2018.09.20

第1回/マズローの欲求理論

最近刊行された、内田樹氏編著の『人口減少社会の未来学』によると、2024年には3人にひとりが高齢者となるようだが、氏曰く、人口減少が問題というより、「外側は老人で中身はガキという『老いた幼児』が多くなることが問題だというのだ。数年前、ある評論家が「団塊の世代の特徴は、過度な経済志向と個人主義という名の下の私生活主義だ」ということを言っていたことを思い出した。団塊世代は、敗戦後の価値観の変化により、家より個人、義務より権利、もっと豊かに、もっと便利に、そして我々は最大のマーケットという日常的な雰囲気の中で育った。そして…今。

学生時代、マズローの欲求5段階説というものを学んだ。ご承知の方も多いと思うが、人間の欲求には5段階あって、生理的欲求、安全への欲求、社会的(帰属)欲求、尊厳(承認)欲求、そして自己実現欲求となる。まさにこの自己実現をめざして駆け抜けてきたのが団塊の世代だ。定年を迎え、形を変え、自己実現欲求への階段をまだまだ上っている。それでいいのだろうか・・・?

最近、関心が高まっている SDGs だが、めざすべき「誰も置き去りにされない社会」を実現するためには、相当の覚悟ある取り組みが必要となる。マズローが今、生きていたら・・・。実は、マズローは、第6段階を考えていたのだそうだ。それは自己超越(コミュニティの発展)だとか。亡くなる直前に、それを公表したらしい。また、実際には、これらの欲求も、段階を踏んでというより、むしろ循環しながら欲求が輻輳的に進化するように思う。

さて、これからの高齢者の中核をなす団塊世代。マズローの理論を待つまでもなく、「老いた幼児」ではなく、地域のため、次世代のために尽くす「かっこいい老人」の姿を若者に示してほしいと切に願う。自己実現の捉われから解放されてると、案外、人生の下り坂もおもしろいかもしれない。

理事長ブログ一覧