アステラス・スターライトパートナー

2022年度
2021年度 ・2022年度 ・2023年度
アステラス2022
2021年度 ・2022年度 ・2023年度
Latest Update:2023.03.14
主催:アステラス製薬株式会社
企画:公益社団法人日本フィランソロピー協会
難病に関して設立されている患者会は、病気に関する情報交換や会員同士の相互支援などを目的としていますが、会を持続させるために、それぞれに何らかの課題を抱えていることがあります。単に財政面の問題だけでなく、会員間の良好なコミュニケーションの促進や会を率いるリーダーシップなど、多岐にわたります。
 
アステラス製薬株式会社は、製薬会社の社会貢献活動の一環として、こうした難病患者会の支援を目的に、課題解決につながる研修会を開催します。研修会の企画立案および運営にあたっては、公益社団法人日本フィランソロピー協会が協力しました。
プログラム概要
名称:
アステラス・スターライトパートナー 患者会次世代リーダーのためのリーダーシップ・トレーニング・プログラム2022
主催:
企画:
公益社団法人日本フィランソロピー協会(JPA)
目的:
・患者会の自立、持続性を高めるべく次世代リーダーを育成する。
・患者会の活動目的を再確認し、参加者自身の会への思いなどを言語化する機会とする。
・患者会の会員が積極的に参加する組織にするために必要なコミュニケーションスキルや組織運営のスキルを習得する。
日程と会場:
【第1回】2022年6月25日(土)/オンライン
【第2回】2022年8月19日(金)/オンライン
【第3回】2022年9月02日(金)/オンライン
【第4回】2022年9月29日(木)/オンライン
【第5回】2022年10月7日(金)/オンライン
【第6回】2023年1月21日(土)/ハイブリッド
<開催報告>
<開催報告>
<開催報告>
<開催報告>
<開催報告>
<開催報告>
定員:
20名(参加者はすでに募集済みで決定しています。)
 
カリキュラム
【第1回】
2022.6.25(土)/オンライン
<開催報告>
<問題提起>
山本ベバリー さん
大阪大学大学院教授
患者会HAEJ 理事長
患者会・患者活動の意義を考える
 ・山本ベバリーさん自身が体験を想起
 ・HAEJの活動内容を紹介
 ・研究者としての視点からコメント
 ・参加者がグループに分かれて
  ディスカッション
  (医療関係者とのネットワークづくりなど3題)
<ワークショップ>
宮地勘司 さん
教育と探求社 代表取締役社長
自己分析および自己体験と思いの整理・言語化
 ・その日の気持ちを言葉にする
 (ウォーミングアップ)
 ・参加者同士でインタビュー
 (困難を乗り越えた経験など)
 ・自分の未来を絵にして表現
【第2回】
2022.8.19(金)
<開催報告>
<ワークショップ>
田中康之 さん
株式会社 BRICOLEUR(ブリコルール) パートナー
多様な人材組織をまとめるマネジメントスキル習得
 ・コミュニケーションスキルを高める(納得感のある伝え方、コンテンツとコンテクスト)
 ・合意形成のワーク、講師との質疑など
【第3回】
2022.9.2(金)
<開催報告>
 
 
【第4回】
2022.9.29(木)
<開催報告>
<ワークショップ>
長浜洋二 さん
モジョコンサルティング合同会社 代表
NPO運営の基礎を学ぶ
 ・NPOの組織運営の基本(資金調達、会員獲得、認知度向上等)
 ・各団体の自己評価、講師との質疑 など
<課題設定>
研修会事務局より課題の説明
第5回の終わりに、患者会およびそのメンバーとしての目標・課題を設定する。
 2023年1月までそれを実践し、結果について第6回研修会で報告。
【第5回】
2022.10.7(金)
<開催報告>
【第6回】
2023.1.21(土)
<開催報告>
<成果報告>
参加団体による成果報告
 (第5回で設定した目標・課題についての
  取り組みの成果報告)
 
 <講評>
  山本ベバリーさん
  宮地勘司さん
  長浜洋二さん
     
 
 
開催報告
【第1回】
2022年6月25日(土)/オンライン
参加:
12名
内容:
<問題提起>
山本ベバリーさん
大阪大学大学院人間科学研究科教授、患者会HAEJ理事長
 
山本ベバリーさんは、自身が希少疾患の患者であることや、長きにわたって正しい診断とそれに基づく治療を受けられなかった経験を語りました。正しい診断を受けて以降は、海外の患者会との接点をもとに、日本の患者の直面する課題を整理し、解決に向けて、意欲的な取り組みを開始しました。
 
