連続セミナー

Latest Update:2022.3.11
連続セミナー
第2期(2021年度)第7回
社会課題のリアルを学ぶ~NPOの活動を通して~
~8回シリーズ~
主催:公益社団法人日本フィランソロピー協会
助成:公益財団法人JKA
2021年度JKA補助事業「児童、高齢者、障がいのある人が相補的に関わることのできる地域共生型社会づくりを促進する活動、調査・研究等」
NPOやソーシャルビジネスは、従来のやり方では対応しきれない、社会の多様なニーズに、先駆的に取り組むことから、改めて注目を集めています。ただ、こうしたセクターは慢性的な資金不足や人手不足という課題を抱えています。そのため、社会経験と人間性を兼ね備えた企業人やシニア層の積極的な参画が期待されています。
 
本連続セミナーでは、社会のために自らを役立てたいと願う企業人、シニア層が、社会貢献活動を始める前段階として、社会課題の実情を知る機会を提供します。また、どのような場面で、社会人の参画が求められるのかを理解することで、実際に参画していくきっかけを見つける場ともなります。
開催方式:
ビデオ会議システム『Zoom』を使ったオンラインで開催いたします。
『Zoom』は無料でご利用いただけるシステムで、当協会から事前にお知らせするURLをクリックするだけで参加可能です。『Zoom』への接続方法は、お申込みいただいた方に別途ご連絡いたします。
 
参加費:
無料
プログラム
各回の内容および講師は変更する場合があります。
 
 
開催終了
 
開催終了/2021.1.30
<第7回>
日時:
2022年2月7日(月)18:00~18:45(17:45開場)
※講演30分、質疑応答15分
テーマ:
子どもの包括的支援とその課題~宮城・石巻での実践から考える~
講師:
鈴木平さん
鈴木 平(すずき たいら)さん
特定非営利活動法人TEDIC 代表理事
 
<講師からのメッセージ>
「震災が来て、救われた」・・・。TEDICはひとりの男の子と学生の出会いから始まりました。
衝撃的な言葉の背景には、震災以前から、その子が抱える生きづらさ、世帯が抱える経済的困窮、虐待、DV、依存症など、様々な課題があるのが、徐々に分かっていきました。
そのことを知った私たちは、「目の前の○○に向き合う」ことを大切にして、避難所での支援から、公民館での活動、学校内での学習支援、フリースクール、子ども食堂、アウトリーチ、市や県との協働事業など、目の前の子ども・若者たちのために形を変えながら活動をしてきました。
今では、地域のたくさんの方々の力を借りながら、子どもたちが様々な人との関わりを通して、社会の中で“ひとりぼっち”になることがないように、そして、少しでも自分の人生を、自分自身が「主人公」として生きられることを願いながら、日々活動をしています。
 
<講師プロフィール>
静岡県御殿場市出身。静岡県立大学国際関係学部卒。宮城大学事業構想学修士。
研究テーマは「ボランティアマネジメント」。大学時代は放置竹林問題、学生団体の中間支援、若者の社会参画支援など複数の社会課題に取り組む。また、大学4年次に休学し約25か国を放浪。卒業後はIT企業にて営業、コンサルタントとして勤務。2014年よりチャンス・フォー・チルドレンに参画、仙台事務局にて教育事業者や大学生ボランティアのコーディネーション事業に従事。若手人材の育成や教育・福祉人材のバーンアウトに課題を感じ、「人が育つ環境をつくる」をテーマにしたユースソーシャルみやぎを設立。その他、子ども向けキャンプや体験活動を提供するNPOの事務局長も務める。
2017年より、NPO法人TEDIC理事就任、2019年より副代表理事、2021年から現職。主に、各事業統括、政策提言、アドボカシー、地域コーディネートを担当。
 
<TEDIC とは>
「心のひとりぼっちがいない街」、「誰もが自分の人生の主人公になれる社会」を目指して、地域の方々と一緒に相談事業や居場所事業に取り組んでいます。
 
・ウェブサイト:https://www.tedic.jp/
・Facebookページ:https://www.facebook.com/tedic
・Instagram:https://www.instagram.com/npo_tedic/
【おことわり】このページの文章表現および語句表記は、講師からの原稿をそのまま掲載しています。
 
 
開催報告
講演要旨:

