐに受け止め、応援することが大人の役割だな、と思いつつ、若いエネルギーとの出会いに幸せを感じて帰路に就いた。

機関誌『フィランソロピー』2020年10月号の巻頭インタビューは、こちらからご覧いただけます。