その中で、希少疾患ゆえ、同じように正確な診断を受けられていない患者が多数いると推定されることや、英国と違い、日本では自己注射が認められていない問題などが取り上げられました。
 
こうした問題への取り組みを通じて、山本さんは、患者会には社会をよい方向に変えていく潜在力があることを強調して、講演を終えました。
 
参加者のみなさんには、疾患の当事者としての側面と研究者としての側面の両方が語られたことで、強い印象を与える話となったようです。また、海外の患者会との連携の必要性を感じる一方で、余力がないとその実現は難しいと感じる人もいるなど、いろいろな刺激と投げかけを与える時間となりました。
 
続くグループワークでは、次の3つのテーマでグループを作り、限られた時間ながら、熱心に意見交換を行ないました。
1. 医療関係者(製薬会社・専門医)とつながるには?
2. 国内のほかの患者会とつながるには?
3. 疾患の認知度を向上させるには?
 
 
<ワークショップ>
宮地勘司さん
教育と探求社 代表取締役社長
 
ワークショップでは、参加者同士がペアになって、交互にインタビューをしました。どのペアも、困難を乗り越えた深い経験などを語りあいました。参加者のみなさんは、難病の当事者であったり、その家族です。困難を乗り越えようと努力したときの思いや価値観が共有されました。
 
およそ60分間のインタビューは、当初は長いと思われたものの、参加者のみなさんは始まってみると、あっという間だったと感じたようです。それだけ、患者会に携わっているという共通の立場から、相手に話すこと、理解してもらいたいこと、あるいは理解し合えることがたくさん溢れる時間となったようです。「互いの話を深堀りできた」という感想も聞かれ、ふだん経験しない濃密な時間を、じっくり味わってもらうことができました。
 
これまでの人生を、どのように歩んできて、これからどういう方向に踏み出そうとしているのか、対話を通して、一人ひとり考えを深めていきました。
 
そして、思い描く、もっとも理想的な自分の未来を絵で表現し、これを参加者間で共有しました。人の姿を描いたもの、山や太陽、植物などの自然の造形物を描いたものなど人によりさまざまですが、クレヨンを用いた、彩り豊かな表現が目に留まりました。
 
 
 
参加者の声(アンケートより)
・患者の生活を改善するためには、患者とその会が、声を上げ続けなければならないと改めて感じました。また、その声の上げ方、広め方が大きな壁にもなっていると感じました。
・やはり難病になればなるほど、病名による知名度も低く、知ってもらうことに苦労している点は同じだと感じました。
・宮地先生のワークショップでインタビューをした人が、同じような環境を経験してきた人だったので、愚痴から将来の希望まで本音を出し合うことができました。
・このような研修の機会をいただきありがとうございます。やはり人との対話や意見を聞くことは非常に刺激になりますし、日頃の眠った脳が活性化します。新たな気付きもありました。次回も楽しみにしています。
 
 
 
【第2回】
2022年8月19日(金)/オンライン
【第3回】
2022年9月02日(金)/オンライン
参加:
13名(第2回・第3回共通)
テーマ:
第2回:組織としての患者会と多様性への対応
第3回:多様なメンバーをまとめるコミュニケーションスキル
内容:
<ワークショップ>
田中康之さん
田中康之さん
株式会社BRICOLEUR(ブリコルール)パートナー
<プロフィール>
慶應義塾大学卒業後、野村證券を経て、2001年リンクアンドモチベーション入社。モチベーション研究所所長、株式会社リンクグローバルソリューション代表取締役社長を務めた後、現職。多くの企業の人材開発・組織開発をコンサルタント・研修講師として支援するとともに、NPOの次世代リーダー育成なども手掛けている。
 
 
患者会には、疾病に関する共通点があるとはいえ、多くの場合、いろいろな年代の様々な価値観を持った人たちの集まりとなります。そこで、円滑な運営のために、多様性の中でも発揮できるコミュニケーションスキルが求められます。第2回、第3回と2回にわたって、このスキルを磨くためのワークショップが開かれました。講師は、前年度に続いて、田中康之先生にお願いしました。
 
多様性の中のコミュニケーションは、当たり前が違うメンバー間でのやり取りとなるため、いわば異文化コミュニケーションともいえるものです。依頼されていた業務が期日までに完了しない場合のやり取りなど、依頼した側と依頼された側のあいだでのすれ違いは往々にして起こります。例えば、一方はぎりぎりまで粘って、間に合わせようとして報告が遅れ、一方は、早めに言ってくれればほかの手を打てたのにといった具合に。その原因をコンテクスト(言葉で表現されない背景情報)の違いに求めて、どう乗り越えていくか、ロールプレイをしながら学んでいきました。
 