どの画像も、クリックすると拡大します。
TEDICは宮城県石巻市で、「心のひとりぼっちがいない街」、「誰もが自分の人生の主人公になれる社会」を目指して、東日本大震災直後の2011年3月から子どもたちに向き合う活動に取り組んでいます。
 
きっかけは、「語弊があるかもしれないけど、震災が来て救われた」と話す男の子との出会いでした。震災によって多くのものが失われた当時、この言葉に衝撃を受けました。さらに、その背景に、家庭の貧困や学校でのいじめなどの問題があるのがわかりました。震災後に域外から来たボランティアが、先入観なく話しかけてくれたことで、“初めて人として見てもらえた”と感じ、「救われた」という言葉になったのです。
 
悩みを抱える子どもたちは、家庭の経済的困窮、虐待、DV、依存症などに直面していることがわかり、避難所や学校での学習支援、フリースクール運営、子ども食堂などの形で、地域の子ども・若者たちのために活動してきました。
 
子どもに働きかけても解決できない家庭の経済事情、親子関係、夫婦間の問題を知り、世帯全体への個別伴走支援も2017年ごろから開始しました。ただし、TEDICのような小さな団体では、借金や薬物依存といった問題の支援には限界があるため、行政や企業と連携し、地域のセーフティーネットを機能させる取り組みもするようになりました。
 
「今の願いは両親が離婚して、転校してやり直すこと」、「私も息子も死んで、誰にも迷惑をかけないようにしたい」、「小銭をかき集めても400円にしかならなくて」。現場のスタッフは、こうした苦境にある人たちの声を毎日のように聞いています。
 
0から6歳までは保健師、小中学生は市のスクールソーシャルワーカー、高校生は県のソーシャルワーカーが支援するといったように、制度上の支援は年代や分野で区分される問題があります。支援が引き継がれず、元の状況に戻ってしまうこともあります。また、相談窓口は、教育・福祉・保健・医療・矯正などの分野ごとのため、複数の課題を抱える相談者は、窓口をたらい回しになるケースがあります。
 
TEDICの居場所事業と相談事業を紹介します。
・居場所事業:地域の人とともに、子どもの学習支援、生活支援を通じて、子どもたちの居場所をつくる。
・相談事業:0〜39歳の本人やその家族が、年齢に切れ目なく、あらゆる分野の相談ができる総合相談窓口が、宮城県によって4年前に「石巻圏域子ども・若者総合相談センター」として開設され、運営を委託されている。
 
TEDICのボランティアは大半が大学生ですが、石巻という地域性や、彼ら自身がTEDICが取り組むテーマの当事者であるという特徴があります。子どもたち一人ひとりと向き合うなかで、自分のアイデンティティについて考え、当事者性を意識することになります。
 
最後に、TEDICでは手が回らないでいることについて。
・対行政:様々な制度や政策があり、TEDICでは把握しきれていない。また、データを求められるが、現場で得たデータを考察し、提示するスキルと時間が不足している。
・対企業:子どもたちに就職体験してもらいたいが、手が回らず実現できていない。
・対地域:市民に向けた情報発信ができていない。ボランティア・プロボノの受け入れもできていない。
・TEDIC自身:人事、財務、ICTが不十分。さまざまなことを言語化できていない。
 
ボランティアやプロボノの申し出は本当にありがたいのですが、TEDICのような小さな団体では受け入れ体制が整わず、受け入れが難しい状況にあります。
 
また、「支援」、「被支援」の関係でなく、子どもたちとTEDICや行政、企業が、相互に学び合える関係性に発展させていきたいと思っています。そのために、企業のCSR担当者など関心のある方々との対話の場を増やしたい。そして、企業とNPOではロジックが異なる部分もあるが、相互理解に基づいて、互いに協力していけたらと思っています。
講演内容は、こちら から動画でもご覧いただけます。
以上
 
 
事務局:
公益社団法人日本フィランソロピー協会
担当: 大倉 寿之(おおくら ひさし)、宮本 栄(みやもと さかえ)
TEL: 03-5205-7580 FAX: 03-5205-7585 Emailは こちら から。
「社会課題のリアルを学ぶ~NPOの活動を通して~」おわり
受付開始:2021.11.18
セミナー開催:2022.02.07
開催報告掲載:2022.03.11
最終更新:2022.03.11