理事長ブログ

2020.09.01

第24回 縁の下のフィランソロピスト

アンドリュー・カーネギーといえば、鉄鋼王であり、ニューヨークのカーネギーホールを作ったり、多くの図書館建設に寄付をしたことでも知られる有名なフィランソロピストである。
カーネギーは貧しいスコットランド移民の子どもとして米国で育った。幼少期から働きに出ていたカーネギーにとって忘れられない恩人がいる。アンダーソン大佐という人。アンダーソン大佐は、自分の書斎を開放し、400冊ばかりの蔵書を近所の子どもに貸し出していた。カーネギー少年は、そこで本を借りては読み耽ったそうだ。土曜日の午後はアンダーソン大佐はいつも家にいて、本の交換をしてくれたので、少年は土曜日が来るのを首を長くして待ち望んでいたという。そして、「若い頃苦労した人はね、将来必ず立派な人物になるんだよ」と言って、大佐はカーネギーを励ました。貧しい移民の子であり、十分な教育も受けていなかったカーネギーにとって、この時の読書が後の成功の糧となったことは言うまでもない。
もう一人、実業界から出雲市長・国会議員を歴任した岩國哲人さんにも恩人がいる。岩國さんは、小1で父親を亡くし、家計を助けるために牛乳配達・新聞配達をしていた。自分の家では新聞を購読する余裕などなかったから、朝配達した家へ、学校帰りに行って、縁側でおじいさんが読み終わった新聞を読ませてもらっていた。おじいさんが亡くなっても、その家への配達は続き、おばあさんがいつも優しくお茶まで出して、「てっちゃん、べんきょうして、えらい子になれよ」と、新聞を読ませてくれた。
そのおばあさんが、岩國さんが中3の時に亡くなり、葬儀に出た。隣の席のおじさんが、「てつんど、おまえは知っとったか?おばあさんは字が読めないのに、おまえのために新聞をとっておられたんだよ」
涙が止まらなかった、と岩國さんは振り返る。そして後年、岩國さんは『おばあさんのしんぶん』という絵本を発行した。
このように、きっと、正史に登場する偉人たちの陰に、彼らを支え、応援した縁の下のフィランソロピストたちがたくさんいたのだと思う。そして、そんな稗史での「縁の下のフィランソロピストたち」が社会の底力であることを、改めて思う。
さて、人生100年時代と言われ、その中で生きる中高年の人たちは、まだまだ自己実現に燃えている人が多い。それはそれで大事だが、第1回の理事長ブログ「マズローの欲求理論」でも書いたが、自己実現より一段上の欲求は自己超越だ。人生下り坂になったら、自分の寿命を超えて、“親心”を少し拡げて、次世代を支え、次世代につなぐ寄付や社会貢献に自分を生かすのも「かっこいい大人」の証かな、と思っている。

先日、素敵な誕生日寄付をしてくださった方がある。ご自分のお子さんの誕生日に、そのお子さんの名前で寄付をしてくださった。その発想が嬉しい。下記のポスターは、ちょうどいいタイミングで、9月8日から走る東急電鉄のSDGsトレインの車内に貼っていただくことになったものだ。縁の下から応援するフィランソロピー文化、拡がってほしい。