第2回終了時、参加者各人には、患者会メンバーとコンテクストをすり合わせる場面を実際に設けて、対話を試みるという課題が出されました。
 
第3回では、これを踏まえて、合意形成に至るプロセスを、グループワークによって学んでいきました。発話者としての人と起きている問題を分けて考え、冷静に互いの利益を満たしながら折り合いをつける手法を理解していきました。相手の考えを尊重しつつ、自らの意見も伝えて、あるべき合意に至る方法です。
「ネット通販がより盛んになることに賛成、反対」というテーマを設定し、グループごとに、二手に分かれて議論をしました。条件付きで賛成するといったグループごとの結論を、全体の場でも共有し、納得感の高い結論に至る過程を報告し合いました。
 
こうすることで、参加者のみなさんは、研修がおわったあとでも、自分の患者会に持ち帰り、コミュニケーションスキルを応用することができます。研修を受け、今後、各団体で、コミュニケーションの改善や向上が図られていくことが期待されます。
 
 
 
 
参加者の声(アンケートより)
・自分の気持ちも、より詳しく話さないと伝わらないということがよくわかりました。相手もわかっていると思ったつもりで話すことはしないように気をつけようと、改めて感じました。
・(自分の団体は、過去に存続の危機を経験しているが、)要因はコミュニケーションにあったので、やっぱり意思疎通が上手くいかなかった部分があったり、コンテクストが不足していた部分があったと思い至った次第です。自分も背景情報が少ないローコンテクストでのコミュニケーションに苦手な面があるため、深く心に残りました。
・説得するというより、お互いに納得できるアイディアを生み出すための、見えない部分の言葉化を練習できたので今後、自分から意識的に使っていきたいと思います。
・患者会における多様性に富んだメンバーとのコミュニケーションにおいては、DESC法が向いていることを学ぶことができました。自身の結論から始めず相手の主張を理解するところから始めるため、攻撃的にならず、合意形成をより円滑に測りやすいと感じました。
 
 
 
【第4回】
2022年09月29日(木)/オンライン
【第5回】
2022年10月07日(金)/オンライン
参加:
12名(第4回・第5回共通)
テーマ:
第4回:NPOの組織運営:資金調達・広報等
第5回:NPOの組織運営:各団体からの企画発表および質疑
内容:
<ワークショップ>
長浜洋二さん
長浜洋二さん
モジョコンサルティング合同会社 代表
<プロフィール>
1969年山口県生まれ。米国ピッツバーグ大学公共政策大学院卒。公共経営学修士号(Master of Public Administration)取得。NTT、マツダ、富士通で約15年にわたりマーケティング業務に従事。2018年にモジョコンサルティング合同会社を設立し、社会課題の解決と新しい価値の創造に取り組む。人や組織、地域に対し、人材開発をはじめ、事業開発(事業計画/戦略の策定と実行)と組織開発(コーチング/ファシリテーション)のコンサルティング支援、および地域開発における多様な主体の協働推進(エコシステムづくり)を行なっている。
 
 
患者会の持続可能性のための課題のひとつに、資金調達があります。これは、多くのNPOに共通する課題ですが、患者会としても将来を左右するテーマです。
特に、患者会の場合は、収益性のある事業を行ない、そこからの事業収入を拡大するという方法を取りにくいことから、勧誘して会員を増やしたり、理解者や支持者から寄付を集めたり、助成金を獲得するのが資金調達(ファンドレイジング)の柱になることが多くなります。
 
そのためには、会のことをしっかり対外的に広報し、病気への理解を広げながら、会の認知度も上げなくてはなりません。NPO組織をマネジメントするために必要となるスキルのうち、今回はファンドレイジングに焦点を当てた研修会となりました。
 
参加者のみなさんは、さまざまな資金獲得法についてレクチャーを受けました。自分の団体ならどうするかと思案しますが、どういう「価値」を患者会の会員、寄付者に提供していけるかを考えるのが第一歩です。会と接点を持つことで得られる情報や精神的な満足などを思い浮かべると、自分の会がもたらすことのできる価値が見えてきます。
 
配布されたシートへの書き込みを見ると、多くの患者会が「ホームページや会報で、疾患に関する専門的な情報が得られる」としています。あるいは、「仲間に相談することで、孤独感を解消できる」をあげている団体もあります。一方、「患者であると同時に、支える側にも回る喜びがある」というのは患者会ならではの価値だと言えるでしょう。
 
