2025.11.04
第44回/映画『ヒポクラテスの盲点』を観て
先日、映画『ヒポクラテスの盲点』を観た。これは、新型コロナウイルスワクチンの後遺症について、患者自身や遺族・その治療に当たった医師・そして推奨派の医師も登場し、様々な立場の人たちの体験やデータをもとに、なぜ政府はワクチン接種を推奨し続けたのか?その問いや理由などを多角的な側面から描いたドキュメンタリー映画である。大手メディアも取り上げなかったこの問題に取り組んだ監督は大西隼氏。大学院時代は神経疾患発症の分子メカニズムを研究していたという理学博士でもある。これまで、ジャンルを問わずドキュメンタリー制作に携わっている。主な作品に「欲望の資本主義」(NHKBS)、「地球タクシー」(NHKBS)などがある。大西監督がこの映画を作ろうと思ったきっかけは、京都大学名誉教授の福島雅典先生の記者会見。国に対して新型コロナワクチンに関する情報開示請求を行ったというものだったそうだ。その時の福島先生の発言には、「科学者として医師として、見識や実績や覚悟などを兼ね備え、そのうえで真実に迫ろうとする迫力を感じた」そうだ。「コロナワクチン接種により亡くなった方へのお悔やみ、後遺症に苦しむ方へのお見舞いを、深い共感とともに話されていたのにも心を打たれました」と語っている。大西監督は、ご自身の病気の経験も重なり、真実に迫りたい、と映画を撮り始めた。
感染症はまた必ずある、と言われる。個人攻撃や犯人探しではなく、起こったことをしっかり検証し、次に備えることが歴史に学ぶことであり、これこそが人類の進歩といえるのだと思う。誰にとっても自分事化しやすい本件である。思考停止に陥らずに検証することが求められる。そして、そのプロセスを経ることこそが民主主義の神髄だ。大西監督も、この映画から本質的な議論が始まったら嬉しいと語っている。
この映画のタイトルは『ヒポクラテスの盲点』。医学の祖・ヒポクラテスは「何よりもまず、害をなすなかれ」と言っている。わたしたち自身に盲点はなかったか?ということを問いかけよう、ということがテーマである。 折しも、当協会では来年1月まで全6回でエグゼクティブ向けの「ビジネスと人権」セミナーを開催中である。実は、会場を提供いただいているアミタホールディングス株式会社(東京・御茶ノ水)の会議室の窓から線路を挟んで東京科学大学(旧東京医科歯科大学)の校舎の壁に「ヒポクラテスの誓い」の壁画レリーフが見える。このテーマも織り込みながら、人権について、企業の人たちとともに、しっかりと議論・対話を重ねていきたい。
映画の公式サイトhttps://hippocrates-movie.jp/
