理事長ブログ

2021.04.19

第28回 『共感革命 フィランソロピーは進化する』出版に寄せて

1991年4月1日にフィランソロピー推進を始めた。前職は、横浜の私立中・高校のスクールカウンセラーだった。生徒や教師、保護者の相談に乗っていた1980年代半ば、お父さんがおかしいなー、ということを問題意識として持っていた。お父さんが悪い、ということではなく、多くのお父さんが働く企業などの過度な経済効率性・生産性の偏重という価値観が、学校にも家庭にも色濃く影を落としている、ということだった。そんなことを漠然と考えている時、新聞紙上で「フィランソロピー」という言葉に出会った。何の根拠もなく、調査もせず「これだ!」「フィランソロピーが呼んでいる!」と思った(笑)。もちろん、誰も誘ってくれたわけでもなく、単なる思い込みと妄想だった。“世間知らず”も後押しして、フィランソロピーに関わることになった。

  1991年、仕事はじめとして、東海岸・西海岸以外のアメリカの企業フィランソロピーの実態調査のためにジョージア州アトランタを訪問。アトランタ・ジャーナル社で記念撮影。
コカ・コーラ本社 AT&T社等アメリカ企業や日系企業の「企業市民」を学んだ若き日(!?)の筆者

それから30年、紆余曲折あったが、大きな流れとしては、社会貢献と言う言葉も、1990年代には、まだまだ言葉にするのが気恥ずかしいようにとられていたが、今では、日常会話の中で使われる当たり前の言葉となってきた。しかし、一方、自然環境の著しい悪化、経済格差の拡大によるさまざまな課題噴出、先進国の中でも非常に低い青少年の自己肯定感の低さ、など、不安を増幅させる時代になっていることも考えると、30年の総括において、反省点も多く、今後は、機運醸成だけではなく、もう一歩踏み込んだメッセージと活動が必要な時期が来た、という思いも新たにしている。

30年という節目に、少し立ち止まって、次につなげるフィランソロピーの意味を捉えなおしてみようと思い、『共感革命 フィランソロピーは進化する』として、一冊の本にまとめてみた。寄付の推進を軸に、個人の社会貢献、それを牽引する企業フィランソロピーを推進する事業をさまざま展開してきたが、拡がりは一筋縄ではいかなかった。そして今、少し立ち止まって、フィランソロピーというものをリベラルアーツとして捉え、伝えてみよう、と考えた。各分野の第一線で活躍する方々のインタビューを中心に、そして、フィランソロピーや寄付の歴史を概観し、映画の中で、市井で観られる個人のあり様などについても読み物として楽しみながら考えてもらいたい、という思いで企画した。そのキーコンセプトを『共感』とした。出版までの過程で、多くの方に寛容と温かさでご協力いただいた。その出会いが新たなアイディアや構想を生み、さらなる出会いにつながっていったように思う。感謝しかない。
次に向けた役割を思うとき、属性を超えた人間としての共感を、普遍的な価値として力にしつつ、次代を創り、次世代にバトンを渡したいと思う。
コロナ禍が長引く中、そして正解が見つからない今、面倒でも、まどろっこしくても、一人ひとりの意志と行動を社会化していくことが、健全な民主主義社会の創造には不可欠であることを、今、改めて痛感している。そのための役割を模索しながら、果たしていきたい、と思う。但し、ゴールは遠い。だからこそ、プロセスを大切にし、何より出会いと気づき、そして葛藤や困難も楽しみながら、一歩一歩、スタッフはじめ仲間と共に、進んでいきたい。

 

※全国の書店にてお買い求めいただけます。
 詳細はこちらからご覧いただけます。