続いて、「ペルソナ」の設定に進みます。これは、マーケティング用語として知られていますが、会員、寄付者、ボランティアとして関わりを持ちたい人をターゲットとして定め、どういう人物像を描くのがよいかを決める作業です。配られたシートに架空の名前、年齢、住所、職業、価値観、ふだんの生活ぶりなどを書き込んでいきます。
 
そのあと、設定したペルソナに、どうやってアプローチするのかを考えていきます。ここで広報の出番となります。広告、PR、営業、口コミなどの手法について講師から学び、長所・短所を理解していきました。例えば、対面で直接働きかける「営業」は相手にしっかり伝わるものの、一度にたくさんの人を相手にすることはできません。一方、「広告」は大きく拡げる力はあるものの、費用がかさみます。
 
参加者のみなさんがシート上に計画した、自分たちの団体が取りうる手法を見てみると、イベントの告知であれば、自治体の広報誌やミニコミ誌への掲載を考えたり、交流会などの場でチラシを配るというアイデアが見られます。一方で、SNSを使った情報発信は、患者会によっては、すっかり定着している感があります。
 
第4回研修会はここまでとなり、最後に、団体の活動資金を増やすファンドレイジング企画を個々に立て、第5回で持ち寄る宿題が講師から出されました。
 
1週間後、第5回研修会に集まった皆さんは、順番にファンドレイジング企画を発表し、ほかの参加者からの質問に答えていきます。会員を増やす企画を立てた人、助成金の獲得を目指す人、寄付の増加をねらう人、それぞれに企画が披露されました。助成金の獲得を企画に盛り込んだ例では、「自分たちの団体は、これまで助成金を何件も出したが、通らなかった」と嘆く声が聞かれました。しかし、過去に獲得実績のある団体の話を聞いて、いくらかヒントが見えたようです。
 
これまで患者会の運営で経験してきたことをもとに、「この問題はどうやって乗り越えますか?」、「こうした方がよいのでは」、「いや、それはむずかい」といった意見が、みなさんからあふれるように出てきます。ときには熱を帯びた言葉のやりとりとなり、場が盛り上がっていきます。各自の発表は5分間ですが、そのあと20分も質疑が続くことがありました。ある人の経験は、こうして言葉にされれば、参加者間で共有され、別の団体で生かされていくことになります。これもまた、研修会を開催する意義のひとつといえるでしょう。
 
 
 
 
参加者の声(アンケートより)
(第4回研修会)
・なぜペルソナか、長浜講師の後半のお話を伺い、本研修の流れをつかむことが出来ました。会員の脱会も少数ながら毎年一定数あるのは、弊会の会員に対する提供価値が不足していると考えました。ターゲットの設定とペルソナを明確にして会員の流出を防ぐことに取り組んでまいります
・会費を集めないことにしているので、助成金で今は活動していますが、助成金だのみでない継続可能な運営手法を考えなければならないと思いました。持続的な寄付に繋がる魅力的な会にしなくてはということです。
(第5回研修会)
・ファンドレイジングという観点で、あらためて事業を見つめ直すよいきっかけと学びをいただき感謝しております。ありがとうございました。
・大きな組織団体さんの内容は真似したいものばかりでしたが、悩みについては大小変わらずどこの団体さんも同じだなと感じました。
・各患者会を運営されているみなさんに共通して運営メンバーの人材確保の課題があると理解しました。それぞれの団体でいかに工夫して優秀な方々を確保することに尽力されているか、それぞれの取り組みから学びを得られました。
 
 
【第6回】
2023年1月21日(土)/ハイブリッド
参加:
11名(会場6名、オンライン5名)
テーマ:
実践結果の報告会
内容:
10の患者会から、第5回で設定した目標・課題についての取り組みの成果報告
・報告(各団体10分)、質疑応答および講師の講評(各団体10分)
・講評:山本ベバリーさん
    大阪大学大学院教授、患者会HAEJ理事長
 
    宮地勘司さん
    教育と探求社 代表取締役社長
 
    長浜洋二さん
 
    モジョコンサルティング合同会社 代表
 
 
6回にわたった患者会の研修会の最後は、各患者会が自分たちの団体が抱える課題を解決するための取り組みを実践し、その結果を共有する報告会です。
参加者のみなさんは、2022年6月から10月まで、5回に分けて受講した研修会の中で、患者会の意義や役割を見つめ直し、コミュニケーションのスキルを磨き、資金調達を中心にNPO組織運営の手法を学びました。
 
