2018.10.23

第3回/ベルリンで見た『謝る力』

先週はベルリンに行っていた。仕事が半分、遊びが半分。4回目の訪問だが、これまではとんぼ返りで、観光をゆっくりしたことがなかったので、今回は、美術館巡りやベルリンフィルのコンサートも楽しんだ。やっと夏休みが来た。

散歩がてら、ホロコースト記念碑に行ってきた。ここは、ホロコーストで虐殺されたユダヤ人犠牲者のための記念碑。棺のような形のコンクリート製の石碑2,711基が19,073㎡の敷地に様々な高さで広がっている。子どもたちがその間を駆け回り、石碑に腰かけて語らっている人もいる。自分たちが二度と同じ過ちを繰り返さないために、いつも意識できるようにというものだとか。 それぞれがいろいろな思いを巡らし、鎮魂と平和への祈り、非戦の決意を自らに問うているのかもしれない。過去の過ちを歴史の一コマとして傍観するのではなく、自らの問題として捉えるドイツ人の底力が心を打った。日本人の平和への希求は、唯一の被爆国としての、反戦への強い意志であるはずだが・・・。他を批判するだけではなく、一人ひとりの強い願いをカタチに表すことが民主主義の原点であることを改めて確認した。

折しも『謝る力』(著者:毎日新聞編集委員・城島徹氏/清水書院)を読んだところだった。城島氏がこれを書くことを決めたのは、日本大学アメリカンフットボール部の“悪質タックル問題”で、日大選手の潔い記者会見がきっかけだったと言う。人のせいにすることなく、自分の責任であることをまっすぐに伝えた会見には、多くの大人も子どもも感動したと思う。過去の企業不祥事などにも触れながら、参天製薬の顧客の安全を第一に考え、「損失より消費者を守る」ことを優先して行った商品回収の話など、大人の毅然とした人間力も思い起こさせてくれた。ところで、「ささやき女将」で有名になった「船場吉兆」の次男の尚二氏は、今は小さな割烹の板前として創業家の味を守っているそうだ。一度失った信頼を取り戻すのは難しいけれど、真正面から非を受け止め、その償いを果たしたら、再挑戦は応援したい。日大の学生さんも、新たな挑戦に向かってほしいと切に願う。

思いがけず、『謝る力』の真髄をベルリンで見た思いがした。そして『謝る力』は前に進む力を得ることにつながる。ただ、社会の中に、敗者復活を可能にする理解と応援が不可欠である。日本では、一度レッテルを貼られると、そこが難しいところだが、今こそ、『謝る力』『赦す力』を持って、前に進もう。

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