自分のたちの団体が、どんな問題を抱えていて、どう克服していくか、どういう方向に伸びていくといいのかという観点で、2022年10月の研修が終わったあと、みなさんはじっくりと思いを巡らしました。そして、それぞれにチャレンジ目標を立てました。
日本アラジール症候群の会
会員数が伸び悩んでいる問題を取り上げその拡充にチャレンジすることを決めた団体、団体内の意思疎通を向上させることを目標にした団体、また会員ニーズを把握することに注力することにした団体などがありました。それを達成するための具体的な計画も立てました。
 
そこから、2023年1月下旬までの4か月弱、計画を実践してみて、達成できたこと、逆に、困難にぶつかったことなど、いろいろなことがありました。それを参加者間で共有して、助言しあったり、講師の先生方の講評を聞いて、今後につなげていこうと練り直すのが、第6回研修会の目的です。
 
 
<各団体が立てた目標や計画はさまざま>
例えば、ある視覚障害者の団体では、関係者のネットワークを立ち上げたり、患者会の中に、ミドル世代でグループを作るという目標を立てました。
大分網膜色素変性症協会
宮地勘司さん
宮地勘司さん
そして、2022年秋に開いた、ネットワークの第1回意見交換会には視覚障害の当事者のほか、眼科医や視能訓練士、歩行訓練士、福祉機器業者も参加して、互いに理解を深めることができたという報告がありました。
例えば、眼科医の「患者さんがつながりを求めているが、どのようにつなげたらよいか困っていた」という悩みにも応えるものとなったということです。メーリングリストを作るなどして、今後のさらなるネットワークの深化、発展も意図されています。
こうした取り組みに対して、宮地勘司さんは「自分たちと同じ立場にある人たちが、がんばっている姿を見たり、実際に会って、意見を交わしたりすることで、活力を得られるところがいい。それが患者会というものの、ひとつの機能であり、価値であると感じました」と感想を述べました。
 
第5回までの研修会には、自分たちの団体が果たしている社会的役割について考えたり、それに応じた価値を提供していけるかどうかを考える時間がありました。患者会の発表者によると、それらについて考えを深めたことが、こうした目標設定につながったということです。
各団体には、課題解決のための今後の取り組みにおいても、研修内容が役立てられることを期待したいと思います。
 
 
<講師の先生方から研修会全体を総括するコメント>
長浜洋二さん
長浜洋二さん
長浜洋二さんは「今回の参加者は、最初に問題に気づいた人として、患者会の中で先導する役割があるが、やがてほかの人たちに受け渡して、みんなでやるというステージに進んでほしい。そのために、団体内で情報発信をして、ちょっと関わってみたいと思うようなワクワク感のあるイベントや学びの場を用意して、最後は巻き込んでいく。そうして、改善、実行のサイクルを回していくと、たどり着きたいところに近づいていくでしょう」と話しました。
 
山本ベバリー先生
山本ベバリー先生
山本ベバリー先生は「まずは、大きなビジョンを立てるのが大事で、それを実現するためにステップバイステップでやっていく。その際、患者会だけでできることは限られているので、研究者、医療従事者、製薬会社といったステイクホルダーと連携していくことが必要になる。自分の患者会の場合は、海外の患者会とつながることで、それまでできなかったことを実現していくことができました」とご自身の活動に照らし合わせたコメントがありました。
 
参加者のみなさんからは、次のような感想が寄せられました。
・患者会を運営するためのスキルを学ぶことができて、本当によかった。参加しなかったら、ほかの患者会の様子も知らないままだったと思う。
・自分のやり方でずっとやってきたが、いろいろ教えていただいて、こうすれば、みんなの協力が得られるといったことがわかって先が開けた思い。
・心の視野を広げて、人としての魅力を増やしていきたい。
・研修会でつながった方たちと、今後もこんなことをしているといったやり取りを続けて、励ましあっていけたらいいと思う。
・参加した各人のレベルは違いますが、間違いなく自分が変わる、変わっていくのを実感した研修でした。
・自身の組織と似たような課題に取り組まれている方の取り組み方はとても参考になり、改めて詳しくお聞きしたいと思いました。
 
今回の研修会で受け取ったものを、参加者のみなさんが自分のものとし、各団体が一層発展し、さらに、ほかの患者会にもよい影響が及ぶことを願って、2022年度の研修会を終了しました。
「アステラス製薬/患者会次世代リーダーのためのリーダーシップ・トレーニング・プログラム2022のご紹介」おわり
 
最終更新:2023